全国の新型コロナウイルスの感染者は、10月15日が527人、16日が509人、17日が429人と、第5波はピークアウトしたことが分かる。しかし、デルタ株のような感染力の強い変異株が流行するなど、このウイルスの特質はまだ完全に分かったわけではない。
昨年のコロナウイルスの動きを見ると、4月頃、夏のお盆の頃、そして年末年始に流行している。今年も、このパターンが繰り返されているので、やはり年末年始に第6波が来ると考えたほうがよい。
そこで、諸外国の経験も踏まえて、どのような準備をしておくべきかを記してみたい。
第一はワクチン接種である。10月18日現在で、全人口に占めるワクチン接種者の割合は、1回目が75.3%、2回目が67.0%である。接種完了者の比率を国際比較すると、日本は、スペイン、カナダ、中国、イタリアに次いで第5位であり、フランス、イギリス、ドイツ、アメリカを追い抜いている。
今後は、若い世代への接種を加速化させねばならない。それに、ワクチンの効果が継続するのが約6ヶ月であるので、優先的に早期接種した医療関係者などは3回目の接種を始める必要がある。そして、順次このブースター接種を進めていかねばならないが、ワクチンの確保をはじめ接種に必要な準備を整えることが肝要である。1、2回目の接種のときのような混乱は避けねばならない。
第二は病床の確保である。14日夜の記者会見で、岸田首相は、今夏の感染力の2倍の流行になった場合でも対応できるように、医療体制の整備を行うことを約束した。また、コロナ病床用の補助金を受け取りながら、実際には稼働していない「幽霊病床」の「見える化」を進めることにも言及した。このような努力によって、病床の8割以上の稼働を目指すとしている。
東大の仲田准教授らの試算によれば、飲食店などへの時短要請や大型イベントの制限が撤廃されて、11月から3ヶ月かけて経済活動がコロナ前のように回復すると、東京都の1日の感染者は2月に5千人超、3月には1万人超になるという。
ワクチン接種者は、感染しても重症化しにくいが、感染者の症状によっても病床の逼迫度は異なってくる。入院できずに自宅に放置され命を失うという悲劇を二度と繰り返してはならない。
第三は、新薬の開発である。これまでも、アビガン、イベルメクチン、カモスタットなど別の病気の治療薬剤をコロナ治療用に使用して効果が上がったケースが多数報告されているが、厚労省は推奨していない。
アメリカの製薬大手メルクは、新薬「モルヌピラビル」の治験を進めており、既にFDAに緊急使用許可を申請しているが、11月30日には承認される可能性がある。承認されれば、世界初の経口治療薬となるが、この薬は重症化を阻止する効果を持つという。岸田首相も年内実用化を目指す旨の発言をしている。
日本の塩野義製薬やスイスのロッシュ、またファイザーも経口治療薬の開発を進めており、年内ないしは来年初めには承認されることが期待されている。
これらの経口治療薬の開発は、ゲームチェンジャーとなるもので、自宅での治療を可能にし、病床不足の問題を軽減する。インフルエンザに罹るとタミフルやリレンザを処方してもらって自宅で静養していれば回復する。そうなれば、コロナを過度に恐れることなく、経済活動を再開できる。
トンネルの先の光が見えた感じだが、治療薬よりもまずはワクチン接種だということを忘れてはならない。個々人が感染防止策を講じながら、少しずつ日常生活を取り戻すしかない。
コロナ感染第6波に向け ワクチン、病床、新薬は十分か |
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公開日:
(ソサエティ)
Reuters
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舛添 要一(国際政治学者)
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