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アイドル刺傷事件を防止できなかった警察のサイバー無知

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わたしも被害届や告訴状を受理して貰えなかった

公開日: 2016/06/02 (ソサエティ)

写真AC 写真AC

角田 裕育 (ジャーナリスト)

 現役女子大生で個人でアイドル活動をしていた女性が、ファンと称する人物に刺され重傷を負った。

 警視庁武蔵野署に「ツイッタ―などで、ファンの男性から嫌がらせをされている」とネットを利用した「ストーカー被害」を受けていると訴えていたのに、事件を防げなかったのはなぜか。

 加害者が書いたとされるツイッタ―の書き込みを見ると、ハンドルネームからして「君を嫌いなやつはクズだよ」とかなり変わった「名前」をつけている。「映画なんて気持ち悪いだけじゃん。世の中気持ち悪いだけじゃん」「劇的を望む」「性欲と信仰は金になる」と書き込みは異常だ。

 なぜ、武蔵野署はストーカー犯罪として対応策を取れなかったのか。理由の一つにインターネットでの誹謗中傷や脅迫的な書き込みは膨大であるとともに、ITに関する知識の豊富な警察官が一般の警察署にはきわめて少ないことが挙げられる。

 ストーカー規制法の適用は、下手をすれば個人の生活に支障が来すほど、厳しくなっている。貴方が恋する20前後の青年(あるいは乙女)としよう。「貴方は僕の心の太陽です。是非、お付き合いして下さい」という手紙を出して、見事「NO」の返事が来てあえなく玉砕したとしよう。

 年配の男性なら「そんなこと位で挫けるな! 恋は一押し二押し、三に押しというだろ!」などと言って、励ますだろう。その言葉を信じて、「やはり、僕と貴方とは赤い運命の糸で結ばれていたのです。お願いです。この気持ち受け取って下さい」という純情さ丸出しの手紙を2度、3度出したとしよう。

 見事意中の君のハートを掴むことが出来るかもしれないが、「2度以上、複数回に渡って断っている交際を求める手紙を寄こされた」と警察に訴え出たら、いきなり逮捕ということは脅迫的な文言でもない限り、可能性は低いが、警察からは「もう彼女(彼)に手紙も電話もメールもしないように。これ以上、接触すれば逮捕することも有り得ます」と警告される。 

 しかし、これがSNSなどネットとなると警察の対応は鈍い。ニュースソクラのコラムニストのアグネス・チャンさんも幾度も脅迫的言辞や名誉毀損内容の書き込みを警察に訴えたが相手にされなかった。遂に殺害予告事件に発展するまで警察は動かなかった。

 具体的に「○月○日にあなたを殺す」という趣旨の書き込みがあったため、最後は警察も動いたのだが、アグネスさんは「警察はもう動かないだろう」と諦めていたそうだ。

 サイバー犯罪は一刻一秒を争う。例えば、2ちゃんねるの経営権は現在海外に移動してしまっているので、2~3ヶ月以内でなければ国内のIPアドレスを把握し、プロバイダに開示請求して犯人を特定することは困難だ。法律上の時効は名誉毀損だと3年だが、追及ができなくなってしまうという意味で、ネットでの実質的な時効は2~3ヶ月ということは珍しくない。

 プロバイダーが個人情報を保存している期間などが限定されていたりするからだ。サイバー犯罪対策課の警察官は捜査中にプロバイダなどの証拠保存期間が過ぎてしまい、捜査の行き詰まりを経験することが多いという。

 短期間で追跡できなくなるだけでなく、プロバイダーに被疑者の情報を開示請求するということ自体を知らない警察官も少なくない。

 私自身がそういう警察官の「被害者」だ。今回のアイドル刺傷事件の被害者から事前に相談を受けていた警視庁武蔵野署生活安全課は、実は、記者が以前に2ちゃんねるに誹謗中傷書き込こまれた際に相談したところだ。何度も相談のうえ、弁護士を通してプロバイダーに実行者のIPアドレスを出させることに成功した。

 弁護士や警視庁本部サイバー犯罪対策課は「そこまでやれば、捜査出来る条件は整っている」と回答し、解決の糸口が掴まれたと思われた。だが、武蔵野署では生活安全課(サイバー犯罪対策課は本部の生活安全部に設置されている)と刑事課との間でたらい回しされた挙句、被害届も告訴状も受理して貰えなかった。

 今回のアイドル刺傷事件後に武蔵野署の安全対策課と話した際にも、
記者「ネットについて勉強していると言うなら、プロバイダへの情報開示という意味を分かっているか」
武蔵野署「知らない」
と答えている。私が被害を蒙ってから数年もたっているのに状況は変わっていないし、捜査の手法もまるで進化していない。

 以前、関西の某県警で「3通のメールを女の子に出しただけでストーカーで逮捕された」という若い男性がいた。調べてみると、その男性が逮捕された警察署刑事課には本部のサイバー犯罪対策課員を掛け持ちしている署員がいたことが判った。しかし、こうしことは極めてレアなのである。ネット被害者の多くは今日も警察署で門前払いにあっている。
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角田 裕育(ジャーナリスト)
1978年神戸市生まれ。大阪のコミュニティ紙記者を経て、2001年からフリー。労働問題・教育問題を得手としている。著書に『セブン-イレブンの真実』(日新報道)『教育委員会の真実』など。
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