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中国バブル崩壊の必然ーー過剰投資のツケ限界に

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【けいざい温故知新】不動産バブルが金融危機をもたらす「灰色のサイ」になりかねない

公開日: 2021/09/17 (ワールド)

Reuters Reuters

土谷 英夫 (ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)

 巨大デベロッパー恒大集団の破綻が、中国の不動産バブル崩壊の引き金になる、との見方がある。だが、不動産は問題の一側面だ。事の本質は、過剰投資に依存してきた中国経済の成長が、最終局面を迎えた、ということだ。

 IMF(国際通貨基金)のデータベースで、1980年まで遡り、中国のGDPに占める投資(官民合わせた総投資)の比率を追った。80~90年代は30%台(93、94年だけ40%強)が続いた。それが、2004年以降は、ずっと40%台(06年だけ39%)で、総投資が民間消費支出の額を上回ってきた。

 このGDP構成は異常な姿だ。先進国では投資の比率は20%前後、新興国でも高くて30%台。需要の王様は民間消費が常で、中国のように15年余も、投資が王様だった国はない。

 中国は貯蓄率が高く、消費性向が低いから、投資で穴埋めしなければ、という見方もあろう。だが、中国企業(非金融)の債務残高のGDP比は、バブル期の日本企業を超え、社債のデフォルトが相次いでいる。家計債務のGDP比も近年急上昇し、日本や欧州諸国の水準に迫る。

 GDPを供給面から見れば、成長率は 労働投入、資本投入(投資)、全要素生産性(TFP)で規定される。

 生産年齢人口がピークアウトして、労働投入には期待できない。TFPの伸びが、マイナスになっている、との中国人研究者の試算が数年前に出た。近年の中国の経済成長は、力まかせの資本投入(投資)の一本足に支えられてきたのだ。

 投資ばかりどんどん増やせば、非効率、不採算の案件が増えるのは理の当然だ。一例をあげよう。

 中国の高速鉄道は、07年に営業を始め、十数年で総延長が3.8万キロと、日本の新幹線網の10倍以上に延びた。ところが黒字路線は数えるほどで、ほとんどが赤字。昨年はコロナ禍もあり、運営する国有企業、中国国家鉄路集団の赤字は9000億円を超えた。同集団の債務は95兆円ほどに膨らむ。

 そして不動産。オフィスビルに限れば、バブルはすでにはじけている。恒大の本拠地、深圳のオフィスの空室率は20%を軽く超える。上海でテナントが集まらない新築高層ビルが競売にかかった。いくつもの都市で、完成すれば市で一番高くなるはずの超高層ビルの建設計画が、中止になった。

 残された成長のエンジンが、住宅(マンション)投資。かつての日本の土地神話のように、中国の住宅神話は強固だ。若い男性にとり住宅保有は結婚の条件と見なされ、キャピタルゲイン狙いの資産運用先としても、株や債券を引き離しダントツの人気だ。上がることはあっても下がらなかったからだ。

 だが、ケネス・ロゴフ米ハーバード大教授らが昨年8月、需給動向などから、中国の住宅価格は「潜在的な不安定のピークにある」とする論文を発表した。恒大集団が資金繰りに、手持ち物件の大幅値引き販売を始めたのは、その翌月だ。

 当局も、不動産バブルが金融危機をもたらす「灰色のサイ」になりかねない、と今年の年初から銀行の不動産向け融資に総量規制を始めた。バブル潰しの劇薬にもなり得る。

 ロゴフ教授らは、不動産活動が20%落ちると、金融への影響を除外してもGDPを5~10%下押しすると試算した。バブルが崩れれば、不況入りは避けがたい。経済再生は、過剰投資頼みに代わる成長パターンの確立が、条件になろう。

 1人当たりGDPで、米国の5分の1以下の中国が、所得格差を示すジニ係数(1に近いほど不平等)が0.4台と米国より髙い。消費が振るわないはずだ。

 習近平政権は唐突に「共同富裕」を唱えだした。寄付の名目で超大企業から御用金をかき集めても、ジニ係数を動かすほどにはなるまい。税制を、社会保障制度を、地域産業政策を、どうするのか。体系的な政策が見えてこない。

 脱過剰投資の成長パターンに移るまでに、せめぎ合いがあろう。世界経済にとって中国は当面、リスク要因だ。
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土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)
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