東京地裁は15日、日産前会長のカルロス・ゴーン被告の保釈請求を認めない決定をした。表面的には「証拠隠滅の恐れがある」が却下の理由だが、ゴーン被告が日本国内でなく、フランスのパリでの居住を求めたため、認められなかったようだ。
逮捕前には日産の会長を務め、東京には日産が用意した住居もあったゴーン被告だが、ルノー会長を兼務するようになって以降は、東京よりも海外に滞在することが多くなっていた。妻をはじめ家族の多くがフランスに居住していることもあり、保釈条件としては異例の海外在住を求めたとみられる。
もちろん、裁判や司法当局から要請があれば来日することも条件に付けくわえたようだが、地裁も「異例」の海外在住までは認めることはできなかった模様だ。
関係者の間からは、ゴーン被告が戦略的に保釈条件のハードルを上げてあえて保釈却下を「演出」したとの見方すらでている。海外では勾留が続く「人質司法」への批判が強まっており、あえて海外でのゴーン被告への同情論が広がることを狙っているとの見方だ。
ただ、勾留が続くことで、フランスではルノー会長の解任論が強まったこともあり、ゴーン被告サイドによる戦略的な勾留延長作戦とみるのは「うがちすぎ」(民放の検察担当記者)との見方もある。
通常の東京地検特捜部が立件した特別背任事件の場合で、被告側が無罪を主張しているケースでは、「第一回公判までは勾留が続くのが一般的」(ゴーン被告の代理人である大鶴弁護士=元東京地検特捜部長)とされる。
このため、今回の保釈却下で今後半年以上の勾留となるとの見方もでている。ただ、却下の理由がパリ在住を求めたことにあるとみられ、ゴーン被告が日本国内の居住を受け入れて保釈請求を再申請し、早期保釈が認められる可能性もでている。
有価証券の虚偽記載でゴーン被告とともに起訴されたケリー元日産代表取締役は日本国内での居住を受け入れて保釈されている。ケリー被告は保釈後も記者会見などメディアとの接触をしていないが、ゴーン被告は保釈されれば、無罪を主張する記者会見を開く可能性が高い。
東京地検は起訴事実以外の特別背任容疑に関して引き続き捜査を続けている模様だ。たとえば、オマーンで代理店に支払われた手数料がゴーン被告個人へ還流したともみられる取引などについて関係国への捜査依頼もする見込み。日産もこうした中東での資金の流れも含めて内部調査を強化しており、新たな容疑が浮上する可能性もある。
ゴーン被告の保釈却下、パリ居住希望が理由か |
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戦略的な勾留延長作戦との見方も
公開日:
(ソサエティ)
Reuters
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土屋 直也(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設
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