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ロシア・メディアが“砕け散った”後の“破片”の状況

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【ウクライナ侵略とロシア(10)】『ノーヴァヤ・ガゼータ』に加えられ続ける圧力と国外での活動

公開日: 2022/09/06 (ワールド, IT/メディア)

「ノーヴァヤ・ガゼータ」編集長のドミトリー・ムラトフ氏(2021 年10月8日) =Reuters 「ノーヴァヤ・ガゼータ」編集長のドミトリー・ムラトフ氏(2021 年10月8日) =Reuters

リュドミラ・ペトロワ (文芸評論家)

ロシアが2月24日に「特別軍事作戦」を開始した後、これを「中傷する」報道は違法とされ、事実上の軍事検閲が行われ、政府公式発表に一致しない情報発信は禁じられてしまった。

 『ノーヴァヤ・ガゼータ』は、3月下旬に新聞の発行を停止したが、メディアとしてのライセンスは保持していた。しかし、それも9月5日、モスクワの裁判所の決定で取り消された。

 報道の自由を享受したロシア人ジャーナリスト達は“破片”として、一部はロシア国内にとどまり、一部はバルト3国、東欧、西欧、ジョージア、ウクライナなどにちらばり、組織を作り直したり、あるいは個人レベルで情報発信を試みている。

 彼らの動向を、数回に分けて紹介したい。


【ロシア・メディアが置かれた状況】

 戦争開始から7月末までに、ロシアの検閲当局ロスコムナゾル(連邦通信・情報技術・マスコミ監督庁)は、ロシアで活動していた少なくとも95のネットの情報源を遮断した。

 「国境なき記者団(RSF)」の2022年度の言論の自由ランキング
 で、ロシアは180カ国中155位にランクされた(最下位は北朝鮮)。

 ロシアの調査報道ネット『プレエクト』によれば、少なくとも504人のジャーナリストがロシアを離れ、その多くが2月24日以降に離れた者である。

 ロシアの独立系メディアの名前は、亡くなった人達の「追悼リスト」の様相を呈している。

 著名な弁護士イリヤ・ノヴィコフは、国外での彼らの活動を「オフショア・ジャーナリズム」と呼んだ。

 彼自身も、2021年にキエフに移り、2022年にはロシア軍から自分の新しい故郷(ウクライナ)を守るための防衛戦に参加した。

 ロシアのジャーナリズムは、「オフショア・ジャーナリズム」であると同時に「オンライン・ジャーナリズム」でもある。


▼新聞『ノーヴャヤ・ガゼータ』
 この新聞は故ゴルバチョフにより1993年に創設され、プーチン政権に批判的であり、そのために6人のジャーナリストを殺された。
 編集長は、2021年のノーベル平和賞受賞者のドミトリー・ムラトフである。
 彼はノーベル賞メダルを1億350万ドルで売り、国連児童基金(ユニセフ)に寄付し、ウクライナ難民の子供たちとその家族を支援した
 3月下旬、新聞は発行を停止した。

 『ノーヴァヤ・ガゼータ』からウクライナに派遣されていた記者のエレナ・コスチュチェンコは、逮捕を恐れ国外にいるが、「本を書き上げたらロシアに帰国するつもり」と述べている。(『エコノミスト』5月3日)

 ロシアでもサイト『novayagazeta.ru』  の存続は認められているが、もちろんウクライナに関する報道などは認められない。

 過去のアーカイブの記事や、ゴルバチョフ追悼など、一見政権に無害な記事は掲載されているが、その中には、プーチン批判のメッセージを読み取れるものもある。

 7月、『ノーヴァヤ・ガゼータ』は、紙媒体による96ページの雑誌『NO』の発行をロシア国内で開始した。

 これは経済、社会、文化を扱っており、購入したいとの注文も沢山入っていると、『ノーヴァヤ・ガゼータ』編集部はサイトで説明している。

 この雑誌に連動して、youtubeチャンネル「NO.Media from Russia」 も立ち上げた。

 またウェブサイト「NovayaMedia」を立ち上げて、国内政治などを報じている。

 たとえば8月23日には、まだロシアにとどまっているリベラルな政治家のレオニード・ゴズマンのインタビューを、また8月25日には野党政治家で元エカテリンブルグ市長のエフゲニー・ロイズマンの拘束を伝えた。
 
  『ノーヴァヤ・ガゼータ』が読者や支持者にアンケートをとったところ。90%が、「検閲を受けいれてもよいので、それでも報道を続けてほしい」と答えたということだ。

 現下の厳しい状況下で、何とかその期待に応えようとしている。

 新聞『ノーヴァヤ・ガゼータ』の発行は停止されたが、メディアとしてのライセンスはまだ保持していた。しかし9月5日のモスクワの裁判所決定により、このライセンスも抹消された。

 プーチン政権は、上記の様々な『ノーヴァヤ・ガゼータ』の活動を全て禁止したいのだろう。

 ムラトフ編集長は、上訴するとしているが、ロシア国内の活動への圧力は益々強まっている。
 それでも『ノーヴァヤ・ガゼータ』も、あの手この手で対応していくのだろう。


▼『ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』

 4月7日、ムラトフ編集長が列車内で赤い液体をかけられるという事件が発生した。

 この同じ日、国外に『ノーヴァヤ・ガゼータ』の一部の人員を移し、国外から発信することが決定された。

 このようにして、ラトビア共和国リガで『ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』 が発信を始めた。

 この『ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』の編集長は、キリル・マルティノフ(41歳)である。

 彼は4月に約30人のスタッフと共にロシアを離れ、リガに落ち着いた。

 マルティノフは、モスクワの有名な大学である経済高等学院で教鞭をとっていたが、2022年3月14日に『ノーヴァヤ・ガゼータ』編集部に加わり、最初に書いた記事は「石油と専制主義」というものであった。

 現在、『ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』は、ロシア・ウクライナ戦争の状況、ロシア社会の軍国主義化、ウクライナ、ベロルーシ、バルト諸国の状況などを伝えている。

 ロシア語版と英語版があるが、異なる記事を掲載している。

 彼は、8月29日に『モスクワのこだま』の番組「個人的にあなたの」に出演し、約1時間、意見を述べた。

 マルティノフの意見は、モスクワの指導者は、ウクライナを主権国家としてみなしておらず、政権維持の目的もあり、この「特別軍事作戦」を続けるだろうというものである。

 マルティノフは、毎週「怖いニュース」

 と題して、ウクライナ戦争の状況も含めて、過去1週間の出来事を振り返ってコメントもしている(Youtubeで見ることができる。音声はロシア語)。

 ラトビア発の『ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』は、反プーチンととられる内容のため、ロシアでは、このサイトを見ることができない。

 『ル・モンド』紙の告知によれば、来る9月17日の同紙主催のイベントで、マルティノフは、「ウクライナ:戦争を語る」と題する講演を行うそうだ。

 欧州のメディアは、独立系ロシア・メディアと連携している。

 以上のように『ノーヴァヤ・ガゼータ』はいくかのメディアにばらけて、「別々のプロジェクトとして運営されている」と説明される。

 そのことにより、ロシアにとどまっている同志が、外国での報道についての責任を問われないようにしている。

 それでもかつての同僚達の連帯は、国を超えて維持されているようだ。

(次回は、独立系テレビ局『ドジュチ(雨)』、ラジオ局『モスクワのこだま』を取り上げる。)

**********************************

【ニュースソクラ編集部による注】

 ロシアの独立系メディアは、ロシア国内での活動が制限される中で、それでも内外で様々な発信を試みています。日本のマス・メディアでは、彼らの活動が紹介されることは殆どなく、あっても断片的なものです。

 この記事は、ロシアの独立系メディアの今日の状況を説明しています。

 テレビや対談番組のロシア語音声についても、ソクラで紹介していく予定です。
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