1月21日に『大雪の時、「間引き運転」は必要?』(https://goo.gl/O94yXW)を投稿し、22日にヤフーニュースへ配信されたところ、23日の17時時点で208件のコメント(http://www.LRT.co.jp/file/150122mabiki_YAHOcome.pdf)が寄せられた。
分類すると賛同12、反対141、その他86(重複カウントあり)で、賛同コメントへは「そう思わない」の投票が多く、反対コメントへは「そう思う」の投票が多い。つまり、私の提案に対し、反対の意見が圧倒的に多かった。「無知な外野がケチ」「机上の空論」「素人考え」等々、厳しい意見もあった。
せっかく集まった多数の意見について、何回かに分けて考察する。まずは、反対意見と私の提案で前提条件が異なっている。
第1に、18日朝の積雪量は最大で東京都心6cm、横浜市内5cmであり、豪雪地のような設備と車両でなくとも運転不能となる雪量ではなかった。加速時の空転と早めブレーキによる走行時間の伸びや、乗降に手間取ることによる停車時間の伸びにより、通常よりダイヤの乱れが大きくなったとしても、計画的に間引き運転とする必要はなかった。
前日の大雪予報の時点で間引き運転を計画したとしても、当日朝の天候で通常運行に戻す判断もあり得たはずだ。反対意見は、列車が立ち往生したり、ブレーキが極端に効かなくなるような大雪を想定しているようだ。
第2に、列車の運行が全く不能となる大雪でも通常通りに運行すべきとは提案していない。JR東日本にて長野で3年間勤務した際、ベテランの先輩から「雪が降っている時こそ、列車を止めてはいけない。一度止めたら雪はどんどん積もり、架線は凍結する。」と教わった。
間引き運転はむしろ雪による被害を大きくする。そして、雪量が一定限度を超えたら、安全確保のために間引き運転ではなく全面運休としなければいけない。反対意見は、私の提案をどんな大雪でも定常運行すべきと拡大解釈したようだ。
次に、「間引き運転するなら事前に広報すべき。それに応じて行動を変えられる。」との意見が多数あり、まさにその通りだ。国交省が22日に開催した「首都圏における降雪時の鉄道旅客輸送に関する連絡会議」ではそのことが議論された。
さらに、社会全体の考えを改め、大雪の場合は、医療・福祉・インフラ関係等以外は休業や在宅勤務に切替えるようにすべきとの意見が多数あり、まさにその通りだ。そのためにも、鉄道の運行状況や輸送能力に関する適時適切な情報開示が欠かせない。
22日に、アゴラへ「大雪や大雨での鉄道の間引き運転をなくしたい」(http://agora-web.jp/archives/1667524.html)を投稿していた。間引き運転による社会的損失、過去の事例、「安全第一」を前提とした「安全唯一」からの脱却の必要性を書いた。
(株)ライトレールが事務局を務める工学院大学オープンカレッジ鉄道講座では、2月2日にトピックス講座「災害に強い鉄道にするために」(工学院大学 曽根悟特任教授)(http://www.LRT.co.jp/kogakuin/topi160202.pdf)を開講し、間引き運転や駅間での長時間停車もテーマとする。多くの方のご参加をお待ちしている。
【続】大雪の時、「間引き運転」は必要? |
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大雪時の「間引き運転」を考える 多数集まった意見から
公開日:
(ソサエティ)
写真AC
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阿部 等(交通コンサルタント会社「ライトレール」社長)
1961 年生、東大工学部都市工学科大学院修了。JR東日本(1期生)に17年間勤務し、鉄道の実務と研究開発に従事。2005年、交通コンサルタント会社「ライトレール」を創業し、交通計画のコンサルティングに従事。各種メディアにて鉄道に関してコメントする機会も多い。
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