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ロシア参戦、シリア紛争ますます泥沼化

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【ロシアと世界を見る目】米国との地政学的争い激しく

公開日: 2015/10/02 (ワールド)

Reuters Reuters

小田 健:ロシアと世界を見る目 (ジャーナリスト、元日経新聞モスクワ支局長)

 9月中旬からシリアでの軍事プレゼンスを強めていたロシアが同月30日、遂に空爆を開始した。ウラジーミル・プーチン大統領やロシア外務省、国防省の発表によると、イスラム過激派の「イスラム国(IS)」の拠点を攻撃し、成果をあげたという。米国、その同盟諸国もISを敵として空爆しているのだが、ロシアによる攻撃を支持していないどころか、批判している。シリア紛争はますます複雑になった。
 ロシアはなぜ空爆に踏み切ったか。プーチン大統領は30日に閣僚会議を招集、シリア空爆について説明した。それによると、目的はロシアからISに参加している多数のテロリストが帰国してテロ活動を展開する事態を未然に防ぐためだ。確かにロシアには南部を中心にイスラム教徒が1,000万人を超え、その中の一部の過激なイスラム教徒がシリアに入り込み、バシャル・アサド大統領が率いるシリア政府軍と戦っている。彼らがロシアに帰国してテロや分離運動を展開する前に叩いておく必要があるというわけだ。
 だが、ロシアの目的はそれにとどまらないだろう。もちろんプーチン大統領は言わなかったが、ロシアが中東で、さらには世界で重要な地政学的プレーヤーであることを見せつけるとの意図もあろう。そのためにはロシアにとっての大切な地政学的資産であるアサド大統領を守る必要がある。
 米CIA(中央情報局)に近いとされるシンクタンク、「ストラットフォーStratfor」はロシアにはイランとの協力関係を強める意図もあると指摘する。最近、米国とイランの合意でイランの核問題が解決し、中東におけるロシアの立場が弱まった。そこでロシアはイラン人と同じイスラム教シーア派に属するアラウィー派の人たちで作るアサド政権への支援強化を打ち出し、イランを取り込もうとしているというのだ。
 プーチン大統領は対米関係の改善を断念したのだろうか。28日のニューヨークでのバラク・オバマ大統領との会談はアサド大統領に対する認識の違いからシリア問題について合意できずに終わった。
 そして、空爆を機に米ロ関係が一段と悪化する様相をみせている。アシュトン・カーター米国防長官はロシアが空爆した対象についてIS以外の勢力も入っていたと指摘した。シリアの反政府勢力の中には米国が支援する「穏健イスラム勢力」がいて、彼らはISのほかアサド大統領を敵にしている。従ってロシアの空爆はアサド大統領打倒の戦いを弱め、ISを利するのでけしからんということになる。
 一方でジョン・ケリー米国務長官はロシアと様々な「選択肢」について協議することで合意していると述べた。それが具体的に何を意味するのかは明らかにしなかった。
 米国がアサド政権の早期退陣にこだわらず、ロシアもアサド氏を守ることに固執せず、ほかのアラウィー派指導者を大統領として受け入れるといった姿勢を見せるなら、米ロ協力は可能だろう。だが今はその展望があるわけではない。
 当面、米ロ政府はデコンフリクトdeconflict、つまり互いに敵と誤認して攻撃する事態を阻止するための協議の場を中心に接触を続けるだろう。
 ロシアがシリアの地中海岸の町、ラタキア近郊の空軍基地に兵員、装備を送っていることが9月中旬に確認された。これまでにSU-24戦闘機を中心に数十機の航空機のほか、攻撃型戦車、装甲車、地対空ミサイルなどの配備が確認され、数千人収容可能な組立型兵舎も建設されたという。
 プーチン大統領はシリアでの作戦について、空軍のみが参加、地上軍を投入する予定がないこと、空爆が一時的な措置であることなどと説明した。増派された兵員の規模は不明だが、2,000人規模としいう米国情報もある。地上軍を伴う本格介入の兆候はない。
 シリア紛争は元々「アラブの春」の盛り上がりの中で反アサド勢力がアサド政権打倒のため蜂起して始まったのだが、米国とその同盟国のほかアラブ諸国、イラン、トルコなど外国が介入、反アサド勢力にもISやアルカイダ系組織、米国などが支援する自由シリア軍など様々な組織が存在する。そして今回、ロシアが新たなステークホルダー(利害関係者)として加わった。シリアの行方を語る上でロシアの存在はこれまで以上に無視できなくなった。
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小田 健:ロシアと世界を見る目(ジャーナリスト、元日経新聞モスクワ支局長)
1973年東京外国語大学ロシア語科卒。日本経済新聞社入社。モスクワ、ロンドン駐在、論説委員などを務め2011年退社。

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