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朝日、毎日、東京は「安倍継承」疑問視

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【論調比較・菅新政権】各紙そろって「大きなビジョン見えない」

公開日: 2020/09/17 (政治, IT/メディア)

Reuters Reuters

岸井 雄作 (ジャーナリスト)

 安倍晋三首相の突然の辞任を受け、菅義偉前官房長官が新首相に就任し、菅内閣が発足した。

 安倍政治の「継承と前進」を掲げ、前内閣の骨格を維持し、党役員人事を含め、自民党内の各派閥のバランスに配慮し、安定重視の布陣といのが一般的な見方だ。派閥の多くの支持を固めて総裁選の勝敗が鼻からわかっていたこともあり、新政権にあるはずの興奮、高揚感に乏しいスタートになった。

 大手紙は新総裁選出から政権発足を受け、9月15~17日を中心に、社説、編集幹部や名物記者の「論文」(1、2面)などで、それぞれに論じている。「親安倍」の読売、産経の2紙は「親菅」に「継承」されるが、「反安倍」の朝日、毎日、東京の3紙は「反菅」とまでいかないが、「安倍継承」を警戒するというのが、現時点の大まかな構図だろう。

 最大限、好意的に書くのが産経だ。

 社説に当たる「主張」(15日、https://www.sankei.com/column/news/200915/clm2009150002-n1.html)で〈安倍政治を発射台にして国民のため全力を尽くしてほしい〉とエールを送ったうえで、〈菅氏は大局観をもって日本の針路を描き、国民に分かりやすく説明しつつ政策課題に果敢に取り組んでいかねばならない〉と求める。

 政権発足を受けた17日紙面は主張ではなく、乾正人論説委員長の「論文」を1面に掲載し、二階俊博自民党幹事長、麻生太郎副首相兼財務相、菅首相、安倍前総理のイニシャルから、菅政権を「NASA政権」と命名し、〈「安倍1強」体制から権力分散型の「四頭政治」に変化する可能性がある。……5派閥に支えられ、安定した政権運営が期待できる〉などと分析する。

 読売は、15日「社会に安心感を取り戻したい」(https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20200914-OYT1T50186/)で、政策課題を網羅的に並べ、憲法改正など国論が分かれる問題への読売の主張(論議を進めることなど)を訴えたほかは、新型コロナ対策のほか、国際情勢の変化への対応、社会保障改革や財政再建などへの取り組みを求めるオーソドックスな書きぶりで、「こうしろ」と強く求めるというより、菅内閣はこう取り組もうとしているということを、推測も交えて解説する淡白な社説だ。

 17日「経済復活へ困難な課題に挑め(https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20200916-OYT1T50308/)では新体制を踏まえ、〈派手さはないが、安定性を重視した堅実な布陣〉などと基本的に評価したうえで、政策課題ごとに、コロナ対策、経済、外交などの各担当大臣の実績や期待も含め、全体に好意的、応援のスタンスで書いている。

 日経(16日、https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63933390W0A910C2SHF000/)は〈よくいえば手堅い実務的な布陣であり、悪くいえば地味で華に欠ける〉と評し、〈デジタル化の遅れに対応する閣僚をすぐに新設した点は評価したい〉と書くのは、経済紙らしさか。

 また、菅首相が無派閥であることで党内基盤に不安があることを取り上げ、中曽根康弘政権が〈行政改革を掲げて世論を味方に引き付け、弱い党内基盤を補った〉ことを参考にするよう勧めるのが目をひいた。

 一方、朝日は15日社説(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14621933.html?iref=pc_rensai_long_16_article)で〈コロナ禍が続くなかでの、急な首相交代である。変化より安心を求める心理が、「継承」を前面に掲げた菅氏を後押しした面があるのかもしれない〉と分析。

 17日社説(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14624716.html?iref=pc_rensai_long_16_articl)は〈全体としてみれば、「安倍改造内閣」といってもおかしくない陣容〉とし、森友問題で政治責任を取らずに来た麻生氏の再任を挙げて〈政権運営の安定を優先し、政治の信頼回復は二の次〉〈結局のところ、安倍政権下の主流派が、トップの顔をすげかえて、その権力構造の維持を図ったというのが、今回の首相交代ではないのか〉と酷評。〈「暫定色」を払拭したければ、内外の諸課題に対し、確実に結果を出すほかあるまい〉と突き放すような書きぶりだ。

 毎日は、17日社説(https://mainichi.jp/articles/20200917/ddm/005/070/130000c)で〈前政権を継承し、前に進めるというだけで果たして乗り切れるだろうか〉と書き出し、当面はコロナ対策が重要だとして、〈忘れてならないのは、これまで後手に回ってきた政府の対策については菅氏も官房長官として重い責任を負ってきたことだ。何が欠けていたのか、きちんと検証するところから始める必要がある〉とくぎを刺し、アベノミクスなどの諸政策、官僚の忖度、沖縄への〈強硬に移設を推進しようとする姿〉などを列挙し、〈やはり、継承するだけでは済まされない〉と強調している。

 東京は、特に手法に焦点を当て、17日社説(https://www.tokyo-np.co.jp/article/56058?rct=editorial)で〈公平・公正であるべき行政が、政権中枢と関係の近い人を優遇したり、その事実を隠蔽したりする「統治機構の根腐れ」ともいえる姿……こんなことが起きたのは、安倍前政権が、政権にとっての敵と味方に二分し、味方には便宜を図る一方で、敵は徹底的に攻撃する政治手法によって政権を維持してきたからにほかならない〉との分析を掲げ、〈新政権では、一部の者でなく、国民全体に奉仕する政治に転換すべきだ〉と要求する。

 これに関連して朝日16日1面の根本清樹論説主幹論文(「座標軸」、https://digital.asahi.com/articles/DA3S14623479.html?iref=pc_ss_date)も、安倍時代が〈政治が法をぞんざいに取り扱い、ねじ伏せる。異形の政権だったというほかない。その下で、議会政治が荒廃し、官僚機構が深く傷んだのは必然だったろう。国会論戦からは逃げを決め込む。審議に出ても質問にまともに答えない。情報公開に背を向け、公文書の改ざんに手を染める。民主主義の土台が腐食した7年8カ月だった〉として、新政権に〈前車の轍を踏まず、憲法以下の法秩序への謙虚さを取り戻すこと〉を求める。

 読売16日2面の橋本五郎特別編集委員論文は、コロナの感染者、死者の数が少ないのに安倍政権への評価が厳しかった点について「信なくば立たず」をキーワードとして挙げ、〈最も大きいのは、最高指導者の姿勢にあったのではないか。……全身で闘っている姿が見えなかったからではないだろうか。……(モリ・カケ・桜を見る会も)国民の不信を積極的に取り除こうとする姿勢が足りなかった〉と指摘し、菅氏に〈過剰と思えるぐらいの「説明責任」を果たしてほしい〉と求めている。

 こうした様々な評価は、国家ビジョンといった本質的な論になっていない。これは菅氏のビジョンがはっきりしないからだろう。政権への基本スタンスの違いにかかわらず、各紙が「見えない」などと指摘している。


 〈政策の継承ばかりが前面に出て、何を前進させ、どんな国を目指すのかという大きなビジョンは見えない〉(毎日15日社説、https://mainichi.jp/articles/20200915/ddm/005/070/166000c)
〈気がかりなのは、総裁選の論戦から、菅氏が思い描く経済社会の将来ビジョンが明確に伝わってこなかったことだ〉(朝日17日社説)
〈内政、外交にわたって安倍政治を検証し、何を引き継ぎ、何を引き継がないのか、新政権としてどんな社会を目指し、それをどう実現するのか、具体的に語る必要がある〉(東京15日社説、https://www.tokyo-np.co.jp/article/55604?rct=editorial)
〈気がかりは、外交・安全保障、憲法改正などを見据えた骨太の国家観が明確でないことだ。……税財政、社会保障を含めた中長期的な未来像も見えない〉(読売15日1面村尾新一政治部長論文)
〈菅氏は大局観をもって日本の針路を描き、国民に分かりやすく説明しつつ政策課題に果敢に取り組んでいかねばならない〉(産経15日主張、https://www.sankei.com/column/news/200915/clm2009150002-n1.html)


 具体的に菅氏の主張で唯一、それらしいのが「自助、共助、公助」という社会のありようの基本認識だが、例えば朝日社説(17日)は〈三つのあるべきバランスをどう考え、それを実現するために何が必要なのかは語られなかった〉とし、17日毎日1面の高塚保編集編成局次長論文(https://mainichi.jp/articles/20200917/ddm/001/010/139000c)は〈自助が行き過ぎれば、過度な自己責任論になりかねない。新自由主義的な路線の行き詰まりを、コロナ禍は図らずも示した。広がった格差を、どう是正していくのか。それこそが行政に求められる役割だと思う〉と指摘する。

 また、規制改革や役所の縦割り排除なども掲げるが、〈日本の国力や国民の暮らしをいつまでに、どのくらい押し上げていくのか。役所の縦割り、既得権益の打破や規制改革はそのための手段である〉(産経15日主張)、〈どれも手段であり政策の中身ではない。悪弊を打破し、何を実現したいのか〉(毎日17日社説)などの評価も、各紙、おおむね共通する。

 大きなビジョンについて、日経(17日社説)だけはが〈大きな国家観を打ち出した安倍政治と同じことをするのが菅カラーではあるまい。憲法改正は自民党の党是であり、積極的に論議するのはよいことだが、まずは国民が日々求めていることに取り組むのが先決である〉と、〝実務優先〟を求め、異彩を放っている。
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岸井 雄作(ジャーナリスト)
1955年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。毎日新聞で主に経済畑を歩み、旧大蔵省・財務省、旧通商産業省・経済産業省、日銀、証券業界、流通業界、貿易業界、中小企業などを取材。水戸支局長、編集局編集委員などを経てフリー。著書に『ウエディングベルを鳴らしたい』(時事通信社)、『世紀末の日本 9つの大課題』(中経出版=共著)。
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