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綱渡り覚悟で進む東京五輪 

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【舛添要一が語る世界と日本(92)】無責任体制、精神論… 東京五輪は「太平洋戦争」?

公開日: 2021/06/01 (スポーツ/芸術)

CC BY CC BY /Dick Thomas Johnson

 東京五輪は、7月23日に開会式である。もう2ヶ月を切っている。

 東京都などに出されている緊急事態宣言も6月20日まで延長されたし、開催の中止や再延期を求める声は内外で高まっており、五輪歓迎ムードとはほど遠い状況になっている。

 日経新聞の世論調査(28~30日)によると、「中止もやむを得ない」が40%、「再延期もやむを得ない」が22%、「今夏実施」が34%(「通常通り」が1%、観客数制限が17%、無観客が16%)である。

 因みに、政府のコロナ対策については、「評価する」が31%、「評価しない」が64%、ワクチン接種に関しては、「順調だと思う」が22%、「順調だとは思わない」が72%である。そして、内閣支持率は40(−7)%と、菅政権発足以来最低であり、不支持率は50(+6)%に上っている。

 オフィシャルパートナーでもある朝日新聞は社説で中止を主張したが、海外でも、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ルモンドなど、クオリティ・ペーパーが開催に批判的な論調である。

 しかし、IOCは「緊急事態宣言下でも絶対に開催」(ジョン・コーツ副会長・調整委員長)の方針を堅持しており、日本側も、政府、組織委員会、東京都、いずれも同じ態度である。そして、その頑な姿勢が国民の反感を呼ぶといった悪循環が生じている。

 「IOCにしか最終決定権限はない」というのは正しいが、日本側の最終責任者が誰であるか分からないという壮大な無責任体制である。

 第二次大戦後の極東裁判で、日本側の「戦争犯罪人」は、誰も自らの責任を認めず、上司や制度のせいにすることに終始した。これに対して、ドイツのニュルンベルク裁判では、ナチスの幹部たちは、堂々と自らの責任を認めている。

 東京五輪が中止になったり、開催を強行して万が一新型コロナウイルスの感染拡大を招いたりしたときには、日本側は、関連組織間で責任のなすりつけ合戦を演じるであろう。つまり、責任の所在が明らかではないのである。

 開催都市は東京都である。そして、運営の実務をこなすのが組織委員会である。

 経費の面で組織委の能力を超える場合には東京都が、さらにそれを超える分は日本国政府が負担することになっている。どうなろうが、IOCは賠償金さえ確保できればよいのである。

 金銭的な面を見てみると、収入は、放映権料10回分(2014~32年)が1兆3000億円、つまり1回分は1300億円である。中止の場合にIOCがかけている保険が800億円、チケット収入が900億円である。

 一方、大会経費は1兆6440億円であるが、都知事として実際に大会を準備した経験からすれば約3兆円である。

 日本銀行は、コロナ流行前に、東京五輪の経済効果として33兆円という数字を掲げた。しかし、コロナ感染下では、海外からの観光客の訪日は望めないし、インバウンド収入など望むべくもない。選手をはじめ大会関係者も観光などでの外出を禁じられる。

 ビッグサイトなどのイベント会場は、1年延期で使用できない期間が延びており、各種の展示会などが開催できないことによる損失が積み上がっている。経済効果が大きく減殺されているのみならず、延期による損失も既に巨額に上っている。

 野村総研が五輪中止の経済損失を1.8兆円と試算したが、日本のGDPは528.5兆円(2020年)、つまり日本人は1日に1.45兆円の富を生み出す。2日も働けば2.9兆円であり、五輪開催でコロナ感染が長引いたほうが損失は遙かに大きくなる。

 太平洋戦争について、日本は、データに基づいて確実に勝てると判断して真珠湾攻撃を敢行したのであろうか。そうではなかろう。神風が吹くなどという精神論が誇張されたのではないか。

 今回も、新型コロナウイルスの感染拡大が収束するのか、ワクチン接種が十分な効果を上げるのか、まだ不明である。しかし、綱渡りを覚悟で、いわば精神論で前に進んでいる。悲惨な敗戦に終わった先の大戦の開戦に極めて似ている。

舛添 要一 (国際政治学者)

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