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新型コロナで亀裂深まる欧州連合 自国優先が露わに

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【ウィーンから】コロナ対策財源でEU共通債もくろむが独など反対

公開日: 2020/04/20 (ワールド)

CC BY CC BY /dullhunk

茶野 道夫 (ウィーン在住コンサルタント)

 例年、復活祭の日曜日の昼、ローマ法王は聖ペテロ広場を埋めつくす大勢の信者に向かって復活祭のメッセージを送るが、今年はコロナウイルスの感染を防ぐため信者のバチカン訪問は禁じられた。代わりにネットを通して行われたあいさつで、ローマ法王はコロナウイルスと闘うためにEU諸国が連帯を強化することを訴えた。

 EUは20世紀に繰り広げられた二つの大戦を顧みて、再び欧州諸国が不毛な戦いに巻き込まれないよう、欧州諸国の連帯と協調を促進するため結成された。ところが今回のコロナウイルスの騒ぎで、EU諸国は自国の利益を優先し、このため各国のエゴが剥き出しとなった。

 EU諸国の多くはシェンゲン条約に調印しており、各国間の国境は普段は開放されているが、コロナウイルスの感染を防ぐため次々と国境が閉じられた。またドイツやフランスなどは、不足する恐れのある医療物資の輸出を禁止し、近隣諸国への搬出をストップした。

 この措置のあおりを食って、イタリアがひどい目にあった。同国北部でコロナウイルスの多くの感染者が出たイタリアでは、重症に陥った感染者の治療に必要な人工呼吸器が、まったく足らなくなった。

 ドイツには世界的な人工呼吸器メーカーがあるため、イタリアはドイツから人工呼吸器を緊急輸入しようとしたが、人工呼吸器の輸出がドイツにより一方的に禁止されたため輸入できず、多くの死者が出ることとなった。窮地に陥ったイタリアに大量の医療物資を援助したのは、EU域外の中国やロシアであった、こうしたことから多くのイタリア国民にEUに対する不信感が広がった。

 イタリアは、スペインとともに欧州でコロナウイルスの被害を最も受けている国である。被害の中心は北イタリアで、この地域はイタリア経済の大黒柱となっている。日本でいうと、首都圏や東海地方のような地域と言える。

 この地域の経済が、ロックダウンにより機能停止に陥っている。たとえて言うと、東京湾から名古屋にかけての地域が大津波に襲われたようなものである。イタリアにとって、コロナ後の経済復興は大変な課題である。

 コロナショックで経済に被害を被るのは、イタリアのみならずすべてのユーロ加盟国である。IMFはユーロ圏の今年のGDPは7.5%減となると見ている。したがってすべての加盟国が共同して債券を発行して復興資金を調達すべきだとの考えがイタリアにはある。

 イタリアは、ユーロ圏共同債の発行を、フランスのマクロン大統領の賛同も得て、フランス、スペインともにユーロ圏の財務相会合―ユーログループに提案した。共同債の発行には、経済のしっかりした国が、弱い国を保証をすることになるとの理由で、ドイツ・オランダ・オーストリアなどが反対で、これまで議論が真剣に行われてこなかった。

 今回の南欧諸国の共同提案に対して、ドイツは既存のEMSなどの融資制度の活用を優先すべきと逆提案した。EMSは、ユーロ危機の際にできた制度で、加盟国がその資金を活用するときに、財政政策などにつき厳しい条件が付く。

 このため、イタリアではこの制度そのものに反対する声が強い。このドイツの逆提案をオランダなどが賛成し、イタリアはこれにあくまでも反対したものの、コロナ対策に活用する限り厳しい条件は付けないという妥協案が成立し、イタリアなどが主張している共同債の発行についてはユーログループ会合では結論が出ず、議論が先送りされることになった。

 最近の世論調査によると、イタリア国民の8割がEU加盟国であることに疑問を抱いているとのことである。イタリアはEU創設国のひとつで、これまで親EUの傾向の強い国だったが、最近になって、難民の処理をイタリアに押し付けるEUの政策に反発して、反EUの政党が力をつけてきている。

 今回のコロナ危機で、EU加盟国が、自国の利益を優先し、EUの連帯をないがしろにする実態が明らかになったため、EUに疑問を持つ国民が増えたものと思われる。

 今後のEUやドイツの出方次第では、反EU政党にあおられて、イタリアがEU離脱に向かう可能性も否定できない。万が一、EUが英国に続いてイタリアを失うことがあれば、EUそのものの存続も危うくなろう。

 早めに外出禁止令などを出したオーストリアやデンマークが隣国に先駆けて、店舗や学校の再開を始めている。EUはコロナ危機当初に起きたような混乱を避けるため、正常化実施のためのガイドラインを定めようとしている。EUは、加盟国がばらばらの政策をとることを防ぎ、今度はうまく調整できるか、その真価を問われている。
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茶野 道夫(ウィーン在住コンサルタント)
日系金融機関のウイーン駐在代表を定年退職後、不動産投資コンサルタント。日系金融機関のウイーン駐在代表をつとめた後、定年退職。ウイーンで、不動産投資コンサルタント。英、独、仏、西、伊、露語に通じ、在欧経験は30年を超えた。英国、スペインにも勤務。
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