新型コロナウイルスの感染再拡大が止まらず、最悪の年末年始となっている。
東京都の感染者は、大晦日は1337人、元旦は783人、2日は814人、3日は816人、4日は884人と多く、医療崩壊が迫っている。
それを受けて、1月2日、首都圏の知事たちは、国に緊急事態宣言の発令を要請した。しかし、この要請はあまりにも唐突であり、もし要請するのであれば、事態がここまで深刻になる前に行うべきであった。
菅首相は4日午前中に記者会見し、緊急事態宣言を検討すると明言した。1月9日から実施するものと見られている。しかし、強制力に欠けるこの緊急事態宣言発令でどれだけの効果があるのか。
宣言の対象業界は飲食業界のみか。宣言の期間はどれくらいか。まだ、最終的な詰めはできていない。そして、飲食業界をはじめとする経済への悪影響にはどう対処するのか。
11月25日、西村大臣は「勝負の3週間」と言ったが、3週間後の12月16日になってみると、感染は増え続けており、まさにウイルスに完敗したのである。
すると、今度は12月22日に尾崎都医師会長が「真剣勝負の3週間」と述べた。それから2週間が経ったが、敗北したままである。
この流れを見ると、緊急事態宣言を発令するなら12月中旬に実行すべきだったと言うことができよう。少なくとも、さらに強力な規制措置が必要だったはずである。
緊急事態宣言が発令されると、外出自粛要請、学校・社会福祉施設・興行場などの使用制限、停止の要請や指示、イベント開催の制限や停止の要請・指示、臨時医療施設のための土地使用、医薬品・食品など物資の売り渡しの要請ができる。
しかし、基本的には要請ベースで、強制力も罰則も、また補償もない。そのため、特措法の改正が議論となっているが、通常国会が召集されるのは1月18日である。この緊急事態にこれでは、立法府の怠慢だと言わざるをえない。
新年恒例の箱根駅伝でも、多数の人が沿道に出て応援しており、政府や主催者の注意もあまり効果がなかった。
新型コロナウイルスの特性、感染したときの症状、治療法などが明らかになっており、昨年春のような未知の病原体への恐れがなくなっている。また、ワクチンも開発され、接種も始まったことも安心材料になっている。
日本は、医師数、病床数など世界に誇る医療資源を持ちながら、コロナの感染拡大でそれが逼迫している。資源の最適配分、資源の集中投下に失敗しているからである。中国は、プレハブで一大コロナ専用病院を作り、感染者の急増に対応した。重症者に対応するために、日本ももっとコロナ専用病院を整備すべきである。
緊急事態宣言下では土地使用が可能なるが、実は緊急事態宣言を発令しなくても、それが可能になるように特措法を改正する必要がある。
今回の新型コロナウイルスの最も厄介な点は、無症状者が感染させるという点である。これが感染経路不明の市中感染を増やしているのである。無症状の陽性者を見つけるにはPCR検査を徹底するしかない。
それを徹底しているのが中国である。感染が報告された町内の住民は全員が検査対象となる。そこで、たとえば北京では人口の半分に当たる1千万人に検査を実施しているのである。東京でも、人口の半分、つまり700万人にPCR検査を行えば、もっと実効的な隔離ができるだろう。「検査と隔離」という感染症対策の原則に従うことが必要なのである。
日本では、「まぐれ」で感染者や死者数が少ないのに油断して、必要な対策を怠ってきた。全てが後手後手で場当たり的である。
緊急事態宣言の発令を求めた小池都知事は、政府に責任転嫁して、自分は安全地帯に逃げ込んでいるが、飲食店への営業時短など自治体で行えることは多々あったはずである。とくに今やるべきは、PCR検査の拡充とコロナに医療資源を集中する病院や施設の整備である。
12月中旬には出すべきだった緊急事態宣言 |
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【舛添要一が語る世界と日本(71)】PCR検査とコロナ専門病院の拡充を
CC BY /Ivan Radic
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舛添 要一(国際政治学者)
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