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シリアへの本格軍事介入できないロシア

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【ロシアと世界を見る目】米ロ、アサド政権めぐり駆け引き

公開日: 2015/09/20 (ワールド)

Reuters Reuters

小田 健:ロシアと世界を見る目 (ジャーナリスト、元日経新聞モスクワ支局長)

 今月中旬からシリアでロシア軍兵士が活発に動いているとの情報が浮上している。膨張主義のロシアがウクライナに次いでシリアの紛争に本格介入し、勢力圏の拡張に乗り出したのではないか――そんな疑問が生じるかもしれないが、今のロシアには財政的にも政治的にもそんな余裕はない。
 米政府筋が今月11日、ロイター通信に対し、シリアにおけるロシア軍の新たな動きを明らかにした。約200人のロシア軍兵士が地中海岸の町、ラタキア近郊の空港に駐留し、滑走路の整備を進めているとのことだった。その後、携帯型の航空管制装置や対空ミサイル一基が持ち込まれたとか、数百人とも2000人用とも言われるバラックが建設されているとの情報が伝わった。19日には米国防省高官が少なくとも戦闘機4機が同空港に配備されたと明らかにした。
 ロシアは先代のハフェズ・アサド大統領時代からシリアと良好な関係にあり、シリアの支配政党であるバース党の幹部の中にはソ連で教育を受けた者も多いという。ロシアはシリアへの主要な兵器供給国であり、地中海岸のタルトゥスには小さな海軍施設を設けている。さらにはロシア軍人が現地で兵器の使い方を教えてきた。だが、今回の動きはこれまでとは確かに異なる。 
 ロシア軍の活動についてセルゲイ・ラブロフ外相は、ロシアは従来から過激派組織「イスラム国(IS)」と戦うアサド政権を支持し、ロシア製兵器の保守や使用法の教育のため軍人が駐在していると説明、増強を否定していない。
 問題はこれがロシアのシリア紛争への本格介入の始まりであるかどうかだ。だが、ロシアの軍事専門家たちの分析では、本格介入はない。ロシアにはソ連時代にアフガニスタンに介入し多大な犠牲を払ったというトラウマがある。それに今はウクライナ危機への対応という重大課題を抱えている。シリアへの本格介入は財政的にも国民感情の面からも難しい。シリアとは友好関係にあると言っても、シリアはロシア人が歴史的、文化的に深い関係のあるクリミアやウクライナ東部とは異なる。
 実際、現在のところ、増強は小規模にとどまっている。本格介入には数千人の兵士と大量の装備を送り込まなければならず、その兆候はまだない。戦闘機4機では本格介入にならないだろう。
 ではなぜ今この時期に小規模だが増強に乗り出したのか。まず、米軍によるISへの空爆が効果を上げず、ISは攻勢を続けシリア政府軍が敗走を余儀なくされているという事情がある。政府軍への一定のてこ入れが必要と判断したことが考えられる。
 ロシアがシリアに関与し続ける大きな背景としては、ロシアにとってアサド大統領との関係がシリアにおける貴重な資産であり、それを失いたくないと考えていることを指摘できるだろう。
 それにロシアは1000万人を越えるイスラム教徒(ムスリム)を抱え、過激なイスラム思想が入る込むことを強く警戒しなければならない。ムスリムはロシア南部の北コーカサス地方に多く住み、中にはISに参加しているロシア国籍のムスリムもいる。彼らの一部が帰国、ISやアルカイダの過激思想を広め、戦闘員を徴集しているといわれる。ロシアにといってシリアは直接的な脅威の発生源にもなりうる。
 だが、ロシアのシリア政策は米国にはまったく支持されてこなかった。ジョン・ケリー米国務長官はロシア軍増強の動きを受けて、ロシアに対しバシャル・アサド政権を支援することを止めるよう警告した。
 そもそも米ロのシリア紛争への対応は基本的に異なる認識から出発している。ロシアは米軍による空爆が効果を上げていない今、ISの進撃を阻止するには地上での大規模作戦が必要で、その役割を担えるのはシリア政府軍以外にないと考えている。だから、支援に乗り出したのだが、ロシアの参加はシリア政府軍へのてこ入れが中心となるだろう。
 一方、米国の姿勢は一言で表現するなら、ISも悪いがアサドも悪いというもので、アサド政権が早く倒れシリアに「穏健な」反アサド勢力による政権が出来れば、対IS作戦も前進すると考えている。だから、アサド政権の延命に手を貸すロシアはけしからんということになる。それにクリミアを併合したロシアの言うことなど聞いていられるかとの思いもあろう。
 ロシアはアサド政権が倒れれば、シリアはIS、さらにはアルカイダ系のアル・ヌスラといった過激集団に乗っ取られ、大混乱に陥り、大量虐殺が始まると反論する。独裁者がいなくなっても事態はますます悪化するという事例が多く、それは米国の中東政策の失敗が教えているではないかと指摘する。
米ロはISという共通の敵を抱えながら、主にアサド政権に対する認識の違いで協調できないでいる。アサドはいた方がいいのかいない方がいいのか。
 このところ米国内からも、とにかく今はIS対応が最優先事項だと判断しアサド大統領のことは後回しにすべきだとの声も聞かれ始めた。19日にはアシュトン・カーター国防長官とセルゲイ・ショイグ国防相が電話会談、米国防省によると、会談は「建設的だった」という。IS対応について調整が進みつつあるのかもしれない。国連総会開催を機に米ロ首脳会談が開かれるかもしれない。その場合、ウクライナ問題とともにシリア問題が主要議題となろう。
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小田 健:ロシアと世界を見る目(ジャーナリスト、元日経新聞モスクワ支局長)
1973年東京外国語大学ロシア語科卒。日本経済新聞社入社。モスクワ、ロンドン駐在、論説委員などを務め2011年退社。

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