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裁く側の関東学連にも問題 大学スポーツ改革が必須

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【編集長インタビュー】東大アメフト部監督の三沢英生氏に、日大危険タックル問題を聞く

公開日: 2018/07/20 (スポーツ/芸術)

三沢英生氏 三沢英生氏

 日大アメリカンフットボール部の危険タックル問題は、同部が新監督を選んで体制を一新し、再発防止策を提出したことで、節目を迎えている。だが、大学とスポーツのかかわり方にも目を向けさせるきっかけとなった。学生スポーツはどう変わっていくべきなのか、学生時代に東大アメフト部の全盛時代を築き、いまは監督を務める三沢英生氏(ドーム取締役常務執行役員)に聞いた。(聞き手はニュースソクラ編集長、土屋直也)

――日大アメフト部の危険タックル問題をどう見ていますか。

 第三者委員会の中間報告書はよく踏み込んだ内容になっています。事実に基づいて正常化に向かってもらえればうれしいですね。

 いまのままで再発防止策が完全になるまでは、日大とは試合はできないというのは関東学生アメフト連盟1部監督会の総意です。

 一方で、関東学連が、日大への今季終了までの公式試合出場資格停止を科しているのはあまりいい方法とは思っていません。きちんと再発防止ができるのであれば、今季終了を待たなくとも試合の再開はあってもいい。

 きちんとした再発防止策ができないのなら、今季終了後であっても試合の再開は認められない。いい状態を取り戻すことが大事で、制裁を科すことを目的化してはなりません。

 私は日大のアメフトは大好きで、そのよき伝統が断ち切れないようにしてもらいたいのです。それが、他の大学にもプラスになると思っています。

 ――これをきっかけに大学スポーツの改革をめざしているそうですね。

 日大のこの問題が起きる以前から大学スポーツの改革は必要と考え、監督会を作り話し合ってきています。いまの関東学連では、学生アメフトの振興は難しい状況です。

 今回の危険タックルが起こった試合は関東学連の主催ですが、その学連が裁く側に回ってしまい、責任を感じていないようにみえます。主催ゲームなのに、選手のケガに対する責任をとる立場にはないというのが関東学連のありようです。

 大学にしてもそうです。体育会の活動は、「日大アメフト部」と称しているように大学の正式な活動の一部のようにみえますが、実態はサークルと同じで、大学の管理下にあるわけではありません。課外活動という位置づけなのです。今回のような問題が起こった場合に、大学が責任回避に動いてしまうのは、制度上に理由があるのです。

 ――大学がきちんと責任を持つアスレチック・デパートメント(AD=体育局)の設立を訴えていますね。

 文科省もこの問題に気づいていてADの設置を推奨しています。多くの大学でADがつくられることになるでしょう。しかし、組織を作っただけで、安全対策を大学が主導しないのであれば、ただ形を整えただけになってしまいます。

 ――欧米の大学は体制が整っているのですか。

 欧州もスポーツ先進国ですが、地域のクラブ制度が進んでいて、大学スポーツは盛んではありません。大学スポーツという点で成功例は米国です。米国ではNCAA(全米大学体育協会)という組織が大学スポーツの教育や安全面とともに、ファン作りなどビジネス面にも責任を持ち、成功させています。地域振興としても、大学スポーツを地域の中核に据えた成功例がたくさんあります。このように大学スポーツが教育、経済、地域活性化と多面的に成功を収めているのは世界中で米国だけであり、日本が手本にすべき要素が米国にあるのです。

 NCAAは100年超の歴史があるのですが、NCAAができる前はいまの日本のように安全管理や教育との両立など多くの問題が未整備な状況でした。スポーツで何十人と死者がでたことがきっかけとなり、きちんと対策をとる必要がでてきて、当時のセオドア・ルーズベルト大統領の肝いりもあってNCAAが作られたのです。

 NCAAは大学スポーツの振興に貢献し、その収益は安全面や設備の整備など大学に還元されています。わかりやすく言えば、5億円以上の年収を誇る学生チームの監督がざらにいますからね。

 ――日本でもスポーツ庁が日本版NCAAを今年度中に作ろうとしていますね。

 私が取締役常務執行役員を務める株式会社ドームは5年以上前から大学スポーツの振興、そして日本版NCAAの必要性を訴える一方で米国の事情をつぶさに研究してきました。私たちはNCAAと直接コンタクトを取れるので、スポーツ庁から何度となく相談を受けていますが、いまのままなら日本版NCAAは機能しないでしょう。

 全国の大学のうち約200校が日本版NCAAへの参加を表明しているようですが、NCAAが何をするところかもわからずに手を挙げている大学が多いのではないでしょうか。本当に役割を理解していて、やる気もある大学は私の知る限り10校くらいですよ。このままでは大きすぎて機能しない。単に役人の天下り先のひとつにしかならないでしょう。

 そこには事務を引き継がせるためか、アメフトの関東学連のような組織も入れてしまおうと考えているようです。米国ではNCAAはそもそも大学の集まりなので、ますますおかしくなってしまうのではないかと危惧しています。

――ではどう作ればいいのですか。

 官が主導して強引に作るのでなく、やる気のある大学、10校もあれば十分だと思いますが、それが自発的に組織を育てていった方がいい。いままでの学生スポーツを主導してきた学連のような組織とNCAAでは1対1000ぐらいの機能の違いがあります。きちんとしたルールの整備もなかったのを作っていこうというわけですから、大変ですし、日本にあった形で作っていく必要もあります。それには、むやみに大きくせず育てていく必要があるのです。

 ――NCAAができれば今回の危険タックルのようなことは起こらないのですか。

 犯罪行為に対してはきちんと調査し、処分する機能とルールをNCAAに設けるわけで、その時々の社会の反響次第で基準のはっきりしない処分を下すようなことはなくなります。ルールの整備は抑止にもなると思いますね。

土屋 直也 (ニュースソクラ編集長)

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土屋 直也(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設
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