かつては人気アイドル歌手、今も芸能界で活躍する一方で、大学教員、ユニセフ大使としての活動に取り組むアグネス・チャンさん。11月に『ひなげしの終活』(パブラボ刊)を出版した。
還暦を過ぎたとはいえ、まだまだ若い彼女がなぜいま、自分の最期に向き合う「終活」を説くのか。本の中身から、彼女の「生き方」を聞いてみた。(聞き手はニュースソクラ編集長、土屋直也)
―― 『ひなげしの終活』が出版されましたが、この本を書こうと思ったきっかけは?
「実は誘われたのです。テレビでその話をちょっとしたのかな? 編集者が見ていてアグネスの終活って、前向きで面白いっていうことで。『もう少し話聞かせて下さい。本にしてもいいのですか』って、いやまだはじまったばかりなんですけれどもといいましたが。『終活』を考えると、自分でも毎日がワクワクで楽しいですね。もう早めに終活した方がいい、その方が安心して残り時間、楽しく過ごせると思うのです」
―― 1番勧めたい終活はなんですか?
「色々あるのですけど、そうですね。一番勧めたい・・・。えー、現状はどういうことなのかを知ることが必要だと思うのですね。健康状態もそうだし、どのくらい蓄えあるのか、持ち物はどうなのか。まあ、死んだ後どういう人たちのことが一番心配なのかとか。そういうこと1回心の中で整理することが自分の中で大事かなあ。それが、第一歩かなと思うのですね。それでやっぱりいつ呼ばれるか分からないから神様に。だったら残り時間、少なければ何をする。長ければ何をする? 自分の中で色々考えてみることが大事かなって思う」
―― では、一番やりたいことは。
「遺言なんかでも考えてる最中なので。バケットリストというやりたいことリストを書いてあるのですけど、やりたいことのリストの中で、実現が難しいのは一人旅です。一人旅、行ってみたいです。(芸能人でいつも誰かといっしょで)やったことないから。やったことないことやることによって新しい自分が見つけられると思ってるのね。プラハやブタペストに行きたいのです」
「私は隠れた鉄子(鉄道好き)なんで、フランクフルトから電車で行きたい。乗ってるときが凄い嬉しくて、だから電車で行きたいのね。難民の方々と逆コースですね。帰りはいっしょになりますが。ひとりだとどうなるか、事故ってしまいそう」
「この前もロサンゼルスで子供の卒業発表があって、夫は行かないと言うから一人で行きました。向こうに子供がいるから、一人旅ではないのですけどね。そのとき、見事に米国のビザが載っている古いパスポートを羽田に忘れて(笑)。ロスで長い間拘束されました。羽田では、私は外国人ですから、出国カードを書かなきゃいけない。出入国管理のところに自分の新しいパスポートだけ持って提出しに行って、古いパスポートの入った袋だけ残しちゃった。凄い慌てんぼなんです」
「あちらではレンタカー借りて、ホテルじゃ食事作れないから子供に手料理食べさせてあげたいと思ってネットで民家借りたのですけど、遅い便で着いたので10時過ぎで真っ暗で、そこに着いたら鍵がない! マットの下に置いてあるという約束だったが、なくて。電話したら、何とオーナーがラスベガスに行っているの(笑)。これどうする?もう10時半、11時よ。今からどうする?そしたら、家主は『30分先に私の友達の家があって、そこ行けば合鍵あるから』と、結局知らない道をグーグルマップ頼りで、30分のところをレンタカーで1時間ぐらいかけて、全く一人でその友達の家行ったが。ドアも開けてくれない。マットの下のカギ持って戻ってやっと部屋に入ったのですね。疲れたお風呂入ろうと思ったらお湯が出ない(笑)。私本当に一人旅大丈夫かなって思った」
―― 終活といえば、遺言ですが、どなたに向けて書いているのですか?
「何回も書いたのですけどね。実際はまだ、作成してない。子供に向けるでしょう。だけど、遺言というのは最後のラブレターなのですね。『愛しているよ』っていう。子供にはもちろんそうなのですけど、友達とか遠い親戚とか。この服すごくかわいいと褒めてくれた人には、『かわいい』と言ってくれたからこの服、是非受け取って下さい。そういうような驚きのプレゼントというか。そういうの、やりたいなあと思って」
―― 『ひなげしの終活』で反響が大きかったのは?
「すごい反響があったのは、『君へのボックス』なんですよ。息子や娘たちに残す箱なのです。色んな残したいものを入れる。アフリカの山奥、レソトではエイズで亡くなる人が多いのですね。でも字も書けないし、子供に何も残せない女性たちにユニセフが奨めた「君へのボックス」というのがあって、自分の髪飾りとか自分で編んだものを入れて、息子とか娘に残していく。私は死の間際のお母さんと話し、そのボックスを見せてもらって感動したのです。だから自分の子供にも君へのボックスを作っているのです。本当、作っているときは幸せです」
―― 何を入れたいのですか?
「私は抜けた乳歯とか。0点になったテストとか(笑)。子供と一緒に行った本屋さんがあるのです。おまけ券があります。本屋さんは潰れたんですけど、おまけ券がこの前片づけてたら一枚だけ出たの。そういうのとか一枚だけ入れる。このボックス作ってると、拾った貝殻とか、その子、その子で違うじゃないですか。思い出が。だから、私が亡くなってから開けたら、泣いたり笑ったり、楽しい思い出が蘇ったり。あとアクセサリーが出てきたら、これはお嫁さんにとか。小さい頃ママのために作ったものとか、あとクリスマスツリーのものを彼が学校から作ってきて、ウチの子だから、飾り物はいっぱいなのだけどそういうものも入れてあげる。楽しいです。終活にお奨めです」
(構成・角田裕育)
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公開日:
(ソサエティ)
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土屋 直也:ネットメディアの視点(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設
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