東京都知事選も後半の戦いとなっている。22人の候補者が熱戦を繰り広げているが、誰が都知事になるにしても、選挙後の東京は数々の難題を抱えている。
まずは、新型コロナウイルス対策である。
この1週間、東京都の感染者は増加傾向で、6月28日の東京都の感染者は60人で、29日には58人に上った。「東京アラート」は意味がなかったということであり、緊急事態宣言発令前の水準に達している。
増加は、PCR検査数を増やしたからだというが、営業再開の条件として、ナイトクラブなどが従業員に対する検査を徹底している。若い世代の無症状者が検査の結果、陽性だと判明しているようだ。感染者に若者の比率が高いのはそのためである。
濃厚接触者でも、以前は無症状者には検査をしていなかった。これは、そういう指針を出した厚労省にも責任がある。ところが、北九州市が無症状の濃厚接触者にも検査をしたところ、陽性が続出したのである。今、同じ事が東京都で起こっている。
マスコミ受けするパフォーマンスではなく、これまでの対策を総括して、問題点を改善しないと、第二波、第三波に対応できなくなる。
さらに問題は、これから台風の季節が来ることである。
近年の日本列島は、異常気象で激しい集中豪雨に見舞われることが多くなっている。地震についても同じだが、避難所は病原体感染が起こる危険性が大きい。他人との間隔を開ければ、避難所の数を今の3~4倍にせざるをえないであろう。複合災害への備えが必要なのである。
小池都政の問題点は、防災に力を注がなかったことである。私が全家庭に配布した『東京防災』の評価が高いのに嫉妬したのか、その女性版と称する『東京くらし防災』という冊子を作成し、公共施設に設置したが、ほとんどの都民は見たこともない。
税金の無駄遣いであり、そんな暇があったら、地道な災害対策に努力すべきであった。荒川と江戸川が氾濫したら、江東5区の250万人が住む地域が水没するが、避難路の確保すらできていない。
第二の問題は東京オリンピック・パラリンピックである。
来年に延期することになったが、予定通りに開催できるか否かは疑問である。世界の新型コロナウイルス感染者は1000万人を、死者も50万人を超えた。アメリカ、ブラジル、ロシア、インドなど感染が急拡大し、規制を再度強化せざるをえない状態である。
ワクチンの開発も1年半~2年は必要だとみたほうがよい。
IOCは、再延期はなく、開催するか中止するかは10月に決めたいと言っている。各国とも代表選手の選考など準備に時間がかかるからである。日本側は、IOCと交渉して、その決定期限を少しでも後にしようとしている。しかし、デッドラインは年末であろう。主催都市の知事はこの問題にどう取り組むのか。IOC、組織委員会、国との難しい交渉が待っているが、これらの機関と良好な関係を築けなかった小池都知事の負の遺産が重くのしかかっている。
そもそも、数千億円と見積もられている延期費用を、都はどのようにして調達するのか。財政調整基金、いわゆる貯金の9500億円は、コロナ対策のためにほとんど使いきってしまっている。
そこで、第三に財政の問題が喫緊の課題となる。
東京都の財政、とくに収入は歪な形になっている。それは、法人住民税と法人事業税という法人二税が35%を占めているからである。景気が良く、企業の利益が上がると、税収も増えるが、逆になると急減する。いわばジェットコースターに乗っているように、上昇、降下を繰り返す。だから、不景気に備えて貯金が必要なのである。
新型コロナウイルスの感染拡大で、企業の収益は大幅に減っており、回復するのに数年はかかる。その間、どうやって、都の財政運営をするのか。都債の発行に頼らざるをえなくなろう。
以上のような点を考えると、選挙後の都政に待っているのは、まさに地獄である。
企業の収益悪化で、都財政も借金頼みに |
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【舛添要一が語る世界と日本(44)】都知事選後に待ち受ける「地獄」
CC BY /Dick Thomas Johnson
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舛添 要一(国際政治学者)
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