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あまり言及されない森氏の功績

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【舛添要一が語る世界と日本(76)】五輪組織委、森喜朗会長の「女性蔑視」発言の表と裏

公開日: 2021/02/09 (政治, スポーツ/芸術)

CC BY CC BY /Dick Thomas Johnson

 五輪組織委の森会長が、3日、JOCの評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言して、国内のみならず、海外でもに大きな波紋を呼んだ。

 そのため、翌4日、森会長は記者会見を開き、発言を撤回し謝罪した。またIOCは、「男女平等はIOCの基本原則だ」としながら、「森会長は謝罪した。この問題は決着したと考えている」という声明を出している。

 私は、現場にいたわけではないので、森会長がどういう文脈で発言し、その場の雰囲気がどうだったのかもわからないが、森氏のいつものその場を和ませる「気配り」発言だったのかなと思ったのである。

 2000年5月15日、当時首相だった森氏は、神道政治連盟国会議員懇談会において挨拶し、「日本の国、まさに天皇を中心としている神の国」と述べたことが、憲法に定められた国民主権や政教分離に反するのではないかとの厳しい批判を受け、内閣支持率が下がっている。

 この発言も、懇談会に集まった聴衆が喜ぶことを言ったのであり、まさに「気配り」、「思いやり」の発露である。憲法に定められた信教の自由などの諸原則を無視する気など全くなかったと思う。しかし、マスコミの餌食になってしまった。

 今回も、「女性は能力が無いので……」といったような発言なら大問題であるが、お喋りという指摘が「女性蔑視」とまで言えるかどうか疑問である。もちろん不用意な発言で、データに基づく調査結果を踏まえたものではなく、その点は批判されてしかるべきだが、ここまで大騒動になるのは、テレビのワイドショーが視聴率を上げ、新聞雑誌が発行部数を増やすのに恰好なネタだからである。

 そして、その背景には、国民の間に東京五輪開催に関する懐疑論が急速に強まっていることがある。もし、コロナが収束して今年の夏に開催されることが確実になっていたら、おそらくこれほどの騒ぎにはならなかったのではあるまいか。

 2月5~7日に行われた読売新聞の世論調査では、森会長発言について、「大いに問題がある」が63%、「多少は問題がある」が28%と合計で91% に上っている。東京五輪については、「観客を入れて開催する」が8%、「観客を入れずに開催する」が28%、再延期が33%、中止が28%となっている。

 また、共同通信の世論調査(6、7日)でも、森氏は組織委会長として、「適任と思う」が6.8%、「適任とは思わない」が59.9%、「どちらとも言えない」が32.8%である。そして、東京五輪に開催14.5%、再延期47.1%、中止35.2%となっている。

 五輪を完全な形で予定通り行うという意見は1割前後であって、中止や再延期が8割を超えるのが現状なのである。

 都知事として東京五輪を準備し、IOCとの難交渉も経験した立場から言えば、五輪を動かすには多数の利害関係者を調整する強力な政治力が必要である。それは、五輪には巨額のカネが動くからである。アスリート・ファーストなどという綺麗事ではないのである。

 日本は様々な準備に3兆円をかけ、順調に開催できた場合の経済効果を33兆円と目論んでいる。利権の調整と配分を行い、政界、官界、財界、スポーツ界、電通などのイベント業者を束ねることができるのは、元首相で、スポーツ界に君臨してきた森氏しかいない。だから、本人が辞めたくても、利害関係者の引き留めにあって辞められないのである。

 森会長の女性蔑視発言は批判に値するだろうが、森氏の功績もまた指摘しておかねばならない。

 私が都知事時代に、競技施設を新設するのではなく、周辺の県に存在する施設を活用することなどして、建設費を約2000億円節約できた。その際に大活躍したのが森氏である。東京の施設代替を引き受けてくれる他県の知事の許に自ら足を運び、頭を下げて依頼してくれたのである。

 また、肺癌の治療中の身体で、海外出張してIOCとの関係を盤石なものにしたことも付言しておく。

 バッハ会長、東京五輪担当の副会長であるコーツ調整委員長などIOC幹部との個人的関係が極めて重要であり、マラソンと競歩の会場が札幌に移されることが事前に小池都知事に知らされなかったのは、彼女がパフォーマンスばかりでIOCと個人的信頼関係を築くことを怠ってきたからである。もちろん森会長は事前に相談されている。

 森会長の功績について評価すべき点は正しく評価すべきである。それよりも、もし森辞任となれば誰が後任に座るのか。総理経験者となれば、安倍前首相がいるが、加計・森友問題、「桜を見る会」経理問題を引きずっている中では、世論の反発が大きかろう。

 森去就問題よりも、もっと大事なのは、1984年のロサンゼルス五輪以来商業化して巨額のカネが動くようになったオリンピックそのもののあり方を見直すことである。

 つまり、政財官、スポーツ界に縦横に人脈を築いている森元首相のような人物でなくても、組織委会長が務まるようなシンプルでカネのかからない五輪を目指すべきなのである。それこそが五輪憲章のうたう理想ではないのだろうか。

舛添 要一 (国際政治学者)

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