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対ウクライナ支援で英国は急先鋒だが

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【ノーベル賞の『ノーヴァヤ・ガゼータから』(15)】英国は2023年マイナス成長でG20最低、軍備も厳しい状況

公開日: 2023/02/17 (ワールド)

ウクライナに供与する英国戦車チャレンジャー2=英国政府提供 ウクライナに供与する英国戦車チャレンジャー2=英国政府提供

村木 洸太郎 (翻訳者)

 ゼレンスキー・ウクライナ大統領は、ロシアによる侵略後の初のヨーロッパ諸国歴訪で、まずロンドンを訪問した。首相交代が相次いでも、英国は対ウクライナ支援に変更はない。ただ英国自身の軍備も厳しい状況だ。それでも英国はなぜ積極的なウクライナ支援を続けるのか。

 アレクサンドル・チトフ・ クイーンズ大学(英ベルファスト)講師は、『ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』に寄稿し、英国のウクライナ政策を解説した。英国はロシアに経済面で依存していない、安全保障面でもヨーロッパ大陸諸国ほど脆弱ではない、英露関係のこじれ、ブレクジット後に英国が国際的な存在感を示したい、といった事情を指摘する。

チトフ氏は、ロシア史、政治、哲学を専門とする研究者。

********************************

原文(ロシア語)の抄訳。

URLをクリックすると原文サイトに移ります。

https://novayagazeta.eu/articles/2023/02/13/kyiv-is-the-capital-of-great-britain

 2022年、ウクライナを支援するとのコンセンサスが英国の社会及びエリートの間に形成された。英国人は、ウクライナ・ロシア戦争を善と悪の間の戦争と受けとめ、対ウクライナ支援を政治的のみならず道徳的にも義務だと考えている。

 英国のこの認識の背景として、まず、近年の困難な英露関係を指摘できる。

 2006年、ロシアの元諜報員、FSB(連邦保安局)職員のアレクサンドル・リトヴィネンコが英国亡命中に、ロンドンの中心で放射性毒物によりロシアにより毒殺された。それ以来、英露関係は悪化した。それでも当時、英国政府はわずか4人のロシア外交官を追放しただけだった。

 2014年にウクライナ南東部へのロシアの侵入が始まり、クリミアが奪われた。その後、英国では、リトヴィネンコの問題をもみ消したりはしないとの考えから、殺害者に対する司法プロセスが再開された。

 以来、英国は国際的にもロシアに対して最も厳しい立場をとってきた。

 2022年のロシアの対ウクライナ侵略開始前から、ウクライナに軍事支援することが英国の政策の基調になっていた。2014年から2022年にかけて、英国はウクライナ海軍の強化に関する協定をウクライナと締結し、兵員を訓練し、武器を供給してきた。

 英国社会の関心は、それまではEU離脱に関する2016年の国民投票とそれに続く国内の政治危機に向けられてきた。

 しかし、2018年にセルゲイ・スクリパリとその娘のユリアが、ロシアにより化学物質で中毒させられたことは、英国社会に再び強い否定的な反応を引き起こした。

 ロンドンは再びロシアの外交官を追放することによって反応したが、今回は冷戦終結以来最大規模であった。

 2018年にロシアで開催されたサッカー・ワールドカップで、イングランドは久しぶりに準決勝戦まで進んだ。この大会のおかげもあり、英国人が持つロシアについてのイメージは、しばらくの間、悪くはなかった。

 しかし2022年2月までに、英国は、ポーランドやバルト諸国とともに、ヨーロッパでロシアに対して最も否定的な国の一つであった。

△  英国は“タカ派”としてふるまっても悪影響を受けない

 ヨーロッパの他の主要国と異なり、英国はロシアに経済的に依存していない。

 2021年、英国が輸入したガス、石油、石炭の内、ロシアからの輸入のシェアは、それぞれ僅か4%、9%、27%であった。購入総額は45億ポンドを超えなかった。(訳注:45億ポンドは、2021年の平均為替レートで換算して、約6795億円。)

 同じ2021年に、EU諸国の輸入に占めるロシアからの輸入のシェアは、ガスは40%と10倍であった。また石油は26%、石炭は54%であった。

 ロシアから英国への軽油(ディーゼル油)の供給だけが一般的な傾向に合致していない。2022年2月24日(ロシアのウクライナ侵略開始)前で、英国の軽油の輸入総額に占めるロシア産軽油のシェアは18%だった。それでもEU諸国の総輸入量のほぼ3分の1だった。

 ロシアのウクライナ侵略前の2021年、英国の対ロシア投資は、(英国の)外国投資全体の1%未満に過ぎなかった。

 ロシア経済への最大の投資は、BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)が所有していたロスネフチ株の19.75%であった。BPはこれらの株式を売却しようとしたが、うまくいっていない。

 英国は総じてヨーロッパの中で軍事的に脆弱な方ではない。大陸の西端にある島国として、また核兵力を保有していることもあり、英国は他のヨーロッパ諸国よりもロシアに対してより強い政策をとるこことができる。

 英国が保有する全兵器をウクライナに渡したとしても、近い将来、ロシアからの直接の軍事的脅威にさらされる可能性はない。

 さらに、英国と米国の間の“特別な関係”により、英国は米国から軍事支援を得られる。

 以上の諸要因が、ロシアに対して英国に“タカ派”の立場をとることを可能としている。

△  英国国内政治におけるウクライナ

 スナク首相は、慎重なテクノクラート首相として、ウクライナに関する英国社会のコンセンサスに従って行動している。モスクワと決別しても深刻な悪影響もないことにより、その政策は支えられている。

 ジョンソン前首相にとっては、積極的な対ウクライナ支援は、彼のスキャンダルから有権者の目をそらす手段でもあった。スナク首相もジョンソン前首相と同じようにふるまっている。スナクは、2022年11月つまり首相就任後の翌月にキエフを訪問した。

 そして2023年1月に、スナクはウクライナに重戦車を送る考えを発表した。彼はヨーロッパの中でそのような考えを発表した最初の一人だった。

 スナク首相のこのような一貫した立場には、彼自身の国内政治的な計算がある。ジョンソンは首相に返り咲く夢を捨てていない。スナクはこのことを念頭に置いている。ウクライナ問題は、スナクにとり、常に世間の注目を集めるための手段であり、その有効性は既に証明されている。

 ジョンソンは個人の立場でもキエフを訪問し、対ウクライナ支援の強化を求め続け、ゼレンスキーのロンドン訪問中に、英国が保有する全ての戦闘機と戦車を速やかにウクライナに提供することを提案した。

 ジョンソンにとり、対ウクライナ支援者であり続けることは非常に重要だ。というのは、彼が行なったブレグジットに対する英国民の態度はますます否定的になっており、国民の大多数が今やEU離脱は間違いだったと考えている。IMF見通しによると、英国の成長率の見通しはG20諸国の中で最低である。経済制裁を受けているロシアよりも低い。

(訳注:IMF経済見通し(2023年1月時点)では、2023年のGDPは、英国は▲0.6%のマイナス成長、ロシアは0.3%のプラス成長。なお、2022年のGDP成長率の結果(IMF推計)は、英国4.1%、ロシア▲2.2%。)

 これらすべてを理解して、スナクはジョンソンにウクライナで政治的な得点を与えないようにしている。これが、英国の指導者がウクライナへの重火器の供与でヨーロッパで旗振り役を務めている理由の一つだ。

△  英国の武器

 英国がウクライナに武器を供給する場合、それへの制約は、米国をはじめとする同盟国との調整、そして英国自身の軍隊に与える影響がある。後者の問題について、英国軍の幹部は懸念している。

 ウクライナに提供される西側諸国からの戦車の第一陣は、英国が送るものだ。英国は保有する227両の戦車のうち送るのは僅か14両だ。というのも、英国の元将軍によれば、稼働可能な戦車は僅か50両しかないからだ。

 さらに憂鬱にさせるのは自走榴弾砲である。英国は30両をウクライナに送るつもりだが、実はこれが英国が保有する稼働可能な全ての自走榴弾砲なのだ。

 英国の軍備の嘆かわしい状況は、近年の国防予算の緊縮の結果だ。

 国防予算の大半は、核抑止力の維持や2隻の空母の建設などの目立つプロジェクトに向けられた。ちなみに、空母の1隻は常に故障しており、海上にいるよりも修理されている時間の方が長い。

 軍・装備拡充のための資金源はどこにもない。英国は過去40年間で最も高いインフレと生活水準の低下を伴う最も深刻な経済危機を経験してきた。

 スナク首相は、前任者のリズ・トラスとは異なり、国防費を対GDP比で2%から3%に増やすことを拒否した。

 結局、英国の兵器がウクライナに提供された後、なくなった兵器は補充されないままになる可能性が高い。しかしそれでも、兵器の提供を遅らせる理由にはならない。

 逆に、ウクライナへの積極的な軍事支援は、英国の軍事力の衰退をある程度覆い隠し、英国を強力な軍事政治大国のように見せてくれる。

 ブレグジット後、英国のエリートと一般市民にとり、EU離脱にもかかわらず、英国は重要な国際的プレーヤーだと証明することが特に重要になった。

 このようなウクライナに対する“タカ派”的な支援こそが、これを実証する上で最も成功し、痛みも少ない方法だ。

 少なくとも今後数年間、英国はいかなる首相の下でも、ウクライナの勝利のための主要な理念的な闘争者の一員であり続けるだろう。

2023年2月13日発表(翻訳:村木洸太郎)
©Novaya gazeta Europe(無断転載を禁じる)
(訳注:『Novaya gazeta』はロシア国内で活動できないが、一部のスタッフがラトビア共和国に移り、『Novaya gazeta Europe』を運営している。2つの組織は別個のものだが、独立報道機関としての前者の精神を後者が引き継いでいる。)
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