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中国「2人っ子政策」空振り 「未富先老」に現実味

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【けいざい温故知新】20年の新生児が前年比15%減に

公開日: 2021/02/15 (ワールド)

Reuters Reuters

土谷 英夫 (ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)

 毛沢東は「人口は多ければ多いほど良い」と出産を奨励した。その毛をあがめる習近平政権下で、少子化が止まらない。昨年、中国の新生児は戸籍登録ベースで前年より15%減った。

 5年前「1人っ子政策」を止め「2人っ子政策」に転じたのに、歯止めにならず空振りだった。豊かになる前に老いる「未富先老」のリスクが高まっている。

 「夫婦1組に子供2人」の2人っ子を推奨した先駆者がいる。北京大学学長だった経済学者・馬寅初(マー・インチュ)。ただし、出生を増やすのではなく、抑えるためで、1957年に人民日報に「新人口論」として提言した。

 49年に中華人民共和国が発足して、ベビーブームが起きた。人口爆発を懸念した馬は、産児制限の必要性を説いたのだが、毛の意をくむ左派に「マルサス主義者」と批判され、60年に学長辞任に追い込まれた。

 第1波の出産ブームは、毛の「大躍進」政策の失敗で、飢餓に陥り、断絶する。59~61年の3年間は、死亡率が急上昇、出生率が急落して、人口が停滞した。

 飢餓を脱した62年から約10年間が、第2波のベビーブーム期だった。産児制限政策の導入でブレーキがかかり、79年から、強制力を持つ「1人っ子政策」が36年間続いた。

 「2人っ子政策」への移行は16年。初年度こそ出生数が微増したものの、翌年から減り続け、19年には16年より320万人も少ない1465万人と、飢餓期以来58年ぶりに1500万人の大台を割った。

 国家統計局の20年の人口推計は未発表だが、公安省が先週発表した戸籍登録ベースで、新生児は前年比15%減。新型コロナの影響を割り引いても、減少基調は鮮明だ。

 政府系のシンクタンクの社会科学院は2年前、総人口が27年にも減り始める、との予測を出したが、前提になる「合計特殊出生率」(1人の女性が生涯に産む子供の数)を、1.6人と甘めにみていた。

 米ウィスコンシン大学の易富賢(イー・フーシェン)研究員と北京大学の蘇剣(スー・ジエン)教授は、人口統計が水増しされていて、すでに18年から総人口が減り始めた、と主張する。

 公式統計では、19年に14億人に達した総人口だが、易氏らが正しければ「14憶人」は幻となる。中国の人口危機は、これからが本番だ。62年からの第2波ベビーブームで生まれた中国版・団塊の世代が、退職期を迎える。

 中国の定年は、男が60歳、女が50歳か55歳が一般的。蘇教授は、62年生まれが60歳になる22年以降の約15年間、労働力は毎年1000万人ペースで減るという。

 一国の経済成長率は、労働投入、資本投入、全要素生産性(TFP)で規定される。中国は近年、資本投入(固定資本投資)を懸命に増やして成長を支えてきたが、有望な投資には限りがあり、TFPの低迷も指摘される。

 労働投入が長期的にマイナスになれば、低成長は避けがたい。中国の1人当たりGDPは19年に1万ドルを超えたが、李克強首相は「月収が1000元(1.6万円)以下の人たちが6億人いる」と明かした。家計債務も増え、残高のGDP比は欧州諸国や日本並みだ。

 年金の持続性にも不安があり、黒竜江省などで年金積立金が底をついた。豊かになる前に老いる「未富先老」の懸念が、現実味を増しつつある。

 夫婦が持てる子供の数をいまの2人から青天井にしても、住宅や教育費の負担が重荷になる以上、出生増につながる保証はない。労働力確保や年金財政を考慮して、定年=年金給付年齢の引き上げも検討課題だが、国民の理解を得るのは簡単ではない。

 コロナ下の「1人勝ち」と囃される中国経済だが、人口に焦点を合わせると、暗いトンネルが口を開けている。
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土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)
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