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戦争はウクライナの汚職、腐敗、オリガルヒ支配を変えられるか

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【ロシア・ウクライナ戦争(4)】あるマイダン革命戦士との再会 「この国には正義がない」と語った

公開日: 2022/06/08 (ワールド)

キーフの独立広場の抗議大集会(2014年2月)=ccbyВвласенко キーフの独立広場の抗議大集会(2014年2月)=ccbyВвласенко

西谷 公明 (エコノミスト 元トヨタロシア社長)

 「もう8年もこうして戦っています」

 戦渦のウクライナからメールが届いた。

 彼だった。一時はリヴィウへ避難していた奥さんと娘さんもキーフへ戻っていた。

 内務省配下のキーフ地区防衛隊の一員として、主戦場がドンバスへ移ったいまは机上にパソコン3台を横に並べ、数人の部下をしたがえて、モスクワに向けて昼夜のサイバー攻撃をしかけていると言う。

 思い起せば2014年4月。政府側とデモ参加者が暴力的に衝突し、ヤヌーコビッチ大統領が退陣した2月の騒乱、いわゆるマイダン革命の余燼燻ぶるキーフを訪れたときのこと。

 ホテルのロビーで待っていると、戦闘帽を目深にかぶり、ブーツを履いた若い男がやって来た。それが彼だった。筋金入りのナショナリスト戦士だと、ひと目で知れた。

 人々は政変を戦った戦士たちを“英雄”と讃えていた。再会を喜びあう私たちふたりに、フロント係やドアマンたちが温かい視線を向けていたことが記憶に残る。反ロシアで、ウクライナの人々の心はひとつだ。私はそう感じざるを得なかった。

 「なぜ戦闘員になったのか?」

 私の質問に、彼はきっぱりとこう答えた。

 「ウクライナには正義がありません。病人が医者にもかかれない。反政府集会で、『自分たちは年寄りだ、若い人たちに頑張って欲しい』と老婆から言われたら、戦わざるを得ません」

 この騒乱は、戦闘的なナショナリスト集団に扇動された面もあっただろうが、それがすべてでは決してなかった。

 根底にあったのは、政府の汚職と社会の腐敗、経済の行き詰まりに対する人々のやり場のない怒り。言い換えると、ウクライナに正義を取り戻したいという、無数のふつうの人々が抱いた、いわば愛国的な心情だったように思う。

 同時に、その心情は、歴史的にみれば、強大な隣国ロシアの影響からのがれて自由で独立した国でありたいと願う、西ウクライナの人々の気持ちと重なっていたように思う。この思いが現下の戦争を支える。

 ところで、その後、ウクライナは“正義”を回復できただろうか。

 少数のオリガルヒが鉄鋼、石炭、鋼管、鉱山、穀物、銀行などの主要企業を独占的に支配し、最高会議の議員を買収し、政治と社会の改革を執拗に妨げてきたことは誰もが知る事実だ。その一部はロシアの産業界ともつながっている。

 いまは戦争にかき消されて見えないが、私にはウクライナの素の現実が容易に変わるとも思えない。それに、過激思想に染まったナショナリストの問題もある。だからこそ、EU(欧州連合)やNATO(北大西洋条約機構)は、そのようなウクライナとこれまで一定の距離を保ってきたのではなかったか。

 この戦争では、ウクライナ社会の“正義”もまた試されている。
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西谷 公明(エコノミスト 元トヨタロシア社長)
1953年生、長銀総研を経て1996年在ウクライナ日本大使館専門調査員。2004ー09年トヨタロシア社長。2018年N&Rアソシエイツ設立し、代表。著書に『ユーラシア・ダイナミズム』『ロシアトヨタ戦記』など。岩波書店の月刊世界の臨時増刊「ウクライナ侵略戦争」で「続・誰にウクライナが救えるか」(2022年4月14日刊)を執筆。
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