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ミャンマーの政変 中国『環球時報』はどう伝えたか?

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【世界を読み解く】当初は戸惑い、徐々に内政不干渉に転じる

公開日: 2021/02/04 (ワールド)

拘束されたスーチー氏=Reuters 拘束されたスーチー氏=Reuters

井出 敬二 (ニュースソクラ コラムニスト)


 1日のミャンマーの政変後の中国『環球時報』紙報道には変遷が見える。最初は事態への戸惑いがうかがわれたが、その後は内政干渉はすべきでないという論調を強く打ち出すようになった。これは中国政府の受け止めを一定程度反映している。3日までの中国の報道を分析する。

 『環球時報』は人民日報社が発行しているタブロイド新聞で、国際報道をやや過激に扱うことで有名であり、かつ売れ行きはよいらしい。(『人民日報』は、いわば官報みたいな存在であり、激動する国際情勢をいちいち報道しない。)

▼1日午後の『環球時報』(ネット版)解説

 13時26分に、編集部評論員投稿(題は「ミャンマーでの驚き!この国で何が起きているのか?」)が掲載された。

 事件の第1報と、これまでの経緯、1月末から“政変”が起きる可能性が噂されていたことなどを説明する。

 しかし今回の出来事を政変と認定することはまだできず、注意深く見るべきだと述べ、いずれにしても内政問題だと結んでいる。

▼2日付け『環球時報』(印刷版)の事実報道(第1面と第16面)

 第1面全部(及び第16面の一部)を使って「ミャンマーの政局の突然の変化は世界を驚愕させる」というタイトルの記事を掲載した。

 記事では事態の推移、ミャンマー国軍の言い分(選挙に不正行為があった)、各国政府(中国、米国含め)とメディアの反応、2011年以来のミャンマー政治の経緯などが書いてある。

 1日以降、在ミャンマー中国大使館は現地在留中国人の安全確認を行っており、特に大きな問題は発生しておらず、また中国人のビジネスにも大きな悪影響はないようだと報じている。

 記事の最後に、国民民主連盟(NLD)側もおそらくおとなしくしていないだろうから、ミャンマー国内の不穏な情勢は続くのではないかと結んでいる。

 記事中では、今回の事態をどう評価するかについては判断を保留しているらしく、“ ”付きで“政変”と表記している。

▼2日付け『環球時報』(印刷版)の社説(第14面)―悲観的な展望

 「ミャンマーの民主化の過程はどうして思わぬ巨大な災難を再び生んだのか」と題する社説を掲載した。

 ここでもミャンマーのこれまでの政治情勢を説明している。ミャンマーの民主化は比較的順調だったが、民族問題など複雑な問題があり、どのような体制になっても統治は困難であり、国民から選ばれた政府と軍当局の努力にもかかわらず、根本的な問題解決、利益対立の解消には至らなかったと解説している。

 民主主義についての論評もしている。世界の中小国家にとっては、伝統的な統治を続けるか西側の民主主義を受け入れるかの選択肢しかないと述べ、そのどちらもうまくいかないことがあると示唆する。

 しかし今回の軍部の行動をもってしても、国内の難局の打開はできず、逆にアウンサンスーチーが既に抵抗を呼びかけており、米国はじめ国際的な圧力も高まる中で、不確実性が立ち込めていると悲観的に観察している。

 結論として、大切なことは、第1に長期的な政治情勢の安定、第2に経済発展を図り、ミャンマー国民全体の利益を確保することだと述べている。

▼3日付け『環球時報』(印刷版)社説(第14面)

 「ミャンマー情勢、外部からは(状況の緊張の)緩和を促すべきであり油を注ぐべきではない」と題する2番目の社説を掲載した。(同文が2日夜20時20分にネットで配信された。)

 バイデン米政権が拘束者即時釈放を要求し、また対ミャンマー制裁に言及したと述べた上で、中国とASEAN諸国はミャンマーの内政には干渉すべきではないとの立場であり、外部の者にとっては忍耐が必要だと主張した。

 “政変”という用語についても、ミャンマー国軍が種々の説明を行っているのをよく聞いて、軽々に使うべきではないとの立場を示した。

▼その他3日の『環球時報』(印刷版及びネット版)

 印刷版(第1面全面と第16面)とネット版で、国連安保理事会会合(2日)の模様、各国マスコミの報道振りなどを掲載している。

 ネット版は有識者による解説記事を掲載した。葛紅亮・広西民族大学ASEAN学院副院長は、現在ミャンマーの政治、経済、社会秩序等で不確実性が高まっており、この事態をミャンマーの憲法・法律制度の下で平和解決し、国の秩序を安定化させることこそが必要だと結んでいる。

▼中国政府の立場

 1月11日、12日に王毅外相がミャンマーを訪問したが(→詳細参考1)、その時点で王毅外相は、今回のような政変が起きる可能性を認識していたということは、少なくとも公開情報からはうかがわれない。

 いずれにせよ、王毅外相は、アウンサンスーチーとNLDへの強い支持を表明していた。彼らが国民から圧倒的に支持されていることを理解しているからだろう。(王毅外相はミャンマー軍の役割・貢献にも支持を表明はしていたが。)

 今回の事態を踏まえ、中国としては、新事態に合わせた政策をとっていくが、ミャンマー軍部のやり方を支持すれば、それで物事がうまくいくわけではない(『環球時報』社説が指摘)ことも分かっているだろう。しかし中国としては、軍部に制裁などを加えれば、事態は益々混乱すると考えているのだろう。

(参考1)王毅外相のミャンマー訪問
 1月中旬、王毅外相はミャンマーを訪問し、ウィン・ミン大統領(11日)、アウンサンスーチー国家顧問(同日)、ミン・アウン・フライン国軍総司令官(12日)と会談した(会談概要は中国外交部ウェブサイトに掲載)。

 王毅外相は、アウンサンスーチー国家顧問に、「ミャンマーの総選挙後にミャンマーに招かれた最初の外国の外相であることは大変嬉しい」「中国は、国民民主連盟(NLD)の順調な施政をしっかり支持する」と発言しており、総選挙でのNLDの勝利を事実上祝福していた。

 王毅外相は、ミン・アウン・フライン国軍総司令官には、ミャンマーの発展のために国軍が果たす役割と貢献を「支持する」と伝えていた。

 王毅外相は、総選挙の結果を踏まえ、改めてミャンマー側との関係を強化すべくミャンマーを訪問したのだろう。(王毅外相はミャンマー訪問の後インドネシア、ブルネイ、フィリピンも歴訪している。)

(参考2)
ミャンマーの政治史や日本・ミャンマー関係に関心のある方は、ミャンマーの専門家の丸山市郎・駐ミャンマー大使のインタビュー(youtube)をご覧いただきたい。

「独占インタビュー『丸山市郎大使とミャンマーの40年間』」
https://www.youtube.com/watch?v=U3NtMfzNKuw&t=5s
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井出 敬二(ニュースソクラ コラムニスト)
1957年生まれ。1980年東大経済学部卒、外務省入省。米国国防省語学学校、ハ
ーバード大学ロシア研究センター、モスクワ大学文学部でロシア語、ロシア政
治を学ぶ。ロシア国立外交アカデミー修士(国際関係論)。外務本省、モスク
ワ、北京の日本大使館、OECD代表部勤務。駐クロアチア大使、国際テロ協力・
組織犯罪協力担当大使、北極担当大使、国際貿易・経済担当大使(日本政府代
表)を歴任。2020年外務省退職。著書に『中国のマスコミとの付き合い方―現
役外交官第一線からの報告』(日本僑報社)、『パブリック・ディプロマシ
ー―「世論の時代」の外交戦略』(PHP研究所、共著)、『<中露国境>交渉史
~国境紛争はいかに決着したのか?』(作品社)、”Emerging Legal Orders in
the Arctic - The Role of Non-Arctic Actors”(Routledge、共著)など。編訳に『
極東に生きたテュルク・タタール人―発見された満州のタタール語新聞
』(2021年出版予定)。
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