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(質問)欧州の最終的な目標は、ロシアからのガス購入を完全に止めることか?

『Novaya Gazeta Europe』HPの記事
(質問)欧州において、LNG輸入増とガス代替策を講じたことが功を奏したということか?
(ピキン)その通り。それらの努力は、少なくともLNGの生産が新しく始められる2025年まで続けられる必要がある。LNGの世界的な供給能力は、その時までには増大するだろう。従って、大まかに言って、2023~4年と2024~5年の2つの冬をヨーロッパ人はうまく乗り切る必要がある。その後の状況はよくなる。その頃には必要なガスの供給源を見つけられるので、2027年には欧州にとりガスの需給状況はかなり改善する筈だ。
(質問)欧州はいずれは完全にLNGに切り替えるのだろうか?
(ピキン)欧州はノルウェーとアルジェリアからはパイプラインでガスを調達しているので、LNGが全てになるわけではない。欧州内で自らガスも生産している。しかし、失われたロシアからガス輸入分は、LNGに完全に置き換えられる。
(質問)トルコとロシアは、欧州のための新しいガス・ハブについて話し合っている。対ロシア制裁が実施されている中で、その構想はどのように機能することになるのか? そして主な受益者は誰になるのか?
(ピキン)「トルコとロシアは、欧州のための・・・」との貴方の表現は、素晴らしいと思う。しかしトルコとロシアだけが話し合っても十分ではなく、欧州も参加することが必要だ。だが、これ迄のところ、このハブからガス供給を受ける話し合いに、欧州からは誰も参加していない。私は、このことについて話し合う準備ができている人は欧州には誰もいないと感じている。このプロジェクトはおそらく“死産”に終わるだろう。このカードは政治的に使われている。それはエルドアン大統領とのある種の政治交渉でもある。彼はガス価格の値下げも求めている。つまり、この話は、エルドアンが値下げを強く求め、他方ロシアにとっては他の地政学的問題でエルドアンと更に関係を強化する方法なのだと私は推測している。プロジェクト自体は口実にすぎないのだ。
(質問)今後10年でロシアのガス輸出はどのように変化するか?
(ピキン)10年後、ロシアに残された輸出先は中国市場だけになるだろう。他方、ロシアの国内市場でも、ガス・インフラの拡張や国内消費の増加など、ある程度活発な発展が見られるだろう。
欧州市場はもはやロシアにとってものではなく、ロシアはその状況に対処しないといけない。もちろん、ロシアが中国市場に輸出するガスの量は、欧州市場に輸出してきたガスの量とは比べものにならない。ロシアは欧州向け輸出を増やすために半世紀以上を費やしてきた。それがこのように終わったのは残念だ。ソ連邦はかつてガス・パイプラインのために“戦い”、制裁に反対し、1970年代に様々な取り決めを作ってきた。ソ連邦は冷戦にもかかわらず欧州市場を維持することに成功してきた。しかしロシアはそれができなかった。
(質問)このようなエネルギーでの衝突は、ロシアの予算と経済にどのように影響するのか?
(ピキン)制裁は確かにロシアに大きな打撃を与え、今後も大きな打撃を与え続けるだろう。エネルギー価格が高かったので、2022年はロシアは多かれ少なかれうまく生き延びることができた。供給量でも、2021年の水準を維持できた。金額で言えば、ロシアは2021年に比べて2022年は石油売り上げ額で10%増となる見込みである。
石炭とガスについても同じようにうまくいくと思う。2022年前半、ロシアはガスを能力いっぱいにフル生産して輸出し、かつとても高い価格で輸出できた。ガス価格は、2021年に比べて2022年上半期に、3倍になった。2022年の後半は明らかに悲惨な状況であったが、前半良かったおかげで、一年を通して多かれ少なかれ大丈夫であった。
ロシアはもはや欧州にはガスを供給しなくなり、また石油は全て東南アジアとインド、そしておそらくアフリカと中東に輸出することになるだろう。ドルジュバ・パイプライン(ロシア、カザフスタンからウクライナ、東欧諸国、ドイツにつながる世界最長の石油パイプライン)は残っており、制裁の対象ではなく、将来の石油供給に使用されるかもしれない。
同時に、エネルギー需給の不均衡は2021年に始まっており、また制裁政策により、欧州諸国が被った損失は1兆ユーロにものぼる。2023年も良くなることはない。様々な見積もりによると、2022年から2023年にかけて、エネルギー危機による欧州諸国の損失は最低5,000億ユーロ、多ければ1.6兆ユーロにのぼるだろう。
2022年12月21日発表(翻訳:村木洸太郎)
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