「韓国のドゥテルテ」というニックネームを持っている李在明(イ·ジェミョン)京畿道(キョンギド)知事が、2年以上続いた「公職選挙法違反」裁判で最高裁判所から無罪にあたる破棄·差し戻しを取り付けた。これで李在明氏は有力な次期大統領候補として急浮上し、本格的な大統領選レースに加わった。
最近行われた大統領候補の支持率調査では、先頭の李洛淵(イ·ナクヨン)議員を誤差範囲内で追い上げている。
2018年、京畿道知事選挙当時、「正しい未来党」は、李在明・当時京畿道知事候補が実兄を精神病院に強制入院しようとしたという疑惑を提起した。李氏が城南市長在任中の2012年4-8月、保健所長や精神科専門医などに実兄の故イ·ジェソン氏に対する精神病院への強制入院を指示し、文書作成、公文書起案などを指示したとして、職権乱用の疑いで検察は起訴したのだ。
これと関連して、李氏は選挙を控えて行われたテレビ討論会などで、「兄の強制入院に全く関与していない」「(強制入院)手続きの進行を阻止した」という趣旨の発言をしたが、これについても虚偽事実の公表容疑で検察に追加起訴された。
李氏の容疑に対して、1審裁判部は、李氏が兄のジェソン氏の躁うつ病の評価文書の修正を指示した点、ジェソン氏の診断および保護申請関連の公文作成を指示した点、車を使って入院診断を指示した点などは職権乱用として認められない、あるいは職権行使と因果関係がないと判断し、いずれも「無罪」を言い渡した。
しかし、2審ではテレビ討論会での発言が「有権者の公正な判断を誤るほど、反対事実を陳述したものであり、歪曲させたものだ」とし、虚偽事実の公表に対しては、「300万ウォンの罰金」刑を科した。
2020年10月16日、最高裁判所の全員合議体判決では、2審の判決が再度覆された。最高裁は2審判決に対し、「選挙の公正性を大きく害しない限り、選挙運動の自由を最大限保障しなければならない。制限する場合も必要最小限にとどめなければならず、本質的な内容を侵害してはならない」とし、差し戻しを決定した。
2審判決がそのまま認められれば、当選無効はもちろん、5年間の被選挙権の剥奪の危機に直面した李氏は、最高裁判所の判決で大統領候補として起死回生した。
最高裁の無罪判断について、一部では、「選挙運動やテレビ討論会で嘘をついても問題にならないのか」という批判が提起されるなど、議論を呼んでいる。しかし、李氏はこの判決で崖っぷちから脱出し、大統領になるという夢を再び実現できる機会を得た。
李在明京畿道知事は1963年、慶尚北道安東(キョンサンプクト·アンドン)で、5男4女のうち、7番目の子として生まれた。貧農に賭博師の父親を持つ貧しい家庭事情のため、小学校を卒業して工場を転々としながら家計を助けた。少年工時代にはプレス機械に左腕が挟まれる事故に遭い、作業班長の殴打で耳を負傷して難聴に苦しむなどあらゆる障害を受けたが、一切補償も受けられなかったという。
厳しい工場生活から来るうつ病によって自殺を図ったことも何度かあったが、弁護士になりたいという一念で勉強に没頭し、検定試験を通じて中央大学法学部に入学した。全額奨学金を受けて大学生活を始めた彼は、1986年に司法試験に合格する。 研修院時代に盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領の講義に感銘を受け、人権弁護士の道を選択したという。
その後、京畿道城南市を基盤に市民運動と人権弁護士活動を続け、2010年に城南市長に当選し、政治家としての人生が始まった。2期連続で城南市長を務めた後、2018年には京畿道知事に当選し、一気に与党の大統領候補に浮上する。
共に民主党のいかなる派閥にも属さない李氏の最大の政治的資産は、ブルドーザーのような推進力と、これに対する有権者の支持だ。2010年、城南市長に当選した直後にはモラトリアムを宣言し、市財政の健全化に取り掛かり、3年で目標を達成した。 一方で公務員の不正腐敗を根絶すると宣言し、高層階にある市長室を2階へ移動し、市長室には自らCCTVを設置した。
「無償福祉」は李氏の最も代表的な政策法案だ。城南市長時代には、3年以上城南市に居住している青年(19~24歳)を対象に年100万ウォンを支給する「青年配当」、中学校新入生に制服費を支援する「無償制服支援」、1年以上居住した親に出産後に50万ウォンを支給する「無償産後ケア支援」などの福祉政策を施行したことはあまりにも有名だ。
京畿道知事としては、コロナ感染拡散に対して積極的な対応で支持率が急上昇した。特に警察を動員して京畿道内の新天地教会本部を奇襲し、信徒と教会の名簿を得た手柄は、韓国国民から大きな拍手を受けた。
最近では、北朝鮮へのビラ散布に対して、特別司法警察を動員して取り締まると宣言したが、これに対しても多くの韓国人が支持を送っている。ただし、必要に応じては手段と方法を選ばず、法制度の限界を超えるなどの超法的な行為に対する批判や拒否感も少なくない。
外交問題においては、文政権と同じ路線を保っている。特に日本に対しては、強硬な態度と発言が目立つ。2016年のGSOMIA(日韓軍事情報保護協定)の締結直後には、日本は軍事的に敵性国家だと主張した。
「軍事的な側面から見ると、依然として日本は敵性国家であり、日本が軍事大国化する場合、真っ先に攻撃の対象になるのは韓半島(朝鮮半島)だ」
「そのような日本に軍事情報を提供し、日本軍隊を公認する軍事協定とは。。。どうしても朴槿恵(パク・クネ)は、父親の祖国である日本のために死ぬ覚悟をしたようだ」
2019年8月の日本軍慰安婦被害者記念日行事では、「日本が再び経済侵略を始めた。(日本は)機会と力量さえあれば軍事的な侵略も厭わない集団と考えられる」と発言した。
違法なら法を作ってでも推進するほどの強い行動力、支持者をすっきりさせる扇動的な発言、自らの辛い経験から作られた数々の無償福祉政策などで、韓国国民から大きな人気を得ている李在明京畿道知事。李知事の生還によって、大統領選挙を2年後に控えて「李洛淵 待望論」が大きく揺れている。