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高崎線の駅火災で、どうして2日半も運休に?

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漏電を検知できず電気が流れ続け、信号の復旧に多大な手間

公開日: 2016/03/25 (ソサエティ)

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阿部 等 (交通コンサルタント会社「ライトレール」社長)

 3月15日の早朝、JR高崎線の籠原駅で火災が発生して信号設備その他が焼損し、列車を運行できなくなった。その後、完全復旧まで2日半も要した。

 事故の原因は、毎日新聞の記事(http://mainichi.jp/articles/20160316/ddm/041/040/122000c)の図を見ると分かりやすい。列車のパンタグラフへ電力を供給するトロリー線を吊るすビーム(はり)の、さらに上にある「き電線」(送電線)を吊るす陶磁器製の碍子(がいし)が破損したために、き電線がビームに接触して周辺へ漏電したことだった。

 昭和40年代の国鉄では、「き電線碍子が破損し、き電線がビームに接触」することが頻繁に起きた。大半は、大被害になる前に職員または一般人が火や煙に気付いて通報し、すぐに送電停止して大事には至らなかった。その後、碍子の点検や交換が適正化され、こういった事象は極めて珍しくなった一方、起きた時は事象が理解されず、すぐに送電停止されなくなった。

 今回、駅の火災報知機がなった際、駅係員は原因が分からなかっただろう。消防署と輸送指令へ速報しても、受けた輸送指令員も、き電線からの漏電が原因で、すぐに送電停止すべきとは判断できなかっただろう。結果として電流が流れ続け、信号設備が大規模に焼損した。これだけの大被害は初めてのようだ。

 そもそも、大火災となるほどの漏電が起きたなら、変電所の遮断器が動作してすぐに送電停止となり、大被害とならないのではと不思議に思い、調べたところ以下が分かった。
 ・漏電先のコンクリート柱は電気抵抗が大きく小電流となり変電所で検知できず
 ・直流電気鉄道の「高抵抗地絡」と称し、長年対策に苦慮してきた
 ・各種の対策が検討・実用化されたが、費用対効果面から全設備へは対処されず
 ・強風により支障の置きやすい本四備讃線と関西空港線は対処済み

 上記を情報発信したところ、毎日新聞から問合せがあり新たな記事(http://mainichi.jp/articles/20160319/k00/00e/040/210000c)となった。本件を機に、技術革新と適正な設備投資が進み、鉄道の安全・安心がさらに高まって欲しい。

 もう1つの疑問、復旧に2日半も掛かった理由を解説しよう。き電線、ビーム、コンクリート柱の復旧はそれほどの時間は掛からず、時間を要したのは信号設備の復旧だったと考えられる。

 籠原駅は車両基地が隣接しており、おそらく数百の信号ルートがあり、踏切制御とも連動する。それらを制御する連動装置は、数千本の配線となり、焼損またはビニールが溶融して合体してしまった配線を解きほぐして復旧するだけでも大変だ。

 さらに復旧後、1つ1つのルート確認にも大変な手間を要する。駅の信号扱い所で操作する係員と、現地の信号現示や分岐器転換、踏切鳴動を確認する係員が無線交信しながら全ての動作を確認する。適正に動作しないルートがあったら、手直しにさらに時間を要する。

 昨年来、山手線の電化柱倒壊、各所での連続不審火、京浜東北線の架線溶融等々、首都圏の鉄道の設備に関わる事故が続いている。設備の設計や保守に関わらなかったものも多いが、事故の直後は「メンテの不備」「安全軽視」といった声が上がる。

 鉄道設備の設計や保守は事故が起きた時ばかり注目され、割に合わない仕事とも言えるが、便利で安全な鉄道を実現するのに、設備に関わる仕事は極めて重要だ。そのことが多くの人に知られ、関係者の努力が評価され、技術力も向上することを願っている。
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阿部 等(交通コンサルタント会社「ライトレール」社長)
1961 年生、東大工学部都市工学科大学院修了。JR東日本(1期生)に17年間勤務し、鉄道の実務と研究開発に従事。2005年、交通コンサルタント会社「ライトレール」を創業し、交通計画のコンサルティングに従事。各種メディアにて鉄道に関してコメントする機会も多い。
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