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「社会の変化ほど、最高裁判例は変化していない」 瀬木明大教授

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【編集長インタビュー】『絶望の裁判所』『ニッポンの裁判』の著者・元裁判官に聞く①

公開日: 2015/12/17 (ソサエティ)

 最高裁は16日、現在の夫婦同姓制度を合憲とし、女性の再婚禁止期間を離婚から100日までなら合憲とする判決を下した。当事者はもとより、法曹界からも「こんな判決では世界から取り残されてしまう」との声も聞こえてくる。著書『絶望の裁判所』『ニッポンの裁判』(いずれも講談社現代新書)で、最高裁の古い体質を抉り出した元裁判官の瀬木比呂志・明治大学法科大学院教授に聞いた。(聞き手はニュースソクラ編集長 土屋直也)

―― 著書の『絶望の裁判所』は、ダンテの『神曲』のなかの「この門をくぐる者は、一切の希望を捨てよ」から書き始めていますね。そこに、いまの裁判所に対する深い失望がこもっていますね。

 普通の市民が裁判官にいだくイメージは、杓子定規で融通がきかないとしても誠実で筋は通す、出世などにはこだわらない人というものでしょう。そして裁判についても、市民感覚からずれることはあっても、おおむね正しく信頼できるというものでしょう。

 しかし、残念ながら、実態はそうではない。市民の期待に応えられる裁判官はむしろ少数派です。

 民事裁判では、ある程度審理が進むと、裁判官から強く和解を勧められることが多いでしょう。和解をしないと不利な判決を受けるかもしれないと密室で繰り返し言われかねない。そして、判決を下される場合でも、のっぺりした官僚作文で、訴えた人が一番判断してほしかった重要な点には、おざなりな記述しかないことも多いでしょう。

 こんな状況を反映して、司法改革で弁護士の数が激増したのに、民事訴訟の新受件数が激減しています。民事訴訟利用者の満足度も2割前後と低いのです。裁判への国民の信頼は落ちています。

―― 驚くべき実態ですね。海外からも反響があったとか。

 私の2冊の本には、日本の法律に関する海外の専門家やジャーナリストからも時に問い合わせがあります。米国での有力な日本法研究者は10人ぐらいしかいませんが、そのうち2人が著書を読んでコンタクトしてくださった。海外の日本法研究者も日本の裁判所の古い体質を疑っていたのだそうですが、確証が持てなかったようです。それが、私の本を読んで、確証がつかめたと興奮していました。「ああ、やっぱり、こういうことだったのか」というのです。

―― なぜ、そんな風になってしまったのですか。

 裁判官が、当事者でなく、最高裁やその事務総局の方ばかりうかがうようになったからです。多少なりとも個性的な裁判官、自分の主張をする裁判官、研究をしている裁判官は高裁長官にはなれません。判決や論文などで最高裁が公認している方向と違う意見を表明している人物も、高裁長官どころか所長クラスにもなれないことがあるのです。

 近年の最高裁判決は民主的になってきているという評価もあるのですが、私はそうは思いません。社会が変化しているほどには、最高裁判例は変化していません。ことに、統治と支配の根幹にかかわる事柄については微動だにしていません。せいぜい、多少の微調整があったという程度です。それすら、多くの裁判官の良心の死屍累々のうえに築かれているといえます。

―― いつからそんな風になったのですか。

 昔の裁判官は比べればずっとましでした。思い込みで「ああだ、こうだ」という人はあまりいませんでした。それほど個性は強くなくても、性格温厚で穏やかで、丁寧に審理して当事者にやさしい、被告人の気持ちを汲む、というような裁判官がかなりいたように思います。いわば、職人気質の裁判官が日本の裁判の質を支えていたともいえます。いまは、そうしたタイプの裁判官も少なくなりました。官僚タイプが多いですね。学者タイプに至っては、絶滅危惧種という状況だと思います。

 憲法76条には「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法および法律にのみ拘束される」とあります。しかし、実態は、「すべて裁判官は、最高裁と事務総局に従属してその職権を行い、もっぱら組織の掟とガイドラインによって拘束される」という状態です。

 ある元裁判官はこう言いました。「竹崎前最高裁長官が最初は影の主役として、後には最高裁長官として主導した2000年代以降の人事、刑事系裁判官中心の情実人事の傾向の強い人事が下級審の裁判官たちに与えた悪影響ははかりしれない」

 私は、現在の裁判官のキャリアシステムは、もはや自浄作用が期待できない状況にあると考えています。

土屋 直也:ネットメディアの視点 (ニュースソクラ編集長)

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土屋 直也:ネットメディアの視点(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設
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