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外務省が渡航中止勧告指定のロシア やはり遠い国に 

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【ロシア・ウクライナ戦争(14)】モスクワで部下と会食、そこには「戦争」があった

公開日: 2022/10/24 (ワールド)

モスクワの中心街=撮影・西谷 モスクワの中心街=撮影・西谷

西谷 公明 (エコノミスト 元在ウクライナ日本大使館専門調査員)

 本稿を、私はいま、モスクワのホテルの一室で書いている。

 ロシアはすっかり遠い国になった。日本からの直行便はどれも止まっているため、トルコ航空を途中、イスタンブールで乗り継いで、はるばる19時間を超える長旅の末に辿りついた。

 入国ビザは難なく取得できたのだが、ホテルは日本から予約できない(クレジットカードが使えない)ため、モスクワの知人の手を借りざるを得なかった。そのうえ、日本政府がロシアへの外貨の持ち込みを制限しているため(滞在一日あたり5万円以下、羽田空港で税関職員から“取り調べ”を受ける)、ホテル代を支払った残りで、滞在中の費用を賄わねばならない。

 要するに、ロシアへなど行くな、ということだ。

 憚りながら、外務省から「渡航中止勧告」(いわゆる「レベル3」)が出ていることは承知している。

 だが、トヨタがロシア撤退を決めたいま、かつての部下たちと、どうしても一杯やりたくなった。

 約束の夜7時、赤の広場からほど近いカフェ「ドクトル・ジヴァゴ」に懐かしい顔ぶれが集まった。

 早速、上等の“クリミア”ワインで乾杯した。

 退避先のジョージアから、わざわざモスクワへ戻ってくれた元部下もいた。残念ながら、撤退業務に携わっている役員のひとりは、直前になってサンクトペテルブルクで急な打ち合わせがセットされたために来れなくなった。また、いまはロステク(ロシア最大の軍需産業コンプレックス)傘下の企業で役員を務める元部下は、さすがに多忙をきわめているようで欠席した。

 戦争は、まちがいなく、その場にあった。

 仲間のなかには予備役として召集された者もいた。その話題になると、皆の顔が沈んだ。パンデミック以来、リモート勤務でリアルに会うことは少なくなったが、誰それはカザフスタンに、誰それはジョージアに、とか互いの消息は交換し合っているようだった。

モスクワの中心部で=撮影・西谷

 現下の出来事を避けるように、遠い昔の思い出話に花が咲いた。モスクワでは「部分動員」が解除されていた。金曜日の夜とあってか、カフェは深更まで賑わった。

 元部下たちのあいだには、自動車の輸入再開を期待する声もあった。

 だがしかし、この戦争は長くつづく。9月30日、プーチン大統領はウクライナ東部4州の併合を宣言した。ロシアがそれを撤回することはないだろう。したがって、その限りで制裁もつづく。

 他方、西側の結束は、相変わらず堅いように見える。この20年間にわたり、ロシアを取り巻いてきた世界は終わった。ロシアと西側のあいだに越えることのできない壁がつくられた。撤退した企業が再び戻ることはないだろう。アメリカの狙いどおり、ロシアはますます孤立を深めるにちがいない。

 「これを最後の訪問にしないでください。また来てください」

 彼らにとり、私の訪問は“希望”であるように感じられた。

 彼らに歓迎されるかぎり、私はまた来たいと思う。世界が分断されつつあるからこそ、私たちはこういう付き合いを大切にする必要がある。
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西谷 公明(エコノミスト 元在ウクライナ日本大使館専門調査員)
1953年生、長銀総研を経て1996年在ウクライナ日本大使館専門調査員。2004ー09年トヨタロシア社長。2018年N&Rアソシエイツ設立し、代表。著書に『ユーラシア・ダイナミズム』『ロシアトヨタ戦記』など。岩波書店の月刊世界の臨時増刊「ウクライナ侵略戦争」で「続・誰にウクライナが救えるか」(2022年4月14日刊)を執筆。2023年1月に『ウクライナ 通貨誕生-独立の命運をかけた闘い』(岩波現代文庫)を刊行予定。
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