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全人代で消えた「成長目標」ーー中国に 人口、バブル、米国の壁

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【けいざい温故知新】習政権の国有企業中心主義で3つの壁を越えられるのか

公開日: 2021/03/08 (ワールド)

全人代が開かれる人民大会堂=ccbyAcidBomber 全人代が開かれる人民大会堂=ccbyAcidBomber

 中国の5か年計画から成長率目標が消えた。全国人民代表大会で公表した第14次計画(2021ー25年)では、経済成長率は「合理的な範囲を保つ。毎年の状況に応じて打ち出す」と記すのみ。マクロ経済目標なき計画とは?

 初年度の21年だけは「6%以上」と数値を出した。IMFや世界銀行が、コロナ禍からのリバウンドを見込み、中国の成長率を8%前後と予測しているのに、手堅い目標だ。

 直近の11-13次計画の成長率目標は、年平均7.5%→同7%以上→同6.5%以上と漸減してきた。一方、全人代では、35年までに1人当たりGDPを「中等先進国」並みにする、という長期目標も公表している。

 19年に1万ドルに達した1人当たりGDPを今後15年間で、中等先進国並みの2~3万ドルに引きあげるには、少なくとも実質GDPの倍増=年平均5%弱の持続的成長が不可欠だ。だが、その前に、3つの壁が立ちはだかる。

 ▽人口構造の壁

 20年の出生児数は戸籍登録ベースで前年より15%減った。21年はコロナ禍の影響がフルに出て、さらに減るはずだ。「1人っ子政策」から「2人っ子政策」に転換した甲斐がない。従来の推計では人口減少は27年からだが、すでに人口が減り始めた、とみる専門家もいる。

 特に成長率に影響するのは労働力人口だ。大躍進政策の失敗による飢餓(59-61年)の後、62年から約10年、高水準の出生数が続き中国版「団塊の世代」を形成した。その先頭を切る62年生まれが60歳(男性の定年)になる22年からの15年間、毎年1000万人ペースで労働力が減る、との推計もある。

 一方で年金受給者は急膨張し、人口オーナス(重荷)が、経済成長の足を引っ張り続ける。

 ▽不動産バブルの壁

 今年の成長目標を「6%以上」と低めにしたのは、高めの目標では不動産バブルをあおる懸念があった、との見方もある。金融当局も不動産バブルを「灰色のサイ」(大問題に発展する可能性大だが、見過ごされてきたリスク)と警戒し、昨年末に銀行の不動産向け融資と住宅ローンの「総量規制」に踏み切った。

 上海、深圳など1級都市では住宅価格が平均年収の何十倍にも高騰する一方、地方では値崩れも起きている。バブルをこれ以上膨らませず、崩壊もさせない、のは至難の業だ。建設業も含め広義の不動産関連部門はGDPの3割に迫る。

 仮にバブルが崩壊すると、30年前の日本のように、金融危機に波及して、長期停滞に陥りかねない。

 ▽米国の壁

 バイデン政権は、中国を「国際秩序に挑戦する唯一の競争相手」と位置づける。2国間交渉が得手のトランプ政権と違い、同盟国はじめ広く民主主義諸国を糾合して中国と対峙する戦略だ。

 ウイグルの人権抑圧や、香港の民主派弾圧には、前政権よりも敏感に反応するだろう。台湾への助力も惜しむまい。コロナ禍を機に欧州諸国も、中国不信を強め、監視国家化を危険視している。

 「ファーウェイ制裁」の先例がある。先端技術、とりわけデジタル技術面での対中包囲網が、米国主導で強化されるかもしれない。

 中国が、これら3つの壁を克服できないと、中所得国のワナにはまり、「未富先老」(豊かになる前に高齢化する)の憂き目をみる。労働力減を補い、不動産依存を脱し、米国の制裁に対抗するには、生産性を高めるイノベーション(技術革新)しかない。14次計画は、研究開発(R&D)費を、年平均7%以上増やすとしている。

 実は、中国が中所得国のワナを避け「現代的で調和がとれ創造的な高所得国」になる道を示した指南書が存在する。世界銀行と中国・国務院発展研究センターが共同でまとめた「2030年の中国」リポートで、12年2月に出た。

 リポートは、民間企業に比べ採算性でも生産性でも劣る国有企業の役割見直しを提言した。国有企業による独占排除、民間企業の参入障壁引き下げ、金利自由化など、市場経済化の徹底を求める一方、政府は、無駄なく、クリーン、透明、高効率にして、法の支配の下で運営せよと。

 だが、同じ12年の秋に発足した習近平政権は、同リポートを無視した。というより逆を行った。国有企業を「強く、より良く、大きく」する方針を明確にする一方、民間企業に社内共産党委員会の設置を促す。最近目につくのは、国有企業が民間上場企業を傘下にする動きだ。

 イノベーションの担い手として国有企業が適任かどうか。創意工夫に富む民間起業家の出番ではないのか。だが、現政権の起業家への眼差しは、アリババ創業者のジャック・マー(馬雲)への仕打ちを見れば明らかだ。

 中国経済の持続的成長に立ちはだかる最大の壁は、ひたすら独裁政権の長期化を目指し、民間へのグリップを強める「習近平の壁」かもしれない。

土谷 英夫 (ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)

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土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)
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