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秘書官更迭、オフレコ破りは気がかり

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【舛添要一が語る世界と日本(180)】オフレコ記者懇の内容が漏れ打ち切った経験も

公開日: 2023/02/07 (政治, IT/メディア)

CC BY 首相官邸=CC BY /つ

 荒井首相秘書官が、2月3日夜、同性婚について、「社会が変わる。社会に与える影響が大きい」、「マイナスだ。秘書官室もみんな反対する」、「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」、「同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」などと述べたことが大きな問題になった。

 批判の高まりに、荒井秘書官は発言を撤回し謝罪したが、岸田首相は更迭に踏み切った。

 岸田首相は、昨年10月、長男を政務担当の秘書官に任命したが、首相の外遊中に公用車で観光し、お土産を買っていたと報じられ、問題になっている。相次ぐ不祥事に、与党は頭を抱えている。任命権者としての首相の責任も問われることになる。

 直近のTBSの世論調査によれば、内閣支持率は35.5(-1.9)%、不支持率は62.2(+2.8)%となっており、この不支持率は政権発足後で最高となっている。支持率回復の材料がないだけに、荒井秘書官の更迭は政権にとっては打撃である。

 以上のような指摘をした上で、今回はオフレコの発言であったことについて議論したい。

 発言は記者懇談会という場でのものである。

 「記者懇」と短縮して言われるこの会合は、完全オフレコを条件に行政の長などが、記者達と懇談する場である。私も大臣として定期的に記者懇を行っていたので、その経験を踏まえて解説する。

 記者懇が記者にとって重要なのは、公表されない情報を入手できるからである。

 たとえば、ある法案を政府が提出するとき、その表向きではない裏の目的は何か、条文を読んだだけでは分からない政府の意図はどこにあるか、野党と妥協できる点はあるのかなどを、雑談の形で教えてもらえるからである。

 大臣にとっても、懇切丁寧に法案の背景などを説明してあげることは、記者が誤解と嘘にまみれた記事を書くのを阻止することができる。記者にとっても、正確な解説が可能になり、有益である。

 私が大臣のときは、記者懇は、人目につかない場所(レストランや喫茶店の一角)で、昼食をとったり、お茶やコーヒーを飲んだりしながら行うことが多かったが、代金は割り勘にした。私が経費をもつと、記者を買収したように誤解されるし、記者も私に都合の悪いことは書けなくなる。そのような配慮の上で、懇談会を続けていた。

 ところが、その場での私の発言が週刊誌に漏れていることに気づいた。今は、万年筆やオールペンのような形の録音機がある。それを胸に忍ばせておけば、録音は可能である。情報を漏洩した記者は、アルバイトで小遣い銭稼ぎのために情報を売っていたようだ。

 また、記者がオフレコ内容をデスクにあげると、そのデスクが週刊誌などに情報を売ることもあった。「給料の安い新聞社の記者には要注意!」というのが、大臣仲間の了解であった。

 私は、不愉快な情報漏洩事件があってからは、記者懇談会は行わないことにした。記者たちにとっては、政策に関する大臣からの裏情報も入らなくなり損であるし、大臣としてもバックグランド情報を流せなくなるのは痛かったが、致し方ない。

 海外ではオフレコという約束を守れない記者は、記者会見などから追放される。それだけに、そのルールはきちんと守られている。ところが、日本の場合、オフレコの場での発言が何度も公にされて政治問題化している。この彼我の違いはどこから来るのか。

 秘密を守れない人が日本人には多い。政治家にもそのようなタイプの人物がいる。そこで、こっそりと情報を永田町で流したいときには、その政治家と会って、その話をして、「これは貴方だけに言う秘密のことです」と言う。そうすると、伝言ゲームのように、その情報が1時間以内に他の政治家たちに伝わっていく。これほど確実な情報伝達手段はない。

 政治家のみならず、官僚、ジャーナリストにもそういうタイプの人間はいる。そのことを前提にして、政治家や政府高官は対応しなくてはならないので、安全を考えれば、記者懇談会など行わないに限る。

 最近は、記者も魅力の無い職業になったのだろう。

 給料の面でもそうだし、SNSなどネットで情報が拡散するようになり、新聞記事に対する需要も落ちてきている。そのためか、優秀な人材が参入しなくなっている。昨今は、文章の書き方、校正の仕方など、記者としての基本的な訓練を受けてない者が多いのに驚いている。

 しかも、自分が日本を支配しているかのような錯覚を持ち、ペンの力で政治家の命運を決めることができるというような傲慢な態度である。また、記者によっては、自分が番記者を務める派閥の一員になったかのような振る舞いをする者もいる。

 さらに言えば、政治家や役人は厳しい批判に晒されているが、記者だけはそうではなく、安全地帯にいる。これでは堕落するのは当然である。

 このような記者の質の低下もまた日本を劣化させる要因となっている。

 新聞社やテレビ局などのマスコミは、もっと本格的に記者の訓練を行うべきである。記者の素養低下がマスコミ全体の地盤沈下を招き、それがまた優秀な人材を遠ざけている。マスコミは、この悪循環を断ち切ることはできるのだろうか。

舛添 要一 (国際政治学者)

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