1月18日の朝ラッシュ、首都圏の各鉄道は積雪のためにダイヤが大幅に乱れ、特に、京王線と東急電鉄各線での混乱が大きかった。千歳烏山・二子玉川・自由が丘などで、ホームが人であふれて入場が規制され、駅周辺に大行列ができて乗れるまで数時間待ちとなった。車内はもちろん大混雑だった。
列車を運行できないほどの大雪ではなかったのに大混乱となったのは、間引き運転のせいだった。普段でも混むのに輸送力を少なくしたため、始発駅近くで満員となり、都心に近い駅ほど乗れる人は少なくなった。
京王線は、車両基地で架線の断線があり、高幡不動駅では「車庫線での断線と倒木の影響で、ほとんどの電車が車庫線で眠ったままの状態です」と放送された。車両を出せず間引き運転をせざるを得なくなった。一方、東急電鉄は、大雪の予測に応じて計画的に間引き運転とした。結果だけを見ると、間引き運転をしていなかったら今回のような大混乱とはならなかった。
東急電鉄が間引き運転をしたのは、2014年2月に発生した東横線の元住吉駅での追突事故の対策である。大雪時には、運転中止やダイヤ乱れによる長時間の駅間停車の防止のために間引き運転をすることとした。2014年の事故の翌日には、国交省は各鉄道事業者へ「積雪の状況に応じた適切な運転規制等を実施すること」と通達していた。
今後も、ラッシュ時に間引き運転をすれば輸送力が大幅に不足し、今回の繰返しとなる。利用者の協力と鉄道の努力により、間引き運転は実はなくせる。駅間停車が発生しても、それが長時間とならない方策を用意しておけばよいのだ。
首都圏の多くの路線の朝ラッシュにおいて、本線上を運行する列車の本数とホームに収容できる箇所数は、ちょうど同じくらいか列車の方が多い。間引き運転をしていないと、何らかの障害で運行できなくなると、駅間に停車する列車が発生する。
その場合に、その先行列車を次の駅間に出発させられれば、空いたホームへ収容できる。乗車中の利用者へ「駅間に停まった後続列車を収容するため、この列車を出発させます。次の駅には別の列車が停まっており、しばらく駅間に停まるかも知れません。」と説明し、降りたい人には降りてもらう。
18日の大混乱でも暴動を起さない日本人の特性から、充分に理解を得られるのではないだろうか(日本テレビ「news every.」での解説)。
さらに、鉄道会社が信号システムの改良等の努力をして、先行列車は編成の半分だけ前に進めて後ろ半分は乗降できるようにし、後続列車は編成の前半分だけホームにかけて乗降できるようにすれば、利用者の協力をより得やすいだろう。
「鉄道の安全の歴史は事故の歴史」とも言われ、鉄道は痛ましい事故を教訓に安全対策を洗練させてきた。安全をないがしろにして効率を上げることは絶対に許されないが、安全のために間引き運転をし過ぎて混乱を来たすことも避けたい。18日の混乱がそれを見直すきっかけとなることを願っている。
大雪の時、「間引き運転」は必要? |
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利用者の協力と鉄道の努力で「間引き」はなくせる
公開日:
(ソサエティ)
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阿部 等(交通コンサルタント会社「ライトレール」社長)
1961 年生、東大工学部都市工学科大学院修了。JR東日本(1期生)に17年間勤務し、鉄道の実務と研究開発に従事。2005年、交通コンサルタント会社「ライトレール」を創業し、交通計画のコンサルティングに従事。各種メディアにて鉄道に関してコメントする機会も多い。
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