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COP26閉幕 日本は石炭火力発電の廃止を拒否 

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【緑の最前線(100)】代わりに「技術開発」 これには強い北風

公開日: 2021/11/16 (気象/科学)

【緑の最前線(100)】代わりに「技術開発」 これには強い北風

三橋 規宏 (経済・環境ジャーナリスト、千葉商科大学名誉教授)

 英国で開かれていたCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)は2週間にわたる会期を1日延長し、産業革命前からの気温上昇を「1・5度」に抑える努力を追求すると明記した成果文書「グラスゴー気候合意」を採択して,13日午後閉幕した。

 気候変動安定のため、これまでの「2度」より高い目標「1・5度」を明記した。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、1・5度に抑えるためには30年までに温室効果ガスの排出量を10年比で45%削減し、50年には実質ゼロにする必要がある。成果文書に「今世紀半ばには実質ゼロにする」と明記された。

 この目標達成ため、国連事務局は各国政府に対し温室効果ガスの削減目標の引き上げ要請、COP26での各国首脳演説も含め150を超える国・地域が新規削減目標を報告した。日本も菅義偉前首相時代に決定した「50年炭素ゼロ」、「2030年度の排出量を13年度比46%削減」、「さらに50%の高みに向け挑戦を続けていく」との削減目標を国連事務局に伝えた。

 気温上昇を1・5度に抑制するためには、温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電所の早期廃止が最も効果的だ。このため、COP26の最大テーマは石炭火力発電の早期廃止にあった。議長国英国のジョンソン首相は、就任したばかりの岸田文雄首相に直接電話をし、30年までに石炭火力発電廃止を呼びかけた。

 同首相はCOP26の開幕式でも「我々は石炭火力をやめることができる」と指摘し、先進国は30年、途上国は40年までの廃止を求めた。先進主要国の中では、フランス、英国、イタリアなどが30年を待たずに20年代の全廃を決めており、カナダは30年、石炭火力依存が高いドイツは38年、米国も35年に全廃を計画している。

 日本は30年度の発電に占める石炭火力の割合が19%と高く、30年度以降も高効率の石炭火力を使い続ける方針だ。G7(先進主要国)の中では唯一日本だけが石炭火力の廃止を拒否している。当然、日本批判は厳しく、強い北風が吹き付けている。

 衆院選後の今月2日、COP26の首脳会合に途中出席した岸田首相は、3分間演説でアジアなどの脱炭素を巡る技術革新に新たに5年間で最大100億ドル(約1兆1400億円)を追加支援すると表明したが、石炭火力の廃止は拒否した。首相は再生可能エネルギーの不安定さに触れて「既存の火力発電をゼロエミッション化して活用することも必要だ」と強調した。

 ゼロエミッション化について首相はアンモニアを石炭に混ぜて燃やすことでCO2の排出を大幅に削減できる新技術の積極的な活用を強調した。さらに排出したCO2を回収・利用・貯留するCCUSと呼ばれる次世代技術を備えた火力発電の輸出でアジアの排出削減に貢献していくと述べた。

 だがアンモニア混焼技術もCCUSもまだ未完の技術であり、実用化までかなりの時間が必要だ。不成功に終わる可能性もある。石炭火力を維持したいため、未完成の新技術に過剰期待し失敗した時の責任は誰がとるのだろうか。

 毎年COPの会場で各国の温暖化対策の動向などを厳しくチェックしている国際的な環境NGO、CAN(気候行動ネットワーク)は、石炭火力の廃止に消極的な日本を「化石賞」に選んだ。

 「困った時の技術頼み」で逃げるのではなく、石炭火力の段階的廃止を前提に、多様な再エネの広範な利用、水素エネルギーの活用などを積極的に進め、温暖化対策に消極的な日本のイメージを払拭しなければならない。

 そのためには、エネルギー節約型の企業経営、ライフスタイル、エネルギーの地産地消を可能にさせる地域分散型の国土開発、不安定な再エネ電力を安全に運べる丈夫な送電網の構築など脱炭素社会を目指した国家百年の計を官民一体、国民総動員で作成、実行していける新しい時代への移行を急がなければならない。
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三橋 規宏(経済・環境ジャーナリスト、千葉商科大学名誉教授)
1940年生まれ。64年慶応義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、科学技術部長、論説副主幹、千葉商科大学政策情報学部教授、中央環境審議会委員、環境を考える経済人の会21(B-LIFE21)事務局長等を歴任。現在千葉商大学名誉教授、環境・経済ジャーナリスト。主著は「新・日本経済入門」(日本経済新聞出版社)、「ゼミナール日本経済入門」(同)、「環境経済入門4版」(日経文庫)、「環境再生と日本経済」(岩波新書)、「日本経済復活、最後のチャンス」(朝日新書)、「サステナビリティ経営」(講談社)など多数。
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