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ロスコムナゾルはいかにロシア人を監視しているか?

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【ノーベル賞の『ノーヴァヤ・ガゼータから』(17)】「外国スパイ」指定のため個人情報を調べる

公開日: 2023/03/06 (ワールド)

アレシャ・マロホフスカヤ氏=ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパから アレシャ・マロホフスカヤ氏=ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパから

村木 洸太郎 (翻訳者)

 2022年11月、ロシアのネット監視・検閲機関の大量の内部情報が、ハッカー集団により暴露された。前回に続き、暴露された内容を伝える。

 ロシア連邦通信・情報技術・マスコミ監督庁(通称「ロスコムナゾル」)とその下部組織の「ラジオ周波数総局」(英語名称:General Radio Frequency Center、GRFC)は、ネットを監視・検閲している。GRFC職員のEメールのやりとりなどが大量に漏洩した。

 『ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ』は、「ロスコムナゾルはいかにロシア人を監視しているか?」と題するビデオをYouTubeに投稿した。
https://www.youtube.com/watch?v=FHlnad2GR5M

 ビデオの後半で(15分34秒から)、独立系メディア『重要なストーリー』(ロシア国外で活動している)のジャーナリストのアレシャ・マロホフスカヤが、GRFCによる“外国エージェント”指定のための作業について語る。

 “外国エージェント”とは、ロシア政府が、政府とは異なる独立した意見を述べる個人や団体(含むメディア、人権擁護団体、ジャーナリスト)に貼り付けるレッテルで、2012年以来関連の法律が施行されている。ロシア語でこの“外国エージェント”は、“外国のスパイ”という意味に近い。

 ロシア当局が西側のSNSにどう対応しているかについても語る。ロシア当局は、YouTubeに検閲への協力を求めたが、断られた。それでもまだYouTubeはロシアで使える。Facebook、Instagramはロシアでは2022年3月以来使えない。

******************************

△  ロスコムナゾルは、“外国エージェント”指定にどう関与しているか?

 ロスコムナゾルは、個人の不動産やオフショア資産の保有を調べる。

 私(マロホフスカヤ)も既に“外国エージェント”に指定されていたので、自分自身に関する情報がいかにロスコムナゾルにより扱われていたかを調べてみた。(訳注:ビデオで語っているジャーナリストのマロホフスカヤ自身、”外国エージェント”に指定されている。)

 “外国エージェント”として指定するためにロスコムナゾルが作成し、司法省に送った人々のリストを見た。

 彼らに関する内部資料も見つけた。非常に多くの参考資料がロスコムナゾルにより作成されていたことを確認できた。

 人々を“外国エージェント”に指定するためである。

 資料には、司法省に送付した日付もあった。

 リストアップされた人達全員が“外国エージェント”に指定されたわけではない。「それは何故なのか?」との記述も(漏洩したEメールの中に)あった。

 『ゴーラス(声)』、『重要なストーリー』、『プロジェクト』の全社員についての資料が作成されていた。しかし全員が“外国エージェント”に指定されたわけではなかった。(訳注:『ゴーラス(声)』、『重要なストーリー』、『プロジェクト』は、プーチンに批判的なメディアである。)

 (漏洩したEメールの中で)彼らはこうも述べている。「(“外国エージェント”に指定する者の)リストに含めたか否かの基準を定めることは不可能だ。」

 おそらく、“外国エージェント”の候補者がどの程度強く政府に反対しているのか、あるいは政府の官僚との個人的な対立の度合いによるのだろう。

 つまり、“外国エージェント”というのは、外国と何らかのつながりがあるからではなく、当局と仲違いしたことから指定されることは明らかだ。

 私が見つけたリストは、2020年10月から2021年10月までのものだった。

 このリスト以外に、司法省からの要請も(漏洩した情報の中に)見つけた。司法省は、人々のための調査資料を作るように依頼していた。

 “外国エージェント”として指定しようとする人々のリストに、その調査資料が添付された。

 私の調査資料は(司法省で)1年間検討されたようだ。

 一部の人にとっては、この検討期間は数週間だった。

 シュリマンは3週間で“外国エージェント”として指定された。(訳注:エカテリーナ・シュリマンは、著名な政治学者でモスクワにある高等経済大学の教授である。)

△  ロスコムナゾルは情報漏洩にいかに反応したか?

 情報漏洩の元となった職員の1人(訳注:おそらくGRFC勤務)と連絡をとることができた。

 彼の名前はルスラン・マラホフ。彼は、大統領への非難についての報告書をまとめたり、(ネット空間におけるロシア政府に対する)抗議の監視などをしていた。

 彼のコンピューターを通じて、ベラルーシのハッカー集団は、組織の内部システム全体にアクセスした。

 私の同僚のカティア・ ボチャ・スモロフスカヤ が彼に連絡した。最初、彼は話したがらなかったが、やがて話し、また状況を自ら書くようになった。

 彼によれば、彼はこの2ヶ月間働いていなかった。それは情報漏洩とは関係がないとのことだった。

 しかし、彼らは11月に情報漏洩に気づいたので、関係があるかもしれない。

 マラホフが書いたものを読むと、そこで働いている人達はどのような者か、まだどのようなポストに就いているのかが分った。

 彼は自発的にこの組織で働き始めたということだった。

 「アメリカは、『ロシア・トゥデイ』(訳注:ロシアのテレビ放送)を隔離してアメリカ国内で見ることができないようにしているので、西側諸国の同じような敵性宣伝をロシア国内で隔離し、見ることができないようにしてもよい筈だ。」

 彼がやっていることは実際はロシア人を隔離しているのだが、彼は自分の見解を正当化した。

 「今、ロシアは窮地にある。ロシアがこの戦争で負けることを望むすべての者を撃退し、祖国を守る必要がある。」

 ハッカーがシステムに侵入したことを知った時に、スタッフ達がどう感じたかも知ることが出来た。

 ロスコムナゾルの幹部も一般職員もパニックに陥った。彼らは皆、自分の個人データがネットに漏洩することを非常に恐れた。

 彼らが恐れた理由は、彼らが悪いことをしていることを分っていたからかどうかは分らない。あるいは、誰かが“外国エージェント”に指定されると、彼らが様々な攻撃を受けることを知っていたからなのかも分らない。

 おそらく彼らは同じことが自分にも起こることを恐れたのだろう。

 Eメールから判断して、ある職員はドイツにいた。

 当時メディアは、ヨーロッパは凍死すると報じていた。(Eメールのやりとりの中で)職員達は彼をからかっていた。ガスは無い。彼に、ガスコンロのガスが燃えている写真を送ってみよう。

 この男は、ロシアによる軍事検閲のために働いていたが、ドイツではスパイ扱いされることもなく、普通に暮らしていたのだ。

△  ロスコムナゾルは、西側のSNSでのロシアの宣伝を解禁させるために何をしていたか?

(訳注:YouTubeなど西側のSNSは、ロシアの公的プロパガンダ機関による利用を拒否している。)

 ロスコムナゾルは、ロシア当局の公式チャンネルを含むプロパガンダが禁止されている状況を解除するために努力し、YouTubeに働きかけをしていた。この事実を我々は知っている。

 しかし、YouTubeの対応は断固としたものであった。(訳注:つまりYouTubeは、ロシア当局からの協力要請を拒否した。)

 YouTubeがロシア国内で見ることが禁止されるかもしれないという話しは常にある。

 また、漏洩された情報には、FacebookとInstagramを含む「触れることができない巨人」のリストもあった。(訳注:これらの西側SNSは、ロシア当局の言うことを聞かないという意味で、また影響力が巨大であるが故に簡単に利用停止にできないという意味で、「触れることができない巨人」と表現されたのであろう。)

△  YouTubeはいつ使えなくなるか?

 開戦後Facebookが、利用者による戦争に関するメッセージをブロックしないと発表したため、すぐにロシアで禁止されることになった。(訳注:ロシアではFacebookは2022年3月4日から、Instagramは3月14日から全く使えなくなった。)

 YouTubeに関するロスコムナゾルの内部のやりとりによれば、YouTubeをロシア国内で使えなくすれば、大変大きな反響があるので、そこまではできないというものであった。

 しかし戦争中であるので、何が起きても私は驚かない。

 彼らの(Eメールでの)やりとりの中で、彼らは「YouTubeと話してみよう」、「YouTubeに削除するように頼んでみよう」などと話し合っていた。

 (YouTubeへの対処としては、)個々の動画を見えなくすることはできず、ドメイン全部を使えなくすることしかできない。

 彼らはYouTube全体をブロックすることは恐れている。しかし上からYouTubeをブロックするように言われたら、ブロックする。それでもう関係がなくなる。

2023年2月11日発表(翻訳:村木洸太郎)
©Novaya gazeta Europe(無断転載を禁じる)

(訳注:『Novaya gazeta』はロシア国内で活動できないが、一部のスタッフがラトビア共和国に移り、『Novaya gazeta Europe』を運営している。2つの組織は別個のものだが、独立報道機関としての前者の精神を後者が引き継いでいる。)
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