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中国、脱コロナ不況は北京・中関村から?

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【中国IT事情】清華大の起業支援(下)全国一の文教区にベンチャーが集積

公開日: 2020/05/17 (IT/メディア)

北京・中関村広場=PD 北京・中関村広場=PD

小池 政就 (日中イノベーションセンター主席研究員)

 北京市では新型肺炎に伴う規制は外国人向け以外は解除されつつあり、5月前半には例年のように有名校に子供の願書を提出する親たちが殺到する様子も見られた。

 市内の西北に位置する海淀区は中国三大大学である清華大学、北京大学、人民大学が集結する文教地区である。これら大学の付属小中学校や有名校も多く存在し、中国では学区制のために教育熱心な親たちがこぞって住みたがることもあり、国内で最も不動産の高い地域の一つでもある。

 それも綺麗な高級マンションだけでなく、古くてエレベーターも付いていないようなビルのマンションでも一億円はくだらない。

 大学を卒業した若者たちは学内の寮からも出て自分で部屋を借りることになるが、家賃が高い為に数人でシェアして住んでいる。バストイレは共有で個室は各自分かれているが、その狭い個室にもカップルが一緒に住んでいることも珍しくない。

 この文教地区である海淀区が近年は中国のイノベーションの中心地となっている。これまで紹介してきた清華大学内外のインキュベーション施設やサイエンスパークのような各大学に付随するものの他、中国科学院や多数の研究所も含めてより広範かつ域内の人材や資金の融合が進んでいるのが、海淀区内の中関村というベンチャー企業の集積地である。

 かつては秋葉原のような電気街であったが、政府の創業政策にも後押しされてここ10年ほどで急速に国内外に名が知られるハイテク基地になった。

 起業後10年以内で未上場かつ評価額10億ドル以上のいわゆるユニコーン企業が最も多いのは中国(2019年現在で206企業)であり、都市別にも首位の北京(82企業)が第二位のサンフランシスコ(55企業)を大きく上回っている。

 ユニコーン企業の時価総額でも全世界上位三傑は中国が独占しており、第二位のバイトダンス(約5000億元)、第三位の滴滴出行(約3600億元)は中関村出身である。

 他にも快手、京東(ジンドン)数科、京東(ジンドン)物流などの中関村の企業が上位につけている。これら企業と共に中関村自体も新興の創業エコシステムとして発展している。

 中関村の強みは、以前紹介した清華大学のxlabやサイエンスパークなどの創業エコシステムを包み込むように、さらに幅広い人材と資金が還流する仕組みを生み出していることであろう。

 大学や中国科学院という最先端の科学技術研究の基盤に加え、より市場や生活に近い視点からアイデアを形にしていく環境が備わっている。2010年辺りからはまだ起業にすら到っていない個人やグループが一日中滞在できる喫茶店が人気を拍し、現在のシェアオフィスに近い環境が既に作られていた。

 著名な「ガレージ珈琲」からはシェアサイクルのofoや女性の健康管理のDayima、写真加工の魔漫相机など中国では誰もが知るサービスを創業した大企業が多く生まれている。

 今でも域内に多数点在するカフェでは度々小中規模のフォーラムが開催されている。筆者がある平日の夜に参加した会では北京大学の先生がブロックチェーンの可能性を語り、学生や社会人約50人が集まり熱心な議論が交わされていた。

 中関村の域内で人材が還流するだけでなく、近年は海外で研究なりビジネスをしてきた「海亀」と呼ばれる人材が国内に回帰しつつある。特に現在の米国トランプ政権下で在米中国人技術者や研究員および学生達はビザ取得や更新が厳格化され、国内回帰が加速化しつつある。

 米国大学の博士号取得者の最上位は実は国内からでなく中国の清華大学や北京大学出身者が占めており、米国の頭脳を支えていたとも言える彼らが大量に中国に戻れば、中長期的にも両国のバランスにも影響が考えられる。

 米国のミシガン大学を卒業した汪波氏もしばらく現地で働いていたが、外部環境の変化により現在は中関村でフィンテック企業を経営している。

 また中国は女性起業家の割合も比較的高い。世界の創業エコシステム15傑の中で、女性起業家の割合で北京はシリコンバレーと同等の16%で第三位、同率一位は22~24%の上海とニューヨークであった。

 近年注目されるのは中関村を代表する滴滴出行の柳青氏であるが、熊本発の豚骨ラーメンを中国最大のファーストフードの一つにした味千拉麺の潘慰氏や携帯電話のガラス生産で世界一の女性起業家と呼ばれる藍思科技の周群飛氏など、成功した女性創業者は少なくない。

 2020年3月の胡潤研究院の調査によれば、一代で財を築いた世界の女性起業家10傑のうち9人は中国人であった。彼女達の活躍は優秀な女性を創業へ引き込む機会ともなろう。

 創業を支える制度と環境、さらには外部環境があいまって中関村を中心とする中国の創業エコシステムはより発展していくと考えられるが、一方で新型肺炎による市場への影響も無視できない。

 米国スタートアップゲノム社はベンチャーキャピタルによる新規組成ファンド数を調査している。報告によると2019年12月に比べて中国では2020年1月は61%減少、同年2月は74%減少となっている。

 不景気で特に減らされるのがベンチャー投資であるという傾向が如実に表れている。しかし、この逆風下でもむしろチャンスと捉え、5Gでの高速通信網もいち早く導入しながら新たなサービスを開発しているスタートアップもいる。近い将来、中関村からはそのような新たなユニコーン企業が誕生するであろう。
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小池 政就(日中イノベーションセンター主席研究員)
工学博士、日中イノベーションセンター主席研究員。丸紅勤務、東大助教、日大准教授、衆議院議員を経て北京へ。
専門は国際関係、エネルギー、科学技術と幅広く、米国、英国でも留学および勤務歴あり。
現在はブロックチェーン企業の顧問も務める。
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