ネット上の記事を集めてみせるキュレーションサイトのさきがけのひとつスマートニュースの執行役員、藤村厚夫氏に今後の戦略を聞いた。
――500万ダウンロードを突破されたそうですね
まもなく600万ですね。ただ、アプリのダウンロード数は、インセンティブつきの広告を使うなど、数字を積み上げるだけならいくらでもできます。どれだけ使って頂けるかです。2月に300万ダウンロード達成したとき公表した、MAU(月に1度は利用)が75%、DAU(毎日利用)が40%弱でした。ダウンロードが増えて数字は少し落ちてはいますが、今も高い数値をキープしています。こういったアプリの中では、非常に高い数値だと思います。
――業績に変化は
この夏場からテレビコマーシャルなど、積極的にマスマーケットをするようになりましたので、常に右肩上がりだったのがさらに角度が上がりました。9月末で500万という発表をしましたが、もう600万に近づいています。自然発生的に増えていたときと比べ、第2の成長期と言えると思います。
――資金の使い道は
10月にUS版を立ち上げまして、現地採用をしています。東海岸・西海岸の拠点に数人ずつ、現地で採用したスタッフを置いています。海外展開は日本より、格段にお金がかかる。会社全体が、拡大していく人と拠点にお金を使っています。
――米メディアとの交渉はいかがですか
日本での経験を教訓にしていまして、パートナーとの交渉を立ち上げ期の大きなテーマと考え、そういうところのベテランを意識して採用してきました。良好な関係でアグリゲートしたいと思っている媒体様を初期段階で50社くらいリストアップして、立ち上げ前に交渉してきたのですが、基本的にポジティブな反応ですね。
――米進出に際して、ローカライズは行ったのですか。
レイアウトやデザインに関してはユーザーテストを繰り返し、アメリカでアプリのデザインをしてきたような人も加えてチューニングしています。
コンテンツ選択の部分で言うと、本質は変わらないです。やはりソーシャルメディアの中での評価の高さを軸に、スコアリングしたコンテンツを出していくという観点は全く変わっていません。ただ、カテゴリーは日本と違うものになっていくと思うので、そのカテゴリーにどんなコンテンツが入るかというのは、機械に学習させ、精度を上げていく必要があります。日本では2年くらいかけて調整してきたので、アメリカで立ち上げるにあたって、急速にキャッチアップしないといけないのは大変ですね。
――日本での今後の展開は
色々なニュースアプリがありますが、我々の場合は、「マスに使っていただく」ということ、日用品として老若男女に手っ取り早く使っていただくというポジションを狙っているので、500万ダウンロードというのはまだまだ入口です。今後、スマートフォンの利用数は1億近くにまで前進していくと思う。まだまだこれからですね。
――ユーザーの年齢層は
一人ひとりのユーザーデータは取らないので、基本的には知る手立てはないです。やってるのは、アンケートをランダムに出しています。製品の改良のために色々なご質問をさせていただくという形で、統計としてシンプルなデータも集めている。そこから分かるユーザー層は、まだ20代の後半から30代の半ばくらいが大きい山を形成しています。ただ、立ち上げてから半年くらいの間は、20代から30代くらいがピークで、その横がどんと落ちるというような形だったんですが、今は年齢が高い方に関しては緩やかに落ちています。
――読者の変化に伴い、記事選択やサービスは変えたのですか
ユーザー層を変えたいがために、コンテンツを変えるというようなことはしていません。だた、こういう方々にもっと読んでいただくために、コンテンツ面で何ができるかというようなチャレンジはしなきゃいけない。
例えば、まだ女性層は少ないのです。最適化を進めようとすれば男性にフォーカスしてる方が効率はいいかもしれないですけど、やはり、女性が喜んでくれるようなコンテンツを多めに誘致していくということはやっています。きれいな写真があって、楽しい話題や、占い、恋愛の話、美容、そういうコンテンツは今でもコラムっていうカテゴリーに入っているのですが、強化していけば間違いなく女性ユーザーが増えると思います。
――独自のコンテンツをそろえる考えは
オリジナルをやるつもりは特にないですね。いいコンテンツをお持ちの方々と上手くやる、っていうことの方が、格段に効率がいいと思いますし、僕自身コンテンツを作る会社を長くやってきましたので、その大変さは分かるのですよ。人手もかかればコストもかかる。かといって、飛躍的なジャンプは難しい。
(聞き手はニュースソクラ編集長・土屋直也)