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ウクライナ停戦への道筋は見えない

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【ロシア・ウクライナ戦争(21)】2024年にロシア、ウクライナの大統領選があるが

公開日: 2023/01/09 (ワールド)

塹壕のウクライナ兵士、ドネツク州=Reuters 塹壕のウクライナ兵士、ドネツク州=Reuters

西谷 公明 (エコノミスト 元在ウクライナ日本大使館専門調査員)

 プーチン大統領がロシア軍に対し、正教のクリスマス停戦を指示したが両軍の攻撃は止まらなかった。

 ウクライナ戦争の戦況がどう動いているか、そこは定かでない。

 たとえば、ゼレンスキー大統領が昨年末に突如訪問したドネツク州の要衝バフムトをめぐる戦闘は進展したのだろうか? ドニエプル河を挟んだ、南部ヘルソン州における攻防は膠着したままなのだろうか?

 そのドニエプル河の中流で、北クリミア運河(クリミアの水利はこの運河に依存している)へ取水するカホフカ・ダム(貯水池)は崩壊せずに残っているのだろうか?

 また、ダムの湖畔に高く聳え、ウクライナの東部一帯へ電力を供給するヨーロッパ最大のザポロジエ原子力発電所は稼働を停止しているはずだが、その安全は確保されているのだろうか?

 ザポロジエ原発が止まっているとしたら、ロシアが一方的に併合を宣言した東部4州への電力供給はいったいどうなっているのだろう?

 さらにまた、クリミアや東部4州の住民は、この冬をどう過ごしているのだろう?

 ロシアは東部4州の守りを固めると同時に、ウクライナ全土に「絨毯爆撃」を浴びせて電力インフラを攻撃する。国民の戦意を挫くためだけではないだろう。兵器の輸送を阻む意図もあるにちがいない。ウクライナの鉄道は、ほとんど電気機関車に頼っている。

 キエフ市内には、ミサイルとドローンの雨が降り、空襲警報が鳴り響き、市民は計画停電のなかで凍てつく暗い夜を過ごしている。地域集中暖房のための熱い湯も水道水も、電気を用いて送られる。停電すると、お湯も水も出ないのだ。食料品店やキオスクには、西側の緊急支援で13万6000基以上の簡易発電機が配置されている。

 キエフ近郊に住む知人夫妻は、空襲警報のないときは外に出て、買い物をしたり、散歩をしたり、ささやかな日常を守ろうとしている。それが、この戦争に対するレジスタンスででもあるかのように。西側は防空システムの強化に乗り出した。

 だが、経済はほとんど崩壊している。生産や生活・社会インフラの多くが破壊された。世界銀行のエコノミストは、2022年のウクライナの国内総生産をマイナス35%(あるいはそれ以上)と予測している。

 それでも、ゼレンスキー大統領は停戦の提案を撥ね退ける(多分、ホワイトハウスの指示もある)。

 思えば、ドンバスとクリミアの領有をめぐる争い(ロシア人はこの地域を“ノヴォロシア”と呼んでいる)は、ソ連崩壊につづく両国の独立とともに始まっていた。1994年、東部のドンバスから起こった経済自治の要求に、西部のナショナリストが激怒して国論が割れた。いつ戦争になってもおかしくなかった。30年後、ロシアはついにウクライナへ軍事侵攻した。

 一方、昨年10月にモスクワを訪れたとき、戦争はすでに身近にあった。

  戦争を支持する人も、反対する人も、戦争から距離をおいて無関心を装う人も、皆一様に抱いていたのは、後戻りできない先行きへの不安だった。

 友人のひとりは、ロシアの兵士がウクライナの兵士と殺し合う悲惨さを語りながら、涙を隠さなかった。

 プーチン大統領がおこなう、毎年恒例の国民との直接対話や内外メディアとの会見はキャンセルされた。プーチン大統領は正義を誤った。おそらく、「この戦争がいつ終わるのか」という問いに答えられるようになるまで再開されることはないだろう。

 果たして、それはいつのことか?

 2024年春には、両国で大統領選挙が予定されている。

 一国のリーダーの最大の責務が、国民の生活と社会の安寧であることは言うまでもない。

 凍てつく冬の向こうに、果たしてどのような春が待っているのだろう?

 両者とも、この泥沼からの出口を模索しているはずだと願いたい。
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西谷 公明(エコノミスト 元在ウクライナ日本大使館専門調査員)
1953年生、長銀総研を経て1996年在ウクライナ日本大使館専門調査員。2004ー09年トヨタロシア社長。2018年N&Rアソシエイツ設立し、代表。著書に『ユーラシア・ダイナミズム』『ロシアトヨタ戦記』など。岩波書店の月刊世界の臨時増刊「ウクライナ侵略戦争」で「続・誰にウクライナが救えるか」(2022年4月14日刊)を執筆。2023年1月に『ウクライナ 通貨誕生-独立の命運をかけた闘い』(岩波現代文庫)を復刻。
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