東京オリンピック・パラリンピックを巡り、大会組織委員会の高橋治之元理事や企業の幹部が贈収賄容疑で逮捕された。
これでほぼ捜査は終わった感じであったが、ここにきて談合疑惑が明るみに出てきた。
11月25日、東京地検特捜部と公正取引委員会は、電通、イベント制作会社「セレスポ」、組織委元幹部の自宅を独占禁止法違反の容疑で家宅捜査した。
また、28日には、東京五輪談合疑惑で、東京地検特捜部は博報堂、東急エージェンシーなどにも家宅捜査に入った。広告代理店業界全体の談合だ。業界1位の電通、2位の博報堂、3位のADKホールディングス、全てが関与している。ADKは特捜部に談合を認めている。
五輪では本番の前にテスト大会を行うことになっているが、IOCからその準備を急ぐように求められた組織委員会は、電通などと協力して応札予定企業の受注意向を一覧表にまとめたという。
その計画立案業務の競争入札は、2018年5~8月に26件実施している。落札総額は5億円余りであるが、入札に参加したのは、半数以上の件で1社のみであった。上記の会社を含む9社1団体が参加したが、一覧表通りの受注だったという。組織委員会と広告代理店業界が、落札企業を予め決めていたようである。
テスト大会は一般競争入札であったが、それは本大会での実施運営を請け負うことを前提に組み立てられていたと考えてよい。つまり、「テスト大会→本大会」という流れが、「競争入札→随意契約」という流れと並行していたようである。
公開の競争入札では、談合はもちろん独占禁止法違反である。しかし、それを敢えて行って、その調整を踏襲して、200億円を超えるという本大会での運営業務を随意契約という形で分配するという「美味しい話」になっていたのである。
実際に、随意契約が行われた約40の会場の運営について、組織委員会は運営委託費用を約149億円と見積もっていた。ところが、最終的には約196億円となり、予定よりも3割も増加しているのである。受注企業の儲けが増える仕組みである。
私は、都知事のときに、競技場建設費用などを極力抑える努力をし、埼玉県や千葉県の施設に会場を移すなどの工夫をして、約2000億円の削減に成功した。しかし、私が辞任した後に、このような無駄遣いが行われたとすれば、残念である。
組織委員会でテスト大会の運営を担当していた大会運営局の次長も、独占禁止法違反の共犯の容疑で、家宅捜査を受けている。組織委には多数の職員が電通やセレスポなどから出向している。受注企業を業界側が手配していたので、いわば、発注側と受注側が一体となっており、談合、独禁法違反となるのである。
IOCに急かされて、電通に頼るしかなかったという事情も理解できる。組織委の大会運営の責任者は、「競技の人気に偏りがあるため、全ての競技で担当企業を確保できるかどうか懸念を抱いた」という。その結果、発注・受注一体の談合が行われたのである。
そして、随意契約という形で本体を発注すれば、競争が働かないので、経費が跳ね上がるのは当然である。組織委員会の責任は厳しく追及されなければならない。
また、同時に、スポーツ界の電通依存、いわば「丸投げ」体質も見直さなければならない。五輪なら何でも許されるという甘えが、今回の不祥事の背景にある。
捜査対象となっている企業や個人に有罪の判決が下されれば、組織委員会そのものが断罪されることになる。そして、この裁判は長く続く。そのような中で、札幌五輪を開くことはできないであろう。
それでも札幌開催ということになれば、五輪開催地として立候補する都市がいかに少ないかを世界中にアピールすることになってしまう。
高橋元理事ルートで本丸に迫れなかった検察は、威信挽回のためにも捜査に全力を挙げている。
五輪談合疑惑 電通などへの丸投げ体質に問題 |
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【舛添要一が語る世界と日本(170)】地検特捜部、組織委と電通、博報堂をターゲットに
CC BY /Dick Thomas Johnson
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舛添 要一(国際政治学者)
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