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100人以上の死者を出したタジキスタン・キルギス武力衝突の真相

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【ノーベル賞の『ノーヴァヤ・ガゼータから』(13)】プーチンをまねて、ナショナリズムを煽る中央アジアの指導者達

公開日: 2023/01/30 (ワールド)

【ノーベル賞の『ノーヴァヤ・ガゼータから』(13)】プーチンをまねて、ナショナリズムを煽る中央アジアの指導者達

村木 洸太郎 (翻訳者)

 2022年9月、タジキスタン軍とキルギス軍の衝突で、両軍あわせて100人もの死者がでた。  
 2021年にも衝突があり、両軍合わせて少なくとも39人の死者が出た。

 この衝突の真相を政治学者のテムール・ウマロフが解説する。

 衝突の原因として、ソ連時代に設定された境界線の問題、各国指導者がプーチンをまねてナショナリズムを煽っているとウマロフは指摘する。

 ウマロフは、中央アジア出身、カーネギー財団学術コンサルタント。聞き手は『ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』のイリーナ・トゥマコワ。

 今回は、ウマロフによる中央アジア情勢分析の抄訳の3回目である。

********************************

原文(ロシア語)。
URLをクリックするとサイトに移ります。
https://novayagazeta.eu/articles/2023/01/03/rossiia-nikogda-ne-byla-tak-uiazvima-pered-stranami-tsentralnoi-azii

(質問)中央アジアで2022年は様々な紛争に揺さぶられた。なぜ2022年に紛争が激しくなったのか?
(ウマロフ)タジキスタンとキルギスの国境では、過去30回も衝突が起きていた。多くの場合、国境地帯での地元住民間で何か問題が起き、一方から他方に石を投げたりし、次に国境警備隊が介入し、武力紛争にエスカレートしていった。

(質問)隣人を攻撃することの意味は何か?
(ウマロフ)この両国が武力衝突を正当化するプロパガンダは、ロシアがウクライナでの行動を正当化したやり方と非常に似ていた。
 タジキスタン側は、キルギスが国境地域で同胞のタジク人をひどく扱ったので、自分達と同胞を守らなければならないと主張した。ロシアと同様のナショナリズムによる説明だ。
 キルギス側は、独裁政権が民主主義に対して戦争を起こしたと説明した。キルギスはウクライナとは異なり、民主主義と呼ぶのは非常に難しいのだが。

(質問)タジキスタンと比べれば、キルギスは民主主義のように見えるが。
(ウマロフ)確かに、タジキスタンと比較すれば、多くの政権が民主主義のように見える。

(質問)ソ連時代に、中央アジアの共和国の間の境界は「紛争が発生しやすいように」描かれたと言われている。そのことが100年後の今日にも影響を与えているのか?
(ウマロフ)ソ連時代に、境界線が故意に「紛争が発生しやすいように」描かれたということはない。
 むしろ境界線は、どの共和国にもソ連邦からの分離主義的感情が生まれないようにと描かれた。
 たとえばウズベキスタンの一部に、ペルシャ語系統の言葉を話す人々が住むサマルカンドとブハラ、そして民族的および言語的に異なるカラカルパクスタン共和国をあえて含めた。
 パミールはタジキスタンの一部となった。
 オシはキルギスの一部になったが、ソ連時代のオシにはキルギス人よりも多くのウズベキスタン人が住んでいた。
(訳注:このようにして、一つの共和国に複数の民族が共存することで、一つの民族だけで結束して、ソ連邦から独立したいと思わないように仕組んだとの趣旨。)

 しかし、ソ連邦解体後各共和国が独立して、これらの境界が国境になったとき、紛争が起こり始め、それが今日の問題につながっている。

(質問)トルクメニスタンを除くすべての共和国は、隣国の民族が住む飛び地を国内に抱えている。そのため、隣国の飛び地に介入しようとする動きがでてくる。
(ウマロフ)その通り。そして今日、正にそのような飛び地をめぐって対立が生じている。
 特にフェルガナ盆地は、その問題が集中している。
 フェルガナ盆地はウズベキスタン、キルギス、タジキスタンに分けられている。つまり紛争当事国は3つある。
 しかも、これらの国は、隣国の領土内に飛び地の領土を持っている。
 更に、人口密度は中央アジアの中で最も高い。                         
 その土地の人々は主に農業に依存しているが、同地域は乾燥しており、住民皆のニーズを満たせるだけの水資源がない。

(質問)なぜ2022年秋にタジキスタンとキルギスの間の紛争がエスカレートし、ほとんど戦争状態になったのか?
(ウマロフ)両国の国境にある村や集落は入り組んでおり、誰がどちら側に住んでいるのか明確ではない。民族的にどちらかが多数を占めている地域はあるが、これも入り混ざっている。
 誰かが土地を占拠し、他者に水へのアクセスを認めなかったため、紛争が起きてきた。人々は石を投げ始め、闘いに発展し、軍が介入せざるを得なくなる。過去の紛争はこのようにまず住民間の衝突があった。
 しかし2021年4月~5月と2022年9月の紛争は、住民間の衝突がなく、いきなり両国の国境警備軍の間の銃撃戦で始まった。その点で以前とは異なる。

(質問)誰かが軍隊に出動命令を出したということか?
(ウマロフ)もちろん。国境地帯での重火器使用は、中央からの指示による。
 2021年春の紛争の経緯は次の通りだ。キルギスは、タジキスタンの飛び地であるヴォロフについて交渉しようとした。キルギス側は、ヴォルフとタジキスタンとの主要領土を結ぶ道路をタジキスタンの管理下にすることを提案した。
 道はそれほど長くはないが、タジク人にとって非常に重要だ。
 キルギスの国家安全保安委員会委員長のカムチベク・タシエフは、それを飛び地の端の領土と交換することを提案した。
 タジキスタンは、これに非常に激しく反応し、ラフモン・タジキスタン大統領はヘリコプターでヴォルフに飛び、「私たちのヴォルフ」、「土地の1インチも渡さない」と非常にナショナリスト的なレトリックで住民に話しかけた。
 その後、キルギスは国境で武器を使った演習を行った。2021年4月、国境で衝突が発生した。初めて重火器も使われた。タジキスタンでは、多くのナショナリスティクなレトリックが登場し、「私たちのヴォルフ」と書かれた写真がSNSに現われた。

(質問)そのようなことは今後も繰り返されるのか?
(ウマロフ)おそらく繰り返されるだろう。ウクライナに関連してロシアから聞かされていることと非常によく似ている。
 この衝突は、ラフモン大統領がしばらくの間、社会のいくつかのグループを団結させるのを助けた。
 (2022年9月の衝突に関しては、)キルギス側は準備していなかった。キルギスにはこの衝突の初期において、軍事的決定を下した人は事実上誰もいなかった。
 国家安全保安委員会の委員長は、治療のためにヨーロッパに向かっていた。首相はEAEU(ユーラシア経済連合)フォーラム参加のためにロシアにいた。皮肉なことに、国防相はCSTO(ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン6カ国が加盟する集団安全保障条約)サミットのためにタジキスタンの首都にいた。

 (訳注:タジキスタンでCSTOサミットが開催されたのは、2021年9月である。2022年9月の大規模衝突に至る過程で、既に1年前にタジキスタンがキルギスに武力攻撃を仕掛けていたとの趣旨のようである。)

 ジャパロフ・キルギス大統領は首都にいた。しかしそれ以外の政府幹部が不在の状況で、キルギスが戦争を始めたとは考えにくい。

(質問)ラフモン・タジキスタン大統領はこの状況を利用したということか?
(ウマロフ)おそらくそうだろう。

 キルギス国防相がタジキスタンを来訪中に、タジキスタンはキルギスと戦争を始めたことになる。いずれにしても、紛争は新しいレベルになった。

 ナショナリズムが両国で広まり始めた。

 たとえばキルギスの首都のビシュケクのモスソヴェット通りには両替所がたくさんあるが、この紛争の後、タジキスタンの通貨を扱わなくなった。キルギスは、学生も含めてタジク人を追い出した。国境地域では、タジク人というだけで逮捕される者がでた。国境は閉鎖され、国境地帯の住民はタジキスタンとの貿易を禁じられ、重要な収入源を失った。

 同じことがタジキスタン側でも起きた。それ以来、両国は実質的に貿易を停止し、両国間の貿易は4〜5分の1に減った。

2023年1月3日発表(翻訳:村木洸太郎)
©Novaya gazeta Europe(無断転載を禁じる)

(訳注:『Novaya gazeta』はロシア国内で活動できないが、一部のスタッフがラトビア共和国に移り、『Novaya gazeta Europe』を運営している。2つの組織は別個のものだが、独立報道機関としての前者の精神を後者が引き継いでいる。)
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