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ウクライナ東部、緊張緩和 両サイドがトーンダウン

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【ロシアと世界をみる眼】バイデン大統領の関与引き出し ゼレンスキー氏が得点か

公開日: 2021/04/16 (ワールド)

【ロシアと世界をみる眼】バイデン大統領の関与引き出し ゼレンスキー氏が得点か

小田 健 (ジャーナリスト、元日経新聞モスクワ支局長)

 ウクライナ東部の直近の緊張は緩和に向かっているようだ。

 ウクライナ首脳から紛争の外交的解決の必要を指摘する発言が相次ぎ、ロシアもウクライナとの戦闘準備を目的にロシア西部に兵力を増強したわけではないとシグナルを送った。ジョー・バイデン米大統領がウラジーミル・プーチン大統領に近い将来の首脳会談開催を呼びかけたことも大きな要因になっている。

 とはいえ、ウクライナ東部のドンバス(ルハーンシク州、ドネツィク州)とクリミアをめぐるウクライナとロシアの対立は解消される見通しはまったくなく、今後もローラーコースターのように緊張は上下動を繰り返すだろう。

 ドンバスでは年明け以降、対峙するウクライナ軍と親ロ派独立勢力による小規模な交戦が増加、3月末から4月初めにかけて、ウクライナ、そして独立勢力を支持するロシアがそれぞれ周辺で兵力を増強した。同時に双方が強い調子で非難合戦を展開、これに米国のバイデン政権も加わって、一気に本格的な戦争に発展するのではないかという観測も出ていた。

ゼレンスキー大統領=ccbyウクライナ大統領のサイト

 ところが、ウクライナのヴォロジミル・ゼレンスキー大統領は今月9日、ドンバスのコンタクトライン(停戦ライン)近くの軍拠点を訪れ、その後、「我々は停戦を取り戻す必要がある」とソーシャル・メディアに投稿した。

 同日、ウクライナのルスラン・ホムチャク軍総司令官が、ドンバスの武力による「解放」には市民と兵士の多大な犠牲が出てしまうので、「受け入れられない」と述べた。

 ドミトロ・クレバ外相はその前の7日、フランスのシベラシオン紙との会見で、衝突のエスカレーションに関心はなく、外交的解決の方針を変えていないと強調した。

 ウクライナ側から当初聞こえてきた妥協を許さないかのような姿勢が一気に変わったかのようだ。その理由は不明だが、バイデン政権との接触を通じて、自制を促されたのかもしれない。

 一方、ウクライナ政府軍と直接にらみ合っているドンバスの独立派勢力の指導者、デニス・プシーリン(自称「ドネツク人民共和国」大統領)は7日、戦争を始めようと思っていないし、外交的解決へあらゆる手段を尽くすと述べた。

セルゲイ・ショイグ国防相=ccby Mil.ru

 ロシアの姿勢はどうかというと、セルゲイ・ショイグ国防相が13日、ここ3週間の間にロシア西部に3「軍」(この場合の軍とは、地上軍の中の部隊の規模を示す単位)と2空挺部隊を増派していると初めてその規模を明らかにしたが、それはNATO(北大西洋条約機構)軍からの脅威に対抗するための演習の一環だと述べた。つまり、直接、ドンバスのウクライナ軍を攻撃目標にした増派ではないということだろう。

 そして13日にはバイデン大統領がプーチン大統領と電話で会談、第三国での首脳会談開催を提案した。バイデン大統領はウクライナの主権と領土一体性を守るとの約束に変わりはないと強調、ロシア軍の増強に注文をつけたが、向こう数カ月の間に首脳会談を開こうと言ったのだから、戦火を交えようという姿勢からはほど遠い。

 またトルコのメヴルト・カヴソグル外相が15日明らかにしたところでは、アンカラの米国大使館から、予定していた米艦船2隻の黒海への航行を取り止めるとの連絡があった。黒海に入るにはトルコのボスポラス海峡を通るため、外国政府はトルコへの事前通告を義務づけられている。

 こうしてウクライナ東部での軍事的緊張は一段落する雰囲気にある。ウクライナ、ドンバスの独立勢力、ロシア、米国、欧州がそれぞれ自制したということだろう。

 今回の緊張は多分にゼレンスキー大統領が盛り上げた感がある。支持率が低迷するゼレンスキー大統領は、ショナリズムの高揚を図るとともに、バイデン政権からウクライナ重視の姿勢を得たかったのだろう。それが実現できて、とりあえずは得点を稼いだと言ってよい。

 ロシアもウクライナ政府軍がドンバスやクリミアに大規模攻撃を仕掛けることは許さない、反撃の用意はいつでもできていると知らしめることができ、気をよくしているのではないか。
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小田 健(ジャーナリスト、元日経新聞モスクワ支局長)
1973年東京外国語大学ロシア語科卒。日本経済新聞社入社。モスクワ、ロンドン駐在、論説委員などを務め2011年退社。国際教養大学元客員教授。
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