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蜜月中ロに借地めぐり亀裂

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【ロシアと世界を見る目】複雑なロシアの対中認識 シベリアの農地契約めぐり警戒論浮上

公開日: 2015/06/30 (ワールド)

プーチンと習近平(2015年5月8日)=Reuters プーチンと習近平(2015年5月8日)=Reuters

小田 健:ロシアと世界を見る目 (ジャーナリスト、元日経新聞モスクワ支局長)

 中ロ関係は極めて良好だ。ここ数年、両国では何一つ問題がないかのように経済、政治関係の緊密化を物語る様々な案件が次々と喧伝されてきた。ところが、6月9日にロシア・シベリアのザバイカリエ地方政府が中国企業と大規模農地の賃貸契約を結んだところ、ロシアでにわかに中国脅威論が頭をもたげてきた。ロシア人の対中意識はなかなか複雑なようだ。

 ザバイカリエ地方(ロシア語では「ザバイカリスキー・クライ」)の政府が、国境を接する中国浙江省の中捷資源投資股份有限公司(Zeje Resources Investment)と農地11万5千ヘクタールを49年間賃貸するという契約を結んだ。賃貸料は年間1ヘクタール当たり250ルーブル(約565円)。
 このニュースが伝わると、ロシア下院の右派系議員を中心に、こんなに安く、長期間賃貸してよいのか、これでは中国に土地を奪われてしまうといった反発の声が上がった。ウラジーミル・プーチン大統領の翼賛団体とも言うべき「全ロシア国民戦線」も、この件について公聴会を開き精査すべきだと要求している。

 
通信社のロスバストが早速、世論調査を実施した。その結果をみると、この契約が実施された場合、シベリアを中国の植民地にしてしまい、いずれ中ロの戦争に発展する恐れがあるとの見方をする人が50.5%、ロシアの農地が消滅し、中国が経験している同じ環境破壊が生じるとみる人が40%を占めた。また、ウェブサイトではプーチン大統領にこの取引を止めさせるよう求める声が広がっている。

 こうした警戒の高まりの背景の一つに中国式農業への不信感があるといわれる。中国企業は本国と同様に化学肥料を大量に使って作物を育て農地を汚染しかねないというのだ。
 だが、下院議員らが指摘するのは「地政学的問題」。右派系の自由民主党のイーゴリ・レベデェフ議員は「このままではザイバイカリエの知事は20年後には中国人になってしまう」と言う。これは中国企業が単に農地を賃借するのではなく、中国人労働者を農場に大量に入植させるとみているからだ。

 
「地政学的」見解には歴史問題が関係している。現在の中ロ国境は基本的には、帝政ロシアと清朝との間で締結された1858年のアイグン条約、1860年の北京条約、1881年のイリ条約などで決まった。中国にはロシアがこれら19世紀の一連の不平等条約で領土を奪い取ったという見解がある。それに人口問題が関係してくる。ロシアのシベリア・極東地方では人口過疎化が進み、対照的に国境を挟んだ中国の地方には億という単位の中国人が住んでいる。中国人が流れ込んでくるという危惧が対中警戒感を生んでいる。

 相次ぐ懸念表明に対し、話を進めたザバイカリエ地方のコンスタン・イリコフスキー知事は中国企業とはまだ仮契約ないし覚書を交わした段階で、詳細な契約はこれからだと言って沈静化を図っているが、ザバイカリエには膨大な面積の未利用農地が存在、国内の企業に利用を持ちかけてきたが、誰も応えてくれなかったとも指摘し、理解を求めている。
 元々中央政府は中ロ経済関係の拡大を対外経済政策の柱に掲げ、中国資本の誘致には積極的だ。それにすでに極東地方の農業分野には中国資本が入っており、中国と国境を接するユダヤ人自治州では農地の75%以上が中国企業に管理され、現地の評判も悪くないという。イリコフスキー知事にしてみれば、中央政府推奨の方針に沿った案件なのに「何で今頃我が地方だけに文句を言うのか」と反発したくなるところだろう。

 中央政府は今のところ、具体的な対応を明らかにしていないが、中国との関係強化の大方針に照らし合わせ撤回させることは難しいだろう。今後は賃貸期間を短くするといった契約内容の修正があるのかどうか見ものだが、いずれにせよ、中ロ蜜月時代が続くなかで建前とは別の本音が見え隠れする話ではある。
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小田 健:ロシアと世界を見る目(ジャーナリスト、元日経新聞モスクワ支局長)
1973年東京外国語大学ロシア語科卒。日本経済新聞社入社。モスクワ、ロンドン駐在、論説委員などを務め2011年退社。

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