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【編集長が聞く 辻秀一氏】アギーレ解任のサッカー日本代表が再生するためには

公開日: 2015/02/04 (スポーツ/芸術)

【編集長が聞く 辻秀一氏】アギーレ解任のサッカー日本代表が再生するためには

辻 秀一 (スポーツドクター)

 アジアカップでの連覇を逃し、監督が解任とサッカー日本代表チームは不安定な状態にあるようにみえる。有名スポーツ選手の多くのメンタル面でのサポートにあたってきたスポーツドクター、辻秀一エミネクロス代表に再生策を聞いた。(聞き手はニュースソクラ編集長・土屋直也)

――アギーレ監督が解任されましたが、サッカー日本代表はアジアカップでも連覇できなかった。再生に必要なのは。
 アギーレ監督は優れた指導者だったと思うが、八百長問題が絡んでしまっては続投は無理だった。日本代表には監督以外にこそ課題があると思う。本田圭佑選手が実質的なチームのリーダーになってしまっていることだ。
――本田選手のどこがだめなのですか。
 ダメなのではなく、本田選手のモードでは誰もができるわけではないということなんです。日本サッカー協会には、主要選手の夢が掲げてあるが、本田選手の夢は、「日本代表として優勝すること」とある。これは心理学的にはあまりよくない。こういう百かゼロかというような目標では強いプレッシャーがかかり、心が不安定になる。
 どんな選手でも気づかぬうちに体が硬くなり、自然体が崩れてしまう。実力が発揮できなくなる典型的なパターンだ。できなければ、やばいという緊張が続くことで、心もすさむ。目標は何をしなければならないのかを明確にするために必要だ。しかし、夢は心に安定的に栄養を与えるものでないといけない。
 キャプテンとして本来のリーダーであるはずの長谷部誠選手はいい。彼の協会に掲げてある夢は「日本中の人たちの心を動かす」とある。抽象的で、あいまいな夢で、プレッシャーは少ない。長谷部選手は著書のタイトルも「心を整える」。これに表れているように、技術や鍛錬だけでは勝てない、心も自由になれないと勝てないことを知っているいいアスリートだ。
 ワールドカップの際、長谷部選手がけがでチームを離れているうちに、本田選手が実質的なリーダーになった。ポジティブ思考が強い本田選手が中心になったことが戦績が今一つだった大きな理由のひとつだ。長谷部選手は復帰後も溶け込めず、彼のキャプテンシーは発揮されなかった。
――本田選手がチームを鼓舞しているとファンは見ていたのですが。
 本田がひとりでやんちゃしているだけならまだいいが、他の選手を壊してしまっている。最大の被害者は香川真司選手だ。彼の掲げている夢は「世界一のプレーヤーになること」。結果を求める目標を強く掲げすぎている。とらわれてしまい、自分で自分のこころを蝕んでしまう。
 もっとも自然に戻るためのメンタルケアを必要としている選手だ。メントレの効果がもっとも出そうな選手でもある。今の状態に気づかせてあげたい。すべてを本田モードでプラスに考えて切り替えようとしているはずだが、それでは切り替えられない。大事なのは自然体となるあるがままのメンタルだ。アジアカップのPK戦でゴールを外したのが本田と香川の両選手だったのは偶然ではない。
――ほかの選手は。
 次の被害者は長友佑都選手だ。本田選手の「世界一」論に引きずられ、こころが金縛りになっている。結果として体も硬くなり、けがまでしてしまった。けがは心のありようも大きく影響する。
 比較的影響が軽微なのは内田篤人選手と岡崎慎司選手だ。岡崎選手の夢は「世界一にはなりたい。でも本当の夢はサッカー選手をいつまでも続けられること」。結果を求めていないから自由だ。岡崎選手の働きが相対的にいいのはこのためだ。
 このように例外もあるが、チーム全体は本田選手に引きずられ、巻き込まれて、実力が発揮しづらい、ガチガチの心的な環境ができてしまった。脳科学的に言えば、目標やポジティブ思考に振り回されている認知の暴走状態だ。本田選手は実力もあるし、それで生き抜けるかもしれないが、ほかの人を巻き込み、チームをダメにしては元も子もない。
――プレッシャーが適度な緊張を生むことはないのか。
 集中とリラックスの共存、スポーツの世界でいう「ゾーン状態」ならいいが、日本代表はバランスが崩れている。もどるべきところは、フローなこころの状態だ。
 もともとはシカゴ大学のチクセントミハイ教授が1970年代後半に行動科学の観点から心とパフォーマンスの関係について、「行動の内容に関係なくパフォーマンスが発揮されるときの心の状態は共通していて、それはフローという心の状態」と唱えた。
 私はこれを、日本的な感性を交えて「揺らがず」「とらわれず」のこころの状態だと表現している。本田選手のように「優勝」を強くかかげれば、焦りやあきらめが生じてしまう。
 最近の例で言えば、テニスの錦織圭選手が優勝を期待された全豪の準々決勝などはこの状態に近い。ノンフローな感じだ。フローな自然体で戦えている試合が格段に増えたが、まだノンフローなときが垣間見れる。一人でするテニスなら、コーチがそれに気づけば改善は早い。こころの持ちようはわりに早く変えられるが、チーム競技のサッカーでは、ゆっくりとしか変われない。
 実はアジアカップでは長谷部選手のリーダーシップが戻り始めていたと思う。すでにチームの再構築の過程にあったのだから、短兵急に結果を求めすぎてもいけない。リーダーが本田選手になってしまえばチームのフローは形成されにくいように思う。
 道は半ばだ。香川選手こそがチームのフロー状態を示すバロメーターになるだろう。日本代表に必要なのは「あるがままの、ナチュラルな心の状態に戻る」ということだ。わたしがメントレしているどのチームにも言っている「No Flow, No Win」。
 これはスポーツ選手だけの問題ではなく、人間すべてに共通する。私は日常生活のなかでフローな状態について私は「ごきげんな状態」と呼んでいるが、これができればどんな人でも仕事などのパフォーマンスは上がるだろう。

辻秀一(つじ・しゅういち)
慶應大学病院で内科医を務めていたが、スポーツ医学をこころざし、同大スポーツ医学研究センターを経て独立。メンタルトレーニングによるパフォーマンス向上が専門。多くのスポーツ選手を指導しているほか、産業医として企業のフローカンパニー創りにも当たっている。著書には『スラムダンク勝利学』『禅脳思考』ほか多数。
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