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インドがミャンマー制裁に慎重なわけ

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【世界を読み解く】中国への接近警戒、経済協力の継続も期待  

公開日: 2021/02/05 (ワールド)

インドのモディ首相=Reuter インドのモディ首相=Reuter

井出 敬二 (ニュースソクラ コラムニスト)

 インドは、ミャンマーにとり西隣の大国である(陸地国境1600km、海上境界(ベンガル湾)725kmで接する)。ミャンマーは、インドにとりその「ルック・イースト」政策でも、中国とのライバル関係でも、非常に重要だ。1日のクーデター後、インドは「重大な懸念」を表明し、「法の支配と民主的プロセスへの支持」を表明したが、国連安保理ではミャンマーに対して「バランスのとれた対応」を主張し、強い制裁には反対したようだ。

 インドの視点と立場を分析して、ミャンマーをめぐる中印関係を読み解いてみたい。

▼インドの見方―中国とミャンマー国軍の関係は微妙

 4日付けの日刊有力紙『インディアン・エクスプレス』紙は、「クーデターは、ややこしいミャンマー・中国関係を更に複雑化させる」と題する記事を掲載した。

 中国とミャンマー国軍とは、共に権威主義的である点で親和性があるが、歴史的に両者の関係は厄介なものであり、その背景として中国の過剰とも言える対ミャンマー・インフラ投資、ミャンマー軍の中国国境沿いでの軍事活動(中国系少数民族に対する)、国境地帯での麻薬取引などを挙げた。

 ミャンマー国軍は過去、中国が支援したミッソン・ダム・プロジェクトを停止し、これも中国依存を恐れたからだと言われている。

 同記事は、アウンサンスーチー国家顧問がこの数年で中国寄りになったことから、ミャンマー国軍は不信感を抱くに至ったと解説する。

 1月の王毅外相のミャンマー訪問も、中国として昨年11月の選挙の結果、国民民主連盟(NLD)の勝利を是認した上で、様々な経済プロジェクトの速やかな実現への期待を表明したのだと解説する。

 同記事は、中国が事前にミャンマー国軍にクーデターへの了承を与えていたのではないかとの憶測についても論じている。

 確かにクーデターの結果、ミャンマーは中国への依存度を高めるかもしれないが、他方で中国にとっては安定した環境で貿易、投資、インフラ建設が進むことが良いのであり、クーデターによる混乱は歓迎できないと指摘し、事前了解との見方には疑念を呈している。

▼ミャンマー国軍はインドから潜水艦を譲り受け、兵器調達先を多角化する

 ミャンマー国軍は、過去主にロシアと中国から兵器を調達していたが、インドからキロ級潜水艦(ディーゼル)を譲り受けることとした。

 この潜水艦譲渡の発表は、昨年10月のインドのナラバネ陸軍幕僚長とシュリングラ外務次官によるミャンマー訪問の後、なされた。両名はミャンマーでアウンサンスーチー国家顧問、ミン・アウン・フライン国軍総司令官らに面会し、軍事(陸海空全てについて)、治安、経済、インフラ建設等の分野での協力について話し合い、協力推進に合意した。

 ミャンマーは、兵器調達で中国依存から脱し、インドも含めての多角化を図っている。

 ミャンマーにとっては初めて保有する潜水艦である。ミン・アウン・フライン国軍総司令官も、海軍近代化のために潜水艦を切望すると表明していた。

 2016年、バングラデシュは中国から潜水艦(明型)2隻を導入していた。インドによるミャンマーへの潜水艦譲渡は中国への対抗であり,これは中国からすれば懸念すべき動きということになる。

▼インドはクーデターにどう対応する?

 インドは現在、国連安保理非常任理事国である。

 インド外務省は、1日、「ミャンマーでの状況に重大な懸念」を表明し、「法の支配と民主的プロセスへの支持」も表明した。

 他方、2日に開催された国連安保理会合(非公開)では、ミャンマーに対して「バランスのとれたアプローチ」をとるべきと主張したとインドのメディアは報じている。

 4日付けの『タイムズ・オブ・インディア』紙は、「対ミャンマー強硬策を主張する西側に対して、インドは押し返した」と報じた。

 また同紙は、インドがミャンマーのラカイン州で進めている経済協力プロジェクトは、クーデター後も継続するだろうと伝えた。

 ラカイン州はインド洋に面するミャンマー西部の州であるが、少数民族武装勢力も活動している大変デリケートな地域である。ここでミャンマー政府は中国やインドからの支援を受けて、港湾、道路、工業団地などを整備しようとしている。

 インドは、一方で民主主義擁護を主張しつつ、他方で強硬な制裁に反対する(つまりこの点ではロシア、中国と共同歩調をとる)ことにしたようだ。その理由は、経済制裁はミャンマーを中国寄りにするだけであり、インドとしてはミャンマーへのコミットを続けたいからだとされる。

 同記事は、ミャンマー国軍エリートの独特の心理を理解せねばならず、外部からミャンマーに影響を及ぼすことは難しいと結んでいる。

 どうやら、インドは中国の手の内を読みながら、時には似たような対応をとることもあるようだ。

(参考)
“Coup a further complication for tricky Myanmar-China ties”、 The Indian Express、 2021年2月4日
“India at UNSC backs a balanced approach on Myanmar”、 Zeenews、 2021年2月4日
“A tightrope walk for India as military takes over Myanmar”、 The Times of India、 2021年2月4日
“With an eye on China、 India gifts submarines to Myanmar”、 The Financial Times/Nikkei Asia、 2020年11月4日
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井出 敬二(ニュースソクラ コラムニスト)
1957年生まれ。1980年東大経済学部卒、外務省入省。米国国防省語学学校、ハーバード大学ロシア研究センター、モスクワ大学文学部でロシア語、ロシア政治を学ぶ。ロシア国立外交アカデミー修士(国際関係論)。外務本省、モスクワ、北京の日本大使館、OECD代表部勤務。駐クロアチア大使、国際テロ協力・組織犯罪協力担当大使、北極担当大使、国際貿易・経済担当大使(日本政府代表)を歴任。2020年外務省退職。著書に『中国のマスコミとの付き合い方―現役外交官第一線からの報告』(日本僑報社)、『パブリック・ディプロマシー―「世論の時代」の外交戦略』(PHP研究所、共著)、『<中露国境>交渉史~国境紛争はいかに決着したのか?』(作品)、”Emerging Legal Orders inthe Arctic - The Role of Non-Arctic Actors”(Routledge、共著)など。編訳に『極東に生きたテュルク・タタール人―発見された満州のタタール語新聞』(出版に向け準備中)
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