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高齢者の「移動権」のため、自動運転車は必須

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【自動運転の未来(下)】国は前面に出ず、民間の支援を

公開日: 2019/05/06 (IT/メディア, ソサエティ)

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中島 敏 (ライター)

 「移動権」という言葉を聞いたことがあるだろうか。交通分野の専門家以外では、おそらくあまり馴染みのない言葉だろう。しかしこの移動権は、自動運転車の未来を考えるうえで欠かせない概念だ。

 移動権には様々な定義があるが、簡単に言えば「人々には移動の自由があり、そのための移動手段が確保されていることは、人々にとって一種の権利である」という考え方だ。

 憲法の生存権の一部として考えるべきだという説や、国が国民に最低限の衣食住を保証する義務と同等に、国は国民に最低限の移動手段を保証するべきだといった考え方がある。身近な例では、車椅子を必要とする人のために駅にエレベーターを設置したり、ビルの入口に車椅子用の通路を設置したりするのも、移動権を保証するための措置の一種だと言える。

 日本では、移動権は法律上明文化されていないが、フランスでは1982年制定の国内交通基本法の中で明文化されている。

 さて、日本で自動運転車がなぜ必要なのかも移動権の観点から考えると分かりやすい。

 自動運転車の開発が、アメリカのように広大で自家用車であっても何時間も運転することが当たり前の国で盛んに行われているのは当然だが、日本では、自動運転車の必要性は、人口減少、高齢化、過疎化と密接に関係している。

 日本では、特別な移動手段を確保することは、これまでは主に身体に障碍のある人たちを対象としてきた。しかし近年の人口減少、高齢化、過疎化の進展、また単身あるいは夫婦二人の高齢者世帯の増加によって、近い将来には、大都市部も含めた日本全国で、生活に必要な移動手段を公共交通あるいは低額の私的サービスでも確保できない移動困難者が多数発生するだろうと予想されている。

 最近では、高齢者による交通事故の多発が問題となり、75歳以上での自動車運転免許の返納者が増加しているというニュースがあった。免許を返納した人々は、自家用車という移動手段も失うことになる。

 政府が現在、バス事業に対して独占禁止法の適用除外を検討しているのも、バス事業者の利益を確保することによってバス路線を維持し、高齢者や過疎地の人々に公共の移動手段を提供することが目的だ。

 しかし都会ではバス停まで歩いて行くことが難しい人も多くなるだろうし、地方都市や過疎地ではバス路線の維持そのものがいずれ難しくなるだろう。

 そこで期待されるのが自動運転車だ。利用者が必要な時に呼ぶと、車が自動運転で無人で迎えに行き、自動運転で目的地に送り届けることが出来れば、人口減少で不足するドライバーも必要なく、必要な台数の自動運転車を用意しておくだけで、比較的に低い費用でのサービス提供が可能になるだろう。あるいは自動運転のバスを走らせることも考えられる。

 つまり将来、自動運転車が開発された暁には、日本では、自動運転車は公共交通機関を補完する移動手段となると予想される。

 自動運転車は、現在は自動車メーカーが将来の新技術として、メーカーとして生き残りのために開発していると世間では受け取られているだろうが、本稿で説明した観点から考えるならば、本来は政府が国民に移動権を保証するための手段として、より積極的に自動運転車の開発を後押しすべきだと考えられる。

 ただし気をつけるべきなのは、政府が自分で自動運転車の活用法を考えたり、地域に押し付けたりしないことだ。国土交通省は現在でも様々なタイプの自動運転車の活用方法を検討し、地域での実験を行おうとしている。

 その描く絵は素晴らしく見える。しかし国土交通省は過去にも、交通問題や関連する街づくりなどに関して様々な案を検討し、素晴らしく見栄えのする絵を描き、実際に実験的に実施したものもある。だが残念ながら、そのほとんどは絵に描いた餅に終わっており、大々的に成功した例は、筆者は寡聞にして知らない。

 自動運転を上手に活用し、全ての国民に適切な移動手段を提供するという国の責務を果たすためには、政府は自らがその実行主体になろうとするのではなく、規制改革や資金支援などを行って、実際の開発や実施は民間に任せるべきだろう。
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中島 敏(ライター)
東京大学卒業後、旧国家公務員上級職として勤務。米国ブラウン大学経済学大学院留学。その後、米国ワシントンD.C.にて現地コンサルタント会社勤務。約12年間米国に滞在。日本帰国後は米系の経済分析コンサルティング会社にて裁判支援コンサルティングに従事。現在はフリーライターとして活動中。

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