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深刻化する「実家相続問題」

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空き家 登記も相続放棄もされず、所有者特定できず

公開日: 2016/01/07 (ソサエティ)

ハウジング・トリビューン編集部

 空き家対策特措法が2015年5月26日に全面施行されて、約半年。ここにきて、国土交通省や日本司法書士会連合会の調査から、親の死亡後、利活用できずに空き家化している例が非常に多い実態が明らかになりつつある。

 同法施行により、市町村は特に周辺環境に悪影響を与える「特定空き家」に対し、最終的には行政代執行により特定空き家の除去を行えるようになった。すでに、長崎県新上五島町や、神奈川県横須賀市で、実際の適用事例が出てきている。

 空き家対策が一歩進んだわけだが、様々な調査から空き家の実態がさらに明らかになってきた。問題は、親の死後、空き家化するケースが多いことだ。全国の空き家所有者を対象とした「平成26年空き家実態調査」(国土交通省)によると、空き家を取得した経緯 については、「相続した」が最も多く、過半数を超えている。

 司法書士会連合会は、2015年8月に実施した「全国空き家問題110番」に寄せられた相談データを公表している。「空き家になった原因」において過半数を超え、最も多かったのは「所有者の死亡」だ。こちらのデータも、高齢の親の死亡後、子が親の住んでいた実家を相続するに際し、空き家化するケースが多いことを裏付けている。

 子が実家に住む、売却・賃貸化するなどして利活用できれば良い。しかし、現実には立地が悪い、建物の腐朽が進んでいるなどで、利活用できないケースが多いようだ。

 国土交通省が社会資本整備審議会・住宅宅地分科会で公表した調査によると、利活用できる可能性がある空き家は、全空き家320万戸のうち約7分の1にあたる48万戸にすぎない。活かせる空き家は7戸に1戸しかない。

 懸念されるのは、利活用できない実家を相続登記せずに放置する「相続放置空き家」が増加していることだ。「全国空き家問題110番」では「相続放置空き家」の相談も多く寄せられたという。

 自治体などが空き家対策を行おうとする際、手間がかかるのは所有者の特定だ。空き家特措法の施行前は、登記簿や住民票などから調べていた。特措法の施行後は、空き家所有者の特定をするためなら固定資産税の納税情報を閲覧できるようになった。それでも分からない場合は、周辺住民への聞き込みを行うという。

 課税台帳、固定資産税の納税情報などは登記が不完全な場合の所有者の特定には役立つ。だが、それで特定できた所有者が亡くなっている場合に、相続者を探すのにはあまり効果がない。それだけに、相続登記がきちんとされるかどうかは空き家対策を取りたい自治体には重要だ。

 所有者がわからない空き家は対策を講じることが難しい。特措法で、最終的には行政代執行で除去することはできなくはないが、時間をかける必要がある。また、除去費用は自治体持ちとなり、自治体の財政を圧迫する。

 実家の相続「放棄」の問題も空き家対策での障害だ。法律上、相続人は相続したくなければ相続を放棄できる。相続人全員が相続放棄し、相続する者がいなくなった場合には、相続人は家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てることができる。

 弁護士などが相続財産管理人として選任され、債務の清算などを行った後、残った財産を国庫に帰属させる。つまり、相続放棄すれば、空き家は最終的には国の持ち物となる。国が処分を決められるわけだ。

 だが、実際には相続放棄すらされないで空き家化するケースが多いという。「全国空き家問題110番」にも、実家の相続を放棄できないで空き家化しているという相談が寄せられたという。

 相続人が相続財産管理人選任の申し立てをするには、かなりのコストが掛かる。相続財産管理人の選任の手続きを代理・代行する費用が10万円から15万円程度、裁判所へ納付する予納金が20万円~100万円程度、さらに弁護士や司法書士への報酬が必要でケースにもよるが最低でも数十万円、100万円が一時的にしても必要になるケースが少なくない。

 このため、相続人の中で誰がコストを負担するのかという問題になり、結局、所有者のはっきりしない空き家が増えてしまう。空き家が相続登記されないケースの多くが、相続放棄ができないでいるからとの指摘もある。

 そのうえ、国も空き家管理の難しさから相続放棄の空き家を所有したがらない、つまり、相続放棄を受け付けないケースがほとんどだという。ますます、所有者がわからないということになる。

 背景には、家が所有者ともに「高齢化」して傷みがひどく、転売や賃貸できない、つまり資産価値がないものがほとんどになりつつあるという現実がある。地方であれば、土地代も解体費用にすらならないケースが大半だ。所有者が死んだ後、相続放棄や相続を登記するコストすらまかなえないほどに家とその土地の資産価値が劣化している。

 今後は、登記の放置、相続の放置がますます増えていくだろう。利活用できず、相続放棄もできない―。そのような境遇に立たされた人が実家の相続を放置することで、結果として所有者がわからない空き家が急増する。ますます空き家問題が深刻化してしまう悪循環に陥りえかねない。登記や相続放棄の手続きを簡素化するなどで、多額のコストがかからない制度変更などが大きな課題になってきている。
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