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レジ袋有料化から「ライフスタイルの大転換」を考える

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【緑の最前線(82)】大事件、科学知見、技術、教育・・・何が人々のライフスタイルを変えるのか?

公開日: 2020/07/08 (ソサエティ)

CC BY-SA CC BY-SA /currybet

三橋 規宏:緑の最前線 (経済・環境ジャーナリスト、千葉商科大学名誉教授)

 プラスチック製のレジ袋が今月から原則として有料になった。先行したスーパーに続き、多くのコンビニも料金を取り始めた。

 セブンイレブンは税抜き3~5円、ファミリーマートとローソンは税込み3円だ。容器包装リサイクル法の省令の改正に伴い、7月からプラ製のレジ袋を扱うすべての小売事業者が有料にしなければならない。

 プラ製レジ袋でも厚さ0.05ミリ以上で繰り返し使える袋や植物由来の「バイオマス素材」を25%以上含む袋は環境に配慮されているとみなされ、今回の有料義務の対象になっていない。

 スーパーと違ってコンビニの客は購入品目、金額が少なく、衝動買いが多いためレジ袋を持参しない人が多く、これまでレジ袋の無料配布は当たり前になっていた。しかし廃プラによる海洋汚染などが深刻化する中で、有料化が義務付けられることになった。

 イオン系のコンビニ、ミニストップは6月からレジ袋を有料(税抜き1枚1円、7月から2~4円)にしたところ辞退する客は3割から6割に増えたそうだ。小泉進次郎環境相はレジ袋をもらわない人の割合を「現在の3割から年末までに6割に高めたい」と期待している。

 レジ袋有料化の目的は便利だが自然に戻ることができないワンウエイ(一方通行)型のライフスタイルをサーキュラー型(循環型)のライフスタイルに転換させる第一歩と位置づけられている。

 江戸時代の日本はエネルギーの中心が木材資源で、衣食住に関する物資のほとんどが使用後、自然に帰るサーキュラーエコノミー(循環型経済)だった。世界に冠たるごみゼロ社会を実現させていた。だが明治の近代化を経て、戦後便利なプラスチック製品が登場し、衣食住の隅々まで浸透した。

 使い捨てを前提としたレジ袋がその典型だった。だが廃プラスチックの急増は海洋汚染の悪化、野生動物の誤飲、誤食、CO2の大量発生を伴う焼却処理など様々な弊害を噴出させている。

 この際、脱プラスチック社会を目指そうという取り組みだが、だからといって、便利で日常生活の隅々にまで浸透しているプラスチック文化との決別はそれほど簡単ではない。それを可能にさせるためにはライフスタイル転換を促すファクターXを丹念に吟味し、効果的、かつ総合的な対策を講ずる必要がある。

▽ 大事件・大事故の発生

 一般にライフスタイルを転換させるための最大のファクターは、大事件や大事故の発生だ。

 今年初めあっという間に世界を巻きこんだ新型コロナウイルス感染のパンデミック(世界的大流行)。3密(密閉、密集、密接)の回避、社会的距離(人と人との距離約2メートル)の維持、移動制限、個人の外出規制などが有効な対策として実施された。

 この結果、旅行業、旅館、航空機、カラオケ、ライブ、筋トレ、接待を伴う飲食などの産業は大打撃を受けた。ビジネススタイルも満員通勤電車回避や職場に多くの社員が集合し働く労働慣行が見直され、時差出勤やテレワークが普及した。

 コロナ禍が過ぎても、人々のライフスタイルやビジネス慣行は元に戻らず、新しいライフスタイルが定着してくるだろう。

▽ 科学的知見の尊重

 2番手のファクターは科学的知見の尊重である。

 たとえば、このままでいけばコロナ感染症は爆発的に増えるだろう、これ以上温暖化が進めば、気候変動が制御不能になる、海面水位の上昇で南太平洋の島嶼国の多くが水没してしまう、などの科学的な知見もライフスタイル転換に大きな効果を持つ。

 問題なのは、科学的知見の多くが中、長期的な予見が目立つことだ。このため多くの政治家はそれを無視、軽視、先送りし、国民受けのする足元の経済優先の政策を続行し、現状悪化を加速させてしまいがちだ。

▽ 技術革新の影響

 技術革新の影響も大きい。

 蒸気機関の発明と化石燃料に象徴される18世紀後半の産業革命はそれまでの農業社会を一変させた。19世紀の電気、ガソリン自動車、20世紀のコンピューター、プラスチックの発明など約100年に一度、画期的な技術革新が起こり、生活の利便性を高め、人々のライフスタイルやビジネス様式を転換させてきた。

 21世紀の今日。ICT(情報通信技術)、AI(人口知能)、IoT(モノのインターネット)などに代表されるデジタル革命が急速に進行中だ。感染症対策、温暖化対策などの分野で様々な発明、発見が起るだろう。それに伴いこれまでのライフスタイルやビジネス様式も大きく転換するだろう。

▽ 教育

 教育が果たす役割も大きい。

 これまで教育といえば「自分のための教育」という意識が強かった。これから求められる教育は、自分のためではなく、健全な地球を次世代に残すために自分にできることは何かを身につけるための教育だ。

 「きれいごと過ぎる」との批判もあるだろうが、そうしなければ、ここまで傷付けられてきた地球を健全な地球に回復させることは難しい。

 レジ袋の有料化という小さな一歩を大きな一歩に転換させるためには、複数のファクターXを上手に組み合わせ、若い世代の教育に反映させることで、ワンウエイ型のライフスタイルをサーキュラーエコノミー型に転換させる地道な努力の積み重ねが欠かせない。
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三橋 規宏:緑の最前線(経済・環境ジャーナリスト、千葉商科大学名誉教授)
1940年生まれ。64年慶応義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、科学技術部長、論説副主幹、千葉商科大学政策情報学部教授、中央環境審議会委員、環境を考える経済人の会21(B-LIFE21)事務局長等を歴任。現在千葉商大学名誉教授、環境・経済ジャーナリスト。主著は「新・日本経済入門」(日本経済新聞出版社)、「ゼミナール日本経済入門」(同)、「環境経済入門4版」(日経文庫)、「環境再生と日本経済」(岩波新書)、「日本経済復活、最後のチャンス」(朝日新書)、「サステナビリティ経営」(講談社)など多数。
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