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G7、発案は佐藤首相?

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【けいざい温故知新】オンラインG7開催、中国を仮想敵に再結束

公開日: 2021/02/22 (ワールド)

オンラインG7=Reuters オンラインG7=Reuters

土谷 英夫 (ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)

 トランプ再選なら存続も危ぶまれたG7(主要7カ国)体制が、バイデン大統領で蘇生した観がある。19日のオンライン・サミットの首脳声明は「多国間主義(マルチラテラリズム)」を確認し、共同で対応する相手に「中国」を名指しした。

 思えば、46年に及ぶG7の歴史は、共同の仮想敵と、米国の単独行動主義(ユニラテラリズム)への対応が交錯してきた。

 日本の高度成長期に首相を務めた佐藤栄作は、こまめに日記を付けていた。1972年1月6日、カリフォルニア州サンクレメンテのニクソン大統領私邸で行われた日米首脳会談の日付けに「おやっ」とする記述がある。

 「新しい問題提起としては米大統領の音頭で自由主義国米仏英独日の五ヶ国、更には加、伊も含めて七ヶ国会議を主催する事(首相又は大統領)。」(「佐藤栄作日記」朝日新聞社)前後の文脈からみて、佐藤がニクソンに提案している。

 「七ヶ国会議」の構成国は、3年後の75年深秋、パリ近郊のランブイエ城での首脳会合に始まるG7と全く同じだ。

 サンクレメンテ会談の前年、佐藤は「ニクソン・ショック」のダブル・パンチを食らった。7月にキッシンジャー補佐官の隠密訪中で、翌年のニクソン訪中が決まる。8月には米国が予告なしにドルと金の交換を停止、円切り上げを迫られた。ニクソンの独断専行に振り回された佐藤は「七ヶ国会議」に、米国の単独行動主義をけん制する役割を、期待したのだろう。

 定説ではG7のルーツは、佐藤提案ではなく「ライブラリー・グループ」会合。今月6日、100歳の天寿を全うしたジョージ・シュルツが、ニクソン政権の財務長官だった73年3月、英国のバーバー、フランスのジスカールデスタン、西独のシュミットの3人の財務相を招き、ホワイト・ハウスの図書館(ライブラリー)で通貨問題などを討議した非公式会合だ。

 第2の経済大国なのに外された日本の愛知揆一蔵相(財務相)は半年後、ケニアの首都ナイロビで開かれたIMF総会の機に一計を案じ、米英仏独の財務相を日本大使公邸の夕食に招いた。日本から酒樽を取り寄せる周到さで、次回から日本も入る5カ国財務相会議(G5)にすることで、了承を得た。

 だが、愛知は3か月後パリで開いた初のG5に出席できなかった。出発直前に高熱を発し、肺炎で急逝したのだ。

 70年代前半は、経済も政治も大混乱した。71年に金・ドル本位のブレトンウッズ体制が崩れ、73年初頭に主要通貨が変動相場制に移行。同年秋、アラブ産油国が供給を絞り「石油危機」が勃発。74年夏、ウォーターゲート事件でニクソンが任期途中に辞任。75年4月末、米軍がベトナムから敗走した。

 民主主義グループの盟主・米国の権威失墜を見て、「西側」を立て直すべく、共にG5経験者だったジスカールデスタン仏大統領と、シュミット西独首相が知恵を絞った。G5の枠組みをそのままに、首脳に格上げした米欧日5カ国サミットを、仏大統領の別荘のシャトーに設営したのだ。

 そこに招かれざる客、イタリアのモロ首相が押しかけ参加した。人口で英、仏、西独とほぼ横並びの国の面子が、かかっていた。G6では欧州偏重が過ぎると、翌年のサンファン・サミットの議長国・米国がカナダを誘い、G7に落ち着いた。

 G7発足時の仮想敵は、原油高騰で先進国をスタグフレーション(インフレ・不況の並存)に陥れたアラブ産油国と、旧ソ連が盟主の「東側」。石油危機後遺症はやがて収拾、89年の「ベルリンの壁」崩壊と91年のソ連解体で「東側」は消えた。

 98年から2014年のクリミア併合で除名されるまで、ロシアも加わりG8だった。ロシアの民主化、市場経済化を支援したはずが、ロシアは権威主義を捨てなかった。G7の失策だ。

 米ブッシュ(子)政権が、03年に始めたイラク戦争は、フランス、ドイツ、ロシアが反対し、G8に亀裂が入った。

 だが、極め付きの単独行動主義者は「アメリカ・ファースト」で同盟を軽んじたトランプ前大統領だ。昨年、G7史上初めて対面の首脳会合が流れたのは、コロナ禍もさることながら、欧州首脳らの「トランプ忌避」による。トランプ政権のままなら、G7は遠からず解散の憂き目を見たはずだ。

 19日の首脳声明が「21年を多国間主義への転換点にする」と宣言したのは、トランプ流単独主義に戻らぬ決意表明だ。G7メンバー外で声明にある国名は中国のみ。「公正で互恵的な経済システムを支持するため」に関与する相手として。つまり、トランプ後の新生G7は、中国を共同の仮想敵に結束を固める、と示唆している。

 英国が議長で6月にコーンウォールで開く対面サミットに、オーストラリア、インド、韓国がゲスト参加する。民主主義国を糾合して中国に対する伏線だ。メンバー間の対中温度差をいかに調整して中国と対峙するか。新生G7の課題である。
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土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)
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