各界で活躍する女性リーダーばかりが集結したシンポジウム が週末に都内のお茶の水女子大学で開かれた。
10代から60代まで老若10人のパネラーから約5時間にわたって報告 、討議が続いた。会場は活発な質疑に包まれた。
シンポジウムは研究イノベーション学会、NPO法人ZESDAなどがお茶の水女子大と共同で開催。ICTとプロデューサーシップで地方創生と地域の課題解決を進めている女性リーダーを集めた。
第三部構成で、第一部で 基調講演した山田真貴子総務省情報流通行政局長は、人口減問題を「静かな有事」としたうえで、ICTが行政改革や地域活性化に役立っている事例を具体的に紹介した。例えば、保育所の入所希望者800人を300施設に振り分ける作業にコンピューターを使った場合、それまで延べ1000時間がかかっていたがほとんど瞬時に達成できた、などの実例に言及した。
第二部のリーダーそれぞれの活動報告では、国際的な災害救助活動に携わっ てきた看護師、石井美恵子(国際医療福祉大学大学院教授)さんから、先進国でありながらヨルダンなどにも劣る日本の救助の実態が紹介され、摩擦を乗り越えながら現地で日本のプレゼンスを高めてきたスキルや交渉術などが披露された。
山口県萩市の観光大使に就任しているIT企業経営者の田子みどり (コスモピア代表取締役)さんからは、山口県出身の経営者を集め、 大人の修学旅行と称して郷里を知る旅を企画したり、ジョギングしながらの観光など新しい視点からの観光 振興などの活動実績が紹介された。
第三部の対談「2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたプロデューサーとは」には、長野オリンピックのIOCリエゾンを務めた麻生菜穂美さんとパラスポーツ支援NPO、STAND理事長の伊藤数子さんが登場。麻生さんからはオリンピック開催の数々の裏話、苦労話が飛び出し、会場から笑いを誘った。
伊藤さんは、認知度が低かった頃のパラスポーツの振興の難しさや失敗談が語られ、「パラスポーツは健常者のスポーツ以上にルールや選手の起用法に戦略性が要求される面もあり、おもしろい。ぜひ会場に足を運んで観戦応援して欲しい」と会場の聴衆に呼びかけた。
10人の女性パネラー全員のパネルディスカッションでは、女性によるリーダーシップのあり方などが議論になった。養護施設退所者向けのガイドブック作成委員会「ゆでたまご」の代表を務める阿部華奈絵さんは、10代でありながら、年上の方々をたばねる立場。よく話を聞くことなどで参加意欲を引き出すのは年下でもできることと語り、会場は拍手に包まれた。
年配のパネラーからは性差別を超えてきた苦労話も飛び出した。山田氏とともに基調講演した原山優子東北大学名誉教授は、ソサエティ5.0という概念を使って社会の変化を講演した。そのうえで、「殊更に女性であることを強調しなければならない時代ではない。人間としての共感をベースにしたリーダーが必要とされている」と言った発言があり、会場ではうなずく人が多かった。
実行委員長の中原新太郎氏は「女性経営者ばかりを並べても社会の全体が見えてこない。 苦労したが年代を違い、社会的な立場の違う女性に集まっていただいた。これほど多様な社会が実現しつつあることを、女性10人を通じて受け彫りにできたとすれば成功」と語った。
参加者からは「久しぶりに得したと感じるシンポにでれた」など好意的な意見が聞かれた。