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五輪「見せたい中国が凝縮」(毎日)など政治利用批判

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【論調比較・北京五輪】「後味の悪さ残る」(読売)「人権や自由の価値を共有できない未来は暗い」(朝日)

公開日: 2022/02/22 (ワールド, スポーツ/芸術)

【論調比較・北京五輪】「後味の悪さ残る」(読売)「人権や自由の価値を共有できない未来は暗い」(朝日)

 第24回冬季オリンピック北京大会が2月20日、閉幕した。新疆ウイグル自治区など中国の人権問題を理由にした欧米などの「外交的ボイコット」に始まり、ドーピング問題など大会運営への疑念も噴出し、五輪の意味を問い直す必要が、世界に印象付けられた。果たしてまっとうに見直しに向かうのか、大手紙の21日朝刊紙面を見ながら考えてみよう。

 中国の人権問題については、この論調比較でも2021年12月16日で取り上げたように、米英豪を中心に閣僚や政府高官を北京大会に派遣しない外交的ボイコットが広がり、日本でも、自民党保守派(右派)が外交的ボイコットを訴え、産経新聞が大々的に旗を振っていることを書いた。

 日本政府はボイコットとは明言しない一方、米国などに配慮して閣僚などは送らない玉虫色の対応をしたが、実際に各国の参加状況はどうだったのか。

 また、インドは2020年の中印国境地帯での衝突で負傷した中国軍兵士が聖火ランナーになったことに反発し、開会式前日の2月3日になって外交的ボイコットに踏み切った。

 開会式に首脳級24人が出席(中国は事前に25人と発表)、うち習近平主席が18人と会談したというのが、「五輪外交」の決算だ。独裁的、あるいは権威主義的な国が多い。一番の大物はプーチン露大統領で、中露の「蜜月」をアピールした。ロシアは国家ぐるみのドーピングで国として五輪に参加できないにもかかわらず、開催国からの招待という特例で開会式に出席したもので、主催国による五輪の政治利用を象徴するものでもあった。

 ただ、折しもウクライナ情勢が緊迫する中、中国の立ち位置は難しく、日経新聞は朝刊4面政治面のまとめ記事「中国五輪外交 崩れた目算」で、中露首脳会談では「ロシアの軍事侵攻を支持している印象を与えかねない」として握手をあえてしなかったとの見方を示した。

 韓国大統領招待、次期冬季五輪開催国・イタリア首脳の訪中も実現しないなどのことも含め、「対外関係の立て直しで課題を残した」と解説した。

 人権問題で中国は、聖火の最終ランナーの一人にウイグル族の女性選手を起用し、「融和」をアピールする一方、世界からの参加選手の動きを警戒した。大会前に「中国の法律に触れる行為は処罰される可能性がある」と警告。21年夏の東京大会では人種差別などで選手の様々な発信があったのとは対照的に、北京では目立ったものはなかった。

 毎日新聞は3面特集記事で、同性愛者で大会前に人権問題でも発言してきた英フリースタイルスキー選手の「今、ここで口を開くのは現実的なリスクを感じる」とのコメントを紹介。東京新聞21日朝刊2面は、ウイグル族と民族的に近いトルコの選手が、ウイグル独立派の旗と似たデザインのスキー板を使ったものの、翌日にデザインを変更し、「憶測を呼んだ」と書いた。

 朝日新聞2面は「選手からほとんど人権批判が出なかったことは、中国の不自由な言論環境を際立たせたともいえる」と皮肉交じりに書いた。

 こうした中国に、異を唱えず、むしろ中国の肩を持つ国際オリンピック委員会(IOC)の中国擁護の姿勢も際立った。ウイグル問題と並んで世界の注目を集めていた中国女子テニス選手が元副首相から性的関係を強要されたと告白した問題は、当局が火消しに走り、当人も中国国内で否定しているが、「自由な発言か」と世界が疑念を抱いている。

 その選手がバッハIOC会長と一緒に大会を観戦、その映像は世界に流れた。毎日3面は「IOCの姿勢もあり、人権をめぐる批判は大きなうねりにならなかった」と書いた。

 中国に厳しい論調で知られる産経は3面特集記事で「IOCにとって、権威主義国家で五輪を開催するメリットは大きかった。コロナ禍でも国民から開催反対論が噴出することはなく、公金負担の是非を問う住民投票もない」など、独特の世界観で分析している。

 ただし、21年の東京五輪で産経は開催推進の立場で、産経が支持してやまない安倍晋三元首相が「反日的ではないかと批判されている人たちが、今回の(東京五輪)開催に強く反対している」と発言したことを思い起こすと、産経の主張もダブルスタンダードの印象もある。

 もう一つ、政治を離れてIOCの体質にもかかわる大きな問題として、ドーピングやいくつかの判定を含む大会運営があった。

 フィギュアスケート女子でロシアオリンピック委員会(ROC)のワリエワ選手が21年12月の大会のドーピング検査の陽性だったという情報が、五輪期間中に明らかになり、すでに終わっていたフィギュア団体の扱いと、その後に控えた女子シングルスへの出場の可否が注目され、スポーツ仲裁裁判所(CAS)が出場を認める裁定を出した。

 スキージャンプの混合団体で、高梨沙羅選手ら全女子選手20人の4分の1に当たる5人もがスーツ規定違反として失格になる異例の事態が発生。検査体制が一律でないなどの抗議の声が出た。男子ハーフパイプの平野歩夢選手は2回目の演技で大技を決めながら点数が伸びず、三回目で逆転したが、後味の悪さを残した。

 スノーボードやフリースタイルスキーでは技の高度化に伴うリスクが問題になった。今大会が硬い人工雪だったこともあり、けが人が続出した。フィギュアスケートを含め、体重の軽い十代半ばの選手が有利といわれ、若年選手をどう守るかも課題とされる。

 テレビの放映権料に依存する五輪が、人気低下で収入減の危機にあることから、スノーボードのようなアクロバティックな競技が重宝されるといわれ、商業主義、拝金主義が指摘されるIOCが今後、どの方向に向かうのかが問われる。

 大手紙は社説(産経は「主張」)で開会式前後から数次にわたり五輪を論じたがいずれも、国内問題の論調の違いとは異なり、中国とIOCへの批判で共通する。

 閉会式当日、翌日の20、21日に4紙が取り上げた。

 毎日(20日)はドーピングや採点などを中心に競技に絞る形で論じ、〈結果がどうであれ、全力を尽くして戦う。その尊さこそが五輪の価値ではないか〉と、選手たちの健闘をたたえるとともに、〈競技レベルが高まり、より難しい技が求められる中で、選手の安全面への配慮も欠かせない。IOCは大会を総括し、その教訓を今後の冬季五輪に生かさなければならない〉と求めた。

 毎日は中国の運営については大会期間中の10日に取り上げ、〈2008年の北京夏季大会をきっかけに外国人記者への取材規制が大幅に緩和され、国内外から「社会の開放は中国の自信の表れ」と評価された〉と、前の大会と対比し、今大会の開会式を〈華やかな会場には「見せたい中国」の姿が凝縮されているようだ〉と皮肉り、〈都合の悪い情報は見せないようにする姿勢では、習指導部が掲げる「信頼される中国」の実現はおぼつかない〉と切り捨てた。

 読売(20日)は「北京五輪閉幕 選手活躍でも残る後味の悪さ」と題し、競技について毎日と同様の視点を示すとともに、大会運営について、〈中国の露骨な政治利用や統制も際立った。大会スローガンは「共に未来へ」だったが、ロシアなど強権的な国との五輪外交が目立ち、米欧との対立や人権問題を巡る分断を印象づけた〉と批判した。

 産経(21日)は〈IOCは中国政府を諫止(かんし)するどころか習近平国家主席への礼賛を繰り返した。ロシア・プーチン大統領ら権威を振りかざす国々の首脳が並んだ開会式は、さながら強権国家の政治宣伝の場だった。……IOCは北京を選んだ愚を猛省し、二度と同じ過ちを繰り返してはならない〉と、政治問題としてIOCを激しく批判。

 返す刀で、ワリエワ選手のドーピング問題でも出場を認めたことも批判し、〈最大の被害者は、「公平・公正」を信じて戦いながらIOCに裏切られた世界各地の潔白な選手たちだ〉と指摘。さらに米オリンピック委員会が批判声明を出したことを引き合いに〈日本オリンピック委員会(JOC)は沈黙したままだ。五輪の価値を汚され、選手の権利を傷つけられて、何の意思表示もしないのか。感度の鈍さに驚く〉と、JOCにも矛先を向けて批判した。

 日経(20日)は、「五輪に人権と調和の理念を取り戻そう」と題し、開会式聖火ランナーのウイグル族選手の起用、選手が義務付けられたスマホアプリの情報抜き取り懸念の問題、IOC会長と女子テニス選手の観戦問題、そしてワリエワ選手問題を列挙し、人権、平和、調和といった〈(五輪憲章の)理念とかけ離れた大会のあり方は、五輪の存続そのものを危うくしかねない〉として、抜本的な改革に乗り出すよう求めた。

 朝日と東京は21日までに、閉会に当たっての社説は載せていないが、大会前~期間中には取り上げている。

 朝日は8日、プーチン氏ら訪中した首脳らの「厚遇ぶり」に苦言を呈し、〈中国は、国連決議に沿って、五輪・パラリンピック期間中の世界の紛争休戦を呼びかけていた。ならばプーチン氏に対し、(ウクライナでの)無謀な軍事行動に走らぬよう求めるのが筋だ。対米牽制という共通の政治目的を優先したのだとすれば、危うい〉などと指摘。〈中国はこの大会に、「ともに未来へ」とのスローガンを掲げる。だが、人権や自由の価値を共有できない未来は暗い。国際社会の重い問いかけに、中国政府は正面から答えるべきだ〉と求めた。

 東京(11日)も、〈北京五輪を前に、中国は欧米諸国の「外交ボイコット」に対し「五輪を政治利用する誤った行動」と強く反発してきた。だが、開幕前後のふるまいに目を凝らせば、中国こそ五輪の政治利用が過ぎると言わざるをえない〉と、やはり、中露首脳の会談、ウイグル族の聖火ランナーなどを批判的に書き、〈習氏が見据えるのは秋の共産党大会での党総書記三期目続投だろう。五輪の政治利用は国内でもまた、である〉と、国内政治への利用にも筆先を向けている。

岸井 雄作 (ジャーナリスト)

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岸井 雄作(ジャーナリスト)
1955年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。毎日新聞で主に経済畑を歩み、旧大蔵省・財務省、旧通商産業省・経済産業省、日銀、証券業界、流通業界、貿易業界、中小企業などを取材。水戸支局長、編集局編集委員などを経てフリー。東京農業大学応用生物科学部非常勤講師。元立教大学経済学部非常勤講師。著書に『ウエディングベルを鳴らしたい』(時事通信社)、『世紀末の日本 9つの大課題』(中経出版=共著)。
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