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米国への熱波襲来 飼料の主役トウモロコシ高騰

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【藤和彦の目】温暖化?偏西風が蛇行 食糧危機は慢性化

公開日: 2021/07/19 (ソサエティ, 気象/科学)

トウモロコシ=㏄byburgkirsch トウモロコシ=㏄byburgkirsch

 猛暑による恐怖が世界規模で広がっている。米国、カナダなどの北米や欧州、ロシア、インド、イラクなどが相次いで猛暑に襲われている。あまりのすさまじさに「新型コロナウイルスの次は猛暑で世界的に大規模な死者が発生する」との警告が出ている。

  日本付近では活発な梅雨前線が停滞し、集中豪雨に見舞われたが、世界的に異常気象が発生している原因は偏西風の蛇行である。

  偏西風は北半球の上空を西から東へ吹くジェット気流のことである。高気圧や低気圧は偏西風の影響を受けて西から東へ移動するが、この偏西風が今年5月下旬から大きく蛇行するようになった。

 日本でも「北米地域への熱波襲来」が報じられるようになったが、偏西風が北側に大きく蛇行したことで南から北へと暖気が流入したことから、米国の各地の気温が観測史上最高を記録する事態となった。

 史上稀に見る大きな蛇行が起きたことから、高気圧や低気圧の動きがほぼ止まり(ブロッキング)、熱い空気を溜め込んだ高気圧が米国北西部からカナダ西部にかけて居座る「ヒートドーム」現象が発生したのである。
 
 欧州連合(EU)の気候情報機関は7月7日「6月の北米の平均気温は過去30年間の平均値より1.2度高く、過去最高となった」と発表した。

 米国の熱波は最悪期を脱したようだが、ヒートドームが消えて平年並みになるにはもう少し時間がかかるため、米国は近代史上最悪の干ばつを経験することになりそうだ(6月23日付BUSINESS INSIDER)。

 米中西部の多くの地域で既に記録的な干ばつが続いている状況下で熱波が襲来したことから、今後農作物の収穫が減少するなど大規模な被害が発生する事態が想定されつつある(6月29日付ナショナルジオグラフィック)。
 
 中でも懸念されるのはトウモロコシの不作である。
 
 米国のトウモロコシの生産量と輸出量はともに世界のシェアの3割を占める。中西部のトウモロコシ大生産地域はコーンベルトと呼ばれ、アイオワ、イリノイ、ネブラスカ、ミネソタの4州で米国全体の5割のトウモロコシを育てている。

 トウモロコシは通常5月に種がまかれ、7月から8月にかけて受粉する。トウモロコシは花粉が風に運ばれて受粉する風媒花である。雄穂の花が開花してから数日後に雌穂の絹糸(めしべ)が出て、雄花の花粉がかかると受粉する。受粉しためしべ1本が1粒の実になるので、1本1本がしっかり受粉しないと歯が抜けた状態(先端不稔)になってしまう。

 受粉にとって過度の高温(気温が32度以上)や乾燥は大敵である。花粉の活性が失われるため先端不稔となってしまうからである。水の要求量が多い受粉の時期に襲来した今年の熱波により、10月の収穫期に大きな影響が出るとの予測が出ている(7月8日付Zerohedge)。

 世界の食品価格の動向についてみてみると、新型コロナウイルスのパンデミック以降の高騰ぶりは目を見張るものがある。国連食糧農業機関(FAO)が作成する世界食料価格指数(穀物や食肉、乳製品などの国際取引価格から算出)は、1年前から4割上昇し、約10年ぶりの高水準となっている。

 日本でも7月から家庭用の食品が次々と値上がりしているが、要因の一つはトウモロコシ価格の高騰である。トウモロコシの価格は世界的な供給不足のせいで60%強の値上がりとなっている。

 トウモロコシの主要産地の一つであるブラジルで干ばつが発生し、中国が大量購入に走っているからである。シカゴ先物市場のトウモロコシ先物価格は1ブッシェル当たり6ドルを超えた水準で高止まっている(6月末現在)。

 2018年8月から家畜伝染病のアフリカ豚熱が流行した中国では、その後感染は徐々に落ち着き、昨年から豚の飼育頭数が急回復したことにより、豚の飼料用の需要が急拡大している。中国の飼料原料に占めるトウモロコシのシェアは5割である。輸入するトウモロコシの主な用途は養豚用の飼料原料であり、主要な輸入先は米国である。

 中国政府は国内の穀物農家を保護するため、トウモロコシの輸入枠を720万トンに設定しているが、昨年はこの輸入枠を突破してしまった。65%の高関税を払ってもなお国内の需要があったのである。

 中国が飼料用として輸入している米国産トウモロコシ価格が急騰するようなことになれば、世界最大の豚肉生産国である中国にとって大打撃であるが、日本を始め世界の豚肉価格にも悪影響を及ぼすことになるだろう。
 
 米国の豚肉価格は、昨年の底値の3倍を超える高値となっている。昨年春のパンデミック時にクラスターが発生したことが食肉加工工場が相次ぎ閉鎖し、生産者の一部が出荷時期が合わない豚の殺処分を大量に行ったことがその背景にある。

 日本でも6月の国産豚肉の卸値が米国の豚肉価格の上昇の影響を受けて前月比2割高となっており、世界的に豚肉価格が高騰する気配を見せている。

 今年の中国は昨年に続き、降雨災害が発生し、コメを始めとする農作物の収穫に影響が出るとの予測もある。FAOの6月の世界食料価格指数は1年ぶりに前月比マイナスとなったが、今後再び急上昇する可能性がある。

 偏西風の蛇行はこのところ常態化しつつある。地球温暖化が原因との説があるが、そのメカニズムは不明である。いずれにせよ、私たちは今後異常気象による農作物の不作に悩み続けることになるのではないだろうか。

藤 和彦 (経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)

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藤 和彦(経済産業研究所コンサルテイング・フェロー)
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣参事官)。2016年から現職。著書に『原油暴落で変わる世界』『石油を読む』ほか多数。
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