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ウクライナ系米国人、「故郷」への思いは迫害と重なる

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【ロシア・ウクライナ戦争】ソ連崩壊後に帰還し貢献 ロシアへの訣別がこの戦争の真実

公開日: 2022/05/09 (ワールド)

ヌーランド国務次官=国務省提供 ヌーランド国務次官=国務省提供

西谷 公明 (エコノミスト 元在ウクライナ日本大使館専門調査員)

 アメリカのウクライナ外交を支えるV・ヌーランド国務次官(注)。前回コラムで触れたユシチェンコ元大統領の夫人で米国生まれのカタリナ・ユシチェンコさんと同じでウクライナから米国への移民の血を引くことはあまり触れられない。

 カナダやアメリカを中心に、北米には250万とも300万ともいわれるウクライナ系移民が住む。

 19世紀後半、オーストリア・ハンガリー帝国下の西ウクライナで、農民が活路を求めて渡ったのがはじまりとされる。当初はアメリカ北東部の工業地帯へ、その後はアメリカやカナダで農業を営むために移住した。

 ロシア革命から第二次世界大戦へいたる期間には、ボリシェビキによる弾圧やスターリンの農業集団化がもたらした大飢饉から逃れるため、多くのウクライナ人が自由を求めて北米やヨーロッパへ移住した。

 私は1996年から1999年まで3年間、外務省が派遣する専門調査員として、独立してまもないウクライナの日本大使館に勤務した。往時、キーフにはそうしたウクライナ系移民の2世や3世が、欧米企業のカントリー・マネージャーとして駐在していた。

 アメリカの大手化学メーカーに勤める米国人の友人は、ウクライナ語のネイティブスピーカーだった。

 彼の父親は、17歳のとき、ボリシェビキと戦うために人民戦線に加わり、その後イタリアへ逃れ、1945年に移民局が置かれていたニューヨークのエリス島にたどり着いた。母親の両親はナチス・ドイツの協力者と疑われて処刑される。母親は、残された家族とともに中部ポルタヴァの村を出て、歩いてドイツへ逃れた。その後、米国に渡って父親と巡り会った。

 母親は毎晩のように、祖国のことを彼の耳もとで語って聴かせたという。そして、いまはロシア帝国主義のもとで自由を奪われているが、いつか自由な国になる日が来たら、そのときは祖国へ戻り、いとこや親戚たちといっしょに暮らすのだと聴かされて育った。

 「私は幼いころからウクライナのことしか知らずに育った。だから私にとり、祖国は甘美な夢のフィーリングに近かった」。ウクライナについてそう語っていた。

 彼は、強烈なウクライナ愛国者だった。キーフには、似たような生い立ちのウクライナ移民ファミリーが数多く帰還し、“祖国”の復興を後押ししていた。彼らの背景は、ウクライナの歴史そのものでもあった。

 プーチン大統領は、ロシアとウクライナの「歴史的な一体性」を主張する。だが、多くのウクライナ人にとり、この国の歴史は、ロシアからの自由と独立への闘いのそれだった。エスニック的には同じスラブの兄弟国であるとしても、両国の関係は長く支配する側と支配される側のそれだった。 

 ロシアへの訣別。ウクライナから見たこの戦争の真実である。

注)2014年2月政変時、ヌーランド国務次官補(当時、以下同じ)とパイアット駐ウクライナ大使が暫定政権の人事について意見を交わした通話内容がリークされ、アメリカ国務省によるウクライナ内政への介入として批判された。
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西谷 公明(エコノミスト 元在ウクライナ日本大使館専門調査員)
1953年生、長銀総研を経て1996年在ウクライナ日本大使館専門調査員。2004ー09年トヨタロシア社長。2018年N&Rアソシエイツ設立し、代表。著書に『ユーラシア・ダイナミズム』『ロシアトヨタ戦記』など。岩波書店の月刊世界の臨時増刊「ウクライナ侵略戦争」で「続・誰にウクライナが救えるか」(2022年4月14日刊)を執筆。2023年1月に『ウクライナ 通貨誕生-独立の命運をかけた闘い』(岩波現代文庫)を復刻。
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