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ウクライナ戦争の陰で、中央アジア各国で大規模衝突が多発

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【ノーベル賞の『ノーヴァヤ・ガゼータから』(12)】ソ連を知る65歳超の支配層VS30歳未満の国民大半に断絶

公開日: 2023/01/23 (ワールド)

Novaya gazeta Europeから Novaya gazeta Europeから

村木 洸太郎 (翻訳者)

 政治学者のテムール・ウマロフによる中央アジア情勢分析を抄訳して掲載する。今回はその2回目で、中央アジア各国で若者、少数民族が不満を募らせ、当局との衝突、弾圧と多くの死者が出る事態が起きていると説明する。

 2022年1月、カザフスタンで大規模な反政府抗議活動があり、その鎮圧のため、ロシア軍を中心とする集団安全保障条約機構の部隊がカザフスタンに派遣された。(集団安全保障機構は、ロシア、カザフスタン以外にベラルーシ、アルメニア、キルギス、タジキスタンが加盟する軍事同盟。)

 このような不安定な状況と流血の事態は、他の中央アジア諸国でも見られるという。

 ウマロフは、中央アジア出身、カーネギー財団学術コンサルタント。聞き手は『ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』のイリーナ・トゥマコワ。

********************************

原文(ロシア語)。
URLをクリックするとサイトに移ります。
https://novayagazeta.eu/articles/2023/01/03/rossiia-nikogda-ne-byla-tak-uiazvima-pered-stranami-tsentralnoi-azii

 

(質問)旧ソ連の国々、特に中央アジアでは2022年は様々な問題に揺さぶられた。なぜ2022年に特に問題が激化したのか?

(ウマロフ)確かに、2022年には、各国で色々な問題が激化し、悪化した。

 2022年1月のカザフスタンでの抗議は、かつてないほどの大規模なものだった。

 しかしキルギスではもっと多くの抗議活動が行なわれた。

 タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンでも国内で抗議行動があったが、これらの諸国は閉鎖的で、メディアがアクセスできず、状況の詳細が分らない。

(質問)ロシアも含め、ソ連崩壊後の各国で同じようなことが起きていると言えるか?

(ウマロフ)これら権威主義体制の諸国は、共通の過去を持つ。他方、お互いに学んでもいる。たとえば、ロシアの外国エージェントに関する法は、カザフスタンのNGOへの外国からの資金提供に対する規制に相応している。プーチンの大統領任期延長は、ウズベキスタンのカリモフ大統領が死ぬまで権力を維持したのと同じだ。

 各国はお互いを見て、体制安定化に役立つと思えば、そのやり方を真似る。

(質問)カザフスタンの問題と不安定化は、中央アジア全体に共通するのか?

(ウマロフ)中央アジア諸国はそれぞれ事情が異なり、国民の不満の理由も異なる。

 しかし共通点は、政治エリートと庶民の間のギャップが拡大していることだ。

 中央アジアには、独立後に生まれ育った政治的に活発なグループがある。彼らは主要な労働者、納税者になった。

(質問)当局が暴発する危険があると見なしている若者のことか?

(ウマロフ)その通り。中央アジア諸国の国民の大半が30歳未満である。つまりこれら諸国は若者の国なのだ。

 この世代は最早ソ連邦を覚えておらず、間接的な情報だけでソ連邦を知っている。彼らは支配層とは根本的に異なる。支配層とは、ソ連時代を知っている65歳超の人々である。

 若者は変革を容易に受け入れたが、支配層にとりそれは容易ではない。支配者と被支配者の間の世界観は引き裂かれつつある。

 すべての中央アジア諸国でこのことが言える。

(質問)ソ連の教科書ならば、それは革命的な状況と呼ぶだろう。

(ウマロフ)中央アジアでも、技術の発展もあり全てが透明になり、人々はエリートの有様が分るようになった。更にSNSで不平を言える。SNSは、抗議活動に役だっている。

 反対政党の指導者がいなくても、人々は抗議に出ていく。たった一つのFacebookの投稿だけで、抗議者が街頭に繰り出す。

 これが中央アジア諸国で見られる不安定化の状況だ。

 不安定化には他の事情もある。

 カザフスタンでは、2019年にナザルバエフ大統領が権力の移行を発表した。それ以来、人々は変化を待っていた。(訳注:ナザルバエフ大統領は2019年3月に辞任し、トカエフが大統領となった。)しかし変化はなかった。1年待ち、2年待った。人々はうんざりした。

 2022年初め、社会の緊張は、人々に実力で変化を求めることを決心させるほどのレベルに達した。

 きっかけは、ガス価格高騰と人々の耐えられない借金だった。

 借金は、カザフスタンで非常に大きな問題だ。政府に近い人々により運営されている強力な銀行ロビーがある。彼らは破産法の採択を、もう8年も認めていない。人々は高すぎる借金から保護されておらず、銀行はその状況を利用している。その結果、カザフスタンの労働者の3分の1は借金返済が滞っている状況にあり、大きなストレスにさらされている。

 自殺が増加している。カザフスタンでの男性自殺者数は、ユーラシア地域の中でとても多い。

 ガス価格上昇も人々、特にカザフスタン西部の住民にとり大問題である。

 そのような状況下で、人々は極端なやり方で正義を求めた。

 一部の政治エリートは、この状況を利用しようとした。トカエフを解任するか、もしそれができないのならば、少なくともトカエフを貶めようとした。更に大統領の後継者選びについて、ナザルバエフに再考させようとした。

(質問)トカエフを排除するためのクーデターの試みがあったということか? そのことと人々の抗議は、どう関係するのか?

(ウマロフ)国民の不満がなければ、クーデターを試みることは不可能だった。

(質問)他の中央アジア諸国の生活水準はカザフスタンよりも更に低い。そこでは何が起きているのか?

(ウマロフ)中央アジア諸国すべてで、大規模な抗議行動が起きた。

 タジキスタン東部のゴルノ・バダフシャン自治州(パミール高原にある)では、人々が、国の社会システムから切り離されていると感じていた。

 この地域は住民も少なく、パミール人が住んでいる。山岳地帯で、交通インフラ面で、同地域に行くことも難しい。首都ドシャンベとはたった一本の道路で結ばれているが、冬季は雪のためにアクセスできなくなる。

 中央政府は現地の実力者が強くなりすぎないように圧力をかけ、それに対して地元住民が中央政府に対して抗議を始めた。

(質問)タジキスタンではドラマがあったと聞いている。検察官が地元住民の女性に嫌がらせをし、その女性の兄弟が検察官を散々殴り、しかしその兄弟は治安当局に殺された。

(ウマロフ)その通り。抗議の直接の理由は、日常のもめ事だったが、その根はもっと深い。

 ウズベキスタンでも似た状況があり、大規模な抗議行動が起きた(訳注:2022年7月)。カラカルパクスタン自治共和国は、タジキスタンのゴルノ・バダフシャン自治州と同様、国内の他の地域よりも生活が悪く、民族と言語が異なるため、不当に扱われていると感じた。

 世帯の30%に水道がないなど、基本的なインフラがない。不満は長年蓄積されていた。

 ウズベキスタン中央政府は憲法の改正を提案したが、カラカルパクスタンの自治に関する条項はなかった。そして、そのことが不満の爆発を招いた。

 ウズベキスタン当局は抗議を厳しく弾圧した。弾圧で殺された正確な人数はわからない。公式統計は数十人、未確認情報で数百人だ。抗議の“首謀者”の裁判は継続中だが、憲法秩序破壊の試みのために長期間の懲役となるだろう。逮捕者には、著名なカラカルパクスタンのジャーナリスト、法律家、弁護士などもいる。

2023年1月3日発表(翻訳:村木洸太郎)
©Novaya gaeta Europe(無断転載を禁じる)

(訳注:『Novaya gazeta』はロシア国内で活動できないが、一部のスタッフがラトビア共和国に移り、『Novaya gazeta Europe』を運営している。2つの組織は別個のものだが、独立報道機関としての前者の精神を後者が引き継いでいる。)
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