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産経まで異例の首相批判、「前面に立て」

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【論調比較・首相の”引きこもり”】読売は腰砕け 朝毎、東京は厳しく指弾

公開日: 2020/08/06 (政治, IT/メディア)

Reuters Reuters

岸井 雄作 (ジャーナリスト)

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、緊急事態宣言を再び出すかも議論になる中、国会開会を自民党がかたくなに拒み、安倍晋三首相が会見や国会答弁せず、1カ月以上にわたり事実上、国民への直接の語りかけがない「引きこもり」ともいえる異常事態が続いている。自民党は野党の臨時国会の早期開会要求を拒否し、この状況がなお続く見通しだ。内閣支持率が一段と低迷する中、大手紙でも安倍応援団のはずの産経までが、「首相は戦いの前面に立て」と、臨時国会開会を求め、リーダーシップを見せない首相を批判する異例の論調を掲げるに至っている。

 通常国会は、与党が野党の会期延長要求を拒み、6月17日に閉会。機動的な対応のためとして第2次補正予算に10兆円もの空前の予備費を計上したのも、追加の補正予算のため臨時国会を早期に招集するのを避けるためとの見方が強い。新型コロナ対策の不手際への批判はもちろん、いまだに安倍首相からまっとうな説明がない河井克行前法相・安里参院議員夫妻の公選法違反(買収)事件や、森友問題の公文書改ざんでの近畿財務局職員自殺、桜を見る会などについて、国会で追及されることを安倍首相が嫌っているためとされ、与野党合意で毎週行われる国会の委員会の「閉会中審査」も、首相の出席要求を与党はことごとく拒んでいる。

 国会だけではない。安倍首相は2月末以降、2週間に1回程度、新型コロナに関する記者会見を開いていたが、通常国会閉会翌日の6月18日に記者会見を開いたのを最後に、感染が再拡大した6月下旬以降、1度も会見せず、内閣記者会による開催要請にも応じていない。ごく短時間、官邸で記者団の前に立ち止まって数件の質問に答える「ぶら下がり」に応じることはあるが、質問が続いても振り切って立ち去るケースも目立つなど、「会見」と呼べる代物ではない。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策本部、経済財政諮問会議などの冒頭発言、通称「頭撮り」で用意した文書を読み上げるテレビニュースが、官邸でのぶら下がりとともに、数少ない首相の〝肉声〟。そんな状態を「巣ごもり」(毎日7月22日朝刊)などと書かれても、知らんぷりだ。

 首相の執務ぶりも、「連続執務147日でストップ」(読売6月22日朝刊)と、1月26日から6月21日まで「連勤」したものの、朝日「首相動静」、読売「安倍首相の一日」、毎日「首相日々」などを見ると、国会閉会後は「午前 来客なく東京・富ケ谷の私邸で過ごす」といった記載も目立ち、一方で夜の会食は増えている。ちなみに、動静には時折、数分間の「報道各社のインタビュー」などとあるのが、官邸でのぶら下がり取材のことだ。

 この間、熊本県などを中心に豪雨が大きな傷跡を残す一方、新型コロナの感染拡大も止まらない。感染実態把握に欠かせないPCR検査は安倍首相が徹底検査による陽性者の早期発見に努めると繰り返すにもかかわらず遅々として体制が整わずに時間を空費し、感染が拡大する中で7月22日から観光促進策「GoToトラベル」がスタート。直前に東京(都民の旅行、都内への旅行)を対象から外したかと思えば、新型インフルエンザ等対策特別措置法を担当する西村康稔経済財政相が、お盆の帰省は控えるように求める発言をして菅義偉官房長官との食い違いが指摘され、また、小池百合子都知事が不要不急の移動自粛を要請すると、菅長官が「必要はない」と反論するなど、閣内、国・自治体間のトタバタ劇が日々演じられている。

 5月25日に緊急事態宣言を解除した際に「日本モデルの力を示した」と首相が胸を張ったのももはやジョーク。今や1日の感染判明者が連日1000人を超え、感染「第2波」の到来ともいえる厳しい状況が続く。

 専門家からも、ここにきて安倍政権の対応への不満が公然化している。東京都の専門家によるモニタリング会議(7月22日)では杏林大学病院の山口芳裕・高度救命救急センター長が、病床の拡大に時間がかかること、新型コロナ患者の入院には通常の患者より多くの手間がかかることを挙げ、「国のリーダーが使っている『東京では(医療が)逼迫していない』は誤り」と、首相の会議などでの発言完全否定。実際にその後の感染拡大で医療体制ひっ迫の懸念は深まっている。

 さらに、東京都医師会の尾崎治夫会長は30日に会見して特措法改正の必要を訴え、「良識ある国会議員の皆さん」と書かれたパネルを掲げ、「コロナに夏休みはない。国会を開き、国がすべきことを国民に示し、国民、都民を安心させてほしい」と呼びかけた。

 尾崎氏の呼びかけに応えたのかは不明だが、自民党新型コロナ関連肺炎対策本部の「感染症対策ガバナンス小委員会」の7月30日の会合では武見敬三小委員長(参院議員)が「喫緊の課題については臨時国会が開かれれば速やかに法改正しなければならない」と述べたという。自民党の岸田文雄政調会長も8月5日の民放インタビューで特措法改正の必要に言及している。ただし、こうした与党内の声があっても、自民党執行部の方針は「臨時国会召集は9月下旬以降」というから、向こう2カ月ほど、国会の夏休みは続くことになる。

 さすがに、と言うべきか、世論の安倍政権への風当たりも日に日に強まる。最新のTBS系のJNNの世論調査(8月1、2日実施)では、コロナへの政府の対応を評価「する」26%、「しない」61%、GoToトラベルも評価「する」25%、「しない」66%、臨時国会を早期に「開くべき」80%、「必要ない」14%という数字で、安倍内閣支持率は35.4%と過去最低に落ち込み、不支持は62.2%にアップしている。

 この間、大手紙は様々な角度から新型コロナを取り上げているが、政権の迷走と首相自身の発信がほぼないことが相まって、紙面も苛立ちを増している。社説(産経は「主張」)でも、対策全般、国会開会や首相の出席、首相会見などを繰り返し取り上げている(8月6日時点)。

 この中で、産経が8月2日に、普段2本載せるのを1つに絞って倍のスペースで論じた「1本社説」の首相と政権への厳しい注文ぶりが目を引く。

 〈政府や自治体は対応に全力をあげていると信じたいが、どうにもちぐはぐな印象が強い。危機に際して望まれるのは、トップのリーダーシップである。残念ながら、緊急事態宣言の解除後、安倍晋三首相の存在が希薄に映る。……もっと首相が前面に立つべきだ。……適宜、自分の言葉で国民に語りかけるべきである〉と、ズバリ求める。

 〈法的拘束力を伴う休業要請と補償を可能とする新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正〉が急務だとして、国会の早期開会を求め、菅長官の「(法改正に)時間は多くかかる」との発言を〈泥棒を捕らえて縄をなうどころか、逃した後に次の泥棒に備えて縄をなうがごときの遅さだ〉と痛烈に批判。長官が推進するGoToトラベルも〈一時停止すべきである〉と断じる。

 産経は政府がイベント制限(5000人まで)の維持を決めた時(7月24日)にも〈まずは首相の明確な言葉で国民の理解を求めるべきだ〉と指摘していた。

 産経の明快な主張の一方で、安倍政権支持の基本姿勢は同じ読売の腰の引け方が際立つ。感染拡大への対応で検査拡充などもろもろ求め、GoToトラベルの問題点の指摘などもしているが、政権の姿勢を問うような社説は見受けられない。7月15日に衆院予算委の閉会中審査を受けた16日の「政府は再流行防ぐ戦略を示せ」の中で、国会開会については〈与野党は6月の国会閉会にあたり、衆参両院の常任委員会を週1回開くことで合意した。コロナの検査体制や有効な景気対策などの議論を掘り下げてもらいたい〉と、閉会中審査で十分との認識を示し、首相の発信についても、野党が首相の出席を求めたが与党が拒否したことに触れ、〈国の対処方針や現状認識について、首相が積極的に説明することは大切だ。政府は適切に情報を発信し、国民の不安を払拭するよう努める責任がある〉と、抽象的な言葉が並らぶ。

 GoToトラベルの問題点は指摘しつつ、停止までは求めず(18日)、25日の「感染急増 全国的な広がりを憂慮する」でも、〈医療体制は予断を許さない状況にある〉との危機認識を示しながら、「逼迫していない」と言い続ける安倍首相以下の政権を批判するでもなく、GoToについて〈体調が悪い人は、旅行を控えたい〉と呼びかけた程度。PCR検査の拡大を求めた8月1日でも〈感染は今、どんな状況にあり、政府はどのように対処するつもりか。分かりやすく国民に説明して協力を求め、不安の解消に全力をあげることが大切だ〉とは書くが、具体的に国会や会見で説明せよといった主張は見当たらない。

 実は、読売は6月22日朝刊で「感染症に強い社会築け」と銘打って、読売新聞社の提言を発表し、大々的に紙面展開している。その中で、内閣に強力な事務局を置くことを求め、〈都道府県に判断させず、政府が主導して調整する仕組みを取り入れたらどうか〉と訴え、また、具体的に休業要請と補償の関係について、〈特措法で金銭的な手当てに関する規定を充実させる〉必要も指摘している。特措法改正の必要を訴えながら、臨時国会を求めないのでは、せっかくの提言が色あせてしまわないか。

 他紙は、日ごろの論調のとおり、あるは一段と安倍政権への批判を強めている。

 朝日は7月23日に〈国会の閉会中審査には出てこず、記者会見もやらない。行政府の長として、説明責任から逃げているとみられても仕方あるまい〉、8月1日には「国会召集要求 首相は速やかに応じよ」と題して、〈「閉会中でも求められれば説明責任を果たしていく」と述べた首相が答弁に立たない。これでは首相隠し、首相の責任逃れと見られても仕方あるまい〉と厳しく批判。2日「危機回避へ具体策を」では、〈事態は新たな局面に入ったと見るのが自然ではないか〉と、感染者急増への危機感を示したうえで、〈人々が聞きたいのは……具体策であり、行政の最高責任者である首相の覚悟だ〉と、トップの責任を指摘。検査強化、GoToトラベルの問題点、自治体の休業要請と協力金の関係など〈疑問にしっかり向き合わず、説明から逃げる姿勢が、社会の不安と不信を深めていることに気づくべきだ〉と繰り返し首相の対応を求める。

 毎日も、7月30日「特措法 臨時国会開き問題整理を」で〈特措法に基づく緊急事態宣言の発令で浮き彫りになった課題は放置されたままだ〉として、休業要請と補償、指示に従わない事業者への罰則、国と自治体の権限と役割分担など〈速やかに臨時国会を開いて、問題点を整理すべきだ〉、8月1日「再びブレーキを踏む時だ」は〈Go Toトラベル事業は一旦停止すべきだ〉と要求。3日「首相は直ちに召集決断を」は、ちぐはぐな政府の対応を批判し、〈臨時国会を開きたくないから(特措法改正などの)議論を先送りするのであれば本末転倒だ。……そもそもこの緊急時、臨時国会を開くのが当然であり、憲法を持ち出すまでもない話だ。それでも与党が応じないところに今の異様さがあると言っていい〉と厳しく批判し、〈臨時国会を与野党挙げて取り組む体制を作る契機としたい〉と求めた。

 東京は8月2日 「首相は召集に応じよ」と題し、都医師会の尾崎会長の訴えを引き、〈臨時国会の召集要求は、感染症対策の最前線に立つ人々の切実な声に裏打ちされたものでもある〉と指摘し、〈感染の拡大防止に向けた政府の対策が必要とされるにもかかわらず、行政府の長たる首相の存在が全く見えないのは異常な事態だ。首相や閣僚、そして与党議員は態度を改め、国会を召集して新型コロナ対策を議論し、有効な対策を打つべきだ。これ以上、国民に背を向けることは許されない〉と強く求めている。

 このほか、政府が特措法改正には手を着けぬまま、風俗営業法に基づき、夜間の繁華街での感染防止に警察の協力を求めるなどしていることについて、東京は「コロナに風営法 目的を外れた適用では」(7月31日)と、この問題に絞って書いたほか、朝日(8月1日)と毎日(7月30日)もこの点に言及し、〈感染防止対策は重要だが、こうした法律の適用拡大はその趣旨から逸脱する懸念がある。対策の強化が必要だと考えるなら、特措法も含めて、法改正が必要かどうかを議論するのが筋だ〉(毎日)などと、法律の無理な運用にくぎを刺している。
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岸井 雄作(ジャーナリスト)
1955年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。毎日新聞で主に経済畑を歩み、旧大蔵省・財務省、旧通商産業省・経済産業省、日銀、証券業界、流通業界、貿易業界、中小企業などを取材。水戸支局長、編集局編集委員などを経てフリー。東京農業大学応用生物科学部非常勤講師。元立教大学経済学部非常勤講師。著書に『ウエディングベルを鳴らしたい』(時事通信社)、『世紀末の日本 9つの大課題』(中経出版=共著)。
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