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G7が呼び覚ます「北京の55日」ー危うい国恥と滅洋の記憶

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【けいざい温故知新】1900年の欧米日8か国の北京占領をG7に重ねる中国メディア論調

公開日: 2021/06/07 (ワールド)

1900年北京占領の8か国軍兵士=PD 1900年北京占領の8か国軍兵士=PD

土谷 英夫 (ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)

 英国コーンウォールで11日から開くG7(主要7カ国)首脳会議に、中国が警戒感を高めている。先月ロンドンで開いた前座の外相会談の際には、清朝末の「義和団の乱」(北清事変)で北京に進駐した8カ国連合軍を、G7に見立てたパロディー写真が中国メディアに登場した。

 中国の風刺画家がSNS「微博」に投稿したのは、外相らの集合写真を、背景はそのままに各国の軍服姿の連合軍兵士に差し替えたCG画像。官製メディアも取り上げた。

 時は1900年。拳法の修行者らが山東省で始めた宗教的秘密結社「義和団」が、中国に進出する西洋列強を敵視し、「扶清滅洋」=清を扶(たす)け外国勢力を滅ぼす=を掲げて同調者を糾合し、大挙して北京に押し寄せた。その勢いに乗じた清朝が、列強に宣戦布告する。

 北京駐在の欧米日の外交官・居留民らは公使館地区に立て籠り、少ない兵力で清朝軍と義和団相手に防戦した。籠城戦を描いたハリウッド映画「北京の55日」(63年公開)は、8カ国連合軍が駆けつけ包囲を破り、籠城組を解放して終わる。

 中国の「国恥」は、そこからだ。西太后と光緒帝が脱出した首都を、8カ国連合軍が占領。巨額の賠償金と、北京やその他拠点への列強軍隊の常駐を清朝に飲ませたのが、1901年9月7日調印の「北京議定書」(辛丑条約)だった。

 議定書締結の古写真を、3月の米中外交トップのアラスカ会談の直後に人民日報が「微博」に上げた。楊潔篪(よう・けっち)中国国務委員が、ブリンケン米国務長官と激しく渡り合った米中会談の写真と並べて。今年は、議定書が結ばれた辛丑(かのとうし)年から干支が2巡した120年目の辛丑。列強の言いなりだった120年前の中国とは違うぞ、というアピールだ。

 米バイデン政権は、中国を体制間競争の相手と名指しし、同盟国も引き込んで対峙する構えだ。トランプ政権時は、米国と一線を画した欧州勢も同調しつつある。

 昨年末、EU(欧州連合)と中国が合意した投資協定も、EU議会が圧倒的多数で批准を棚上げにした。先月、フランス陸海軍が日米と共同訓練を実施し、英国の新鋭空母クイーン・エリザベスの空母打撃群が、インド太平洋に向け訓練航海中だ。ドイツも艦艇の東方派遣を予定する。

 8カ国連合軍の6カ国までが、当時、英連邦自治領だったカナダを除くG7メンバー(英米仏独伊日)と重なる。2年ぶりの対面サミットになるコーンウォール会合には、インド、オーストラリア、韓国の首脳らも招かれ、日米豪印の「クアッド」もそろう。

 招かれざる陰の主役の中国は「国恥」の記憶を刺激され、神経を尖らせる。

 バイデン大統領は、新型コロナウイルス発生源の再調査を情報機関に命じ、中国への不信をあからさまにした。新疆ウイグル族への人権侵害、香港の民主化圧殺、さらには台湾への武力行使の可能性も浮上し、G7側は民主主義の存立が危うくなる「滅洋」の不安がぬぐえない。

 中国の国恥の記憶と、西側の滅洋への不安が相乗効果でエスカレートすれば、不測の事態も起きかねない。

 中国のナショナリズムが高じて、現地で活動する西側企業が、9年前の尖閣騒動時の日系企業のようにデモ隊に襲われるような事態や、南シナ海や東シナ海で偶発的な衝突などが起きないとも限らない。

 「世界の工場」中国との全面対決は、世界経済にもG7にも悲惨な結果を招く。コーンウォールでは、対中国で結束を固める一方で、中国との対立をいかに管理するか、の冷静な議論も要る。譲れないのは、妥協できるのは、協力すべきは、何なのか。

 来年以降のG7は、中国をゲストに戦略対話のセッションを設けるのも一案かもしれない。
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土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)
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